新型コロナの感染者数は、上がっては下がる波を描き、終息の気配が見えません。症状では判別がつきにくい風邪やインフルエンザが増加する冬に向けて、どう臨むのか。春の第1波では保健所の業務が過剰になり、軽症者から重症者までが集中した病院では厳しい対応を迫られました。一方で、身近な診療所の機能が生かされなかったとの指摘があり、国は、業務を分散させるために、町のかかりつけ医を受診してPCR検査を受けられるような体制を整えています。診療所で初期の診療を担う医師は、どのように冬に備えようとしているのか。日本プライマリ・ケア連合学会副理事長で、学会では新型コロナ対策を担当する大橋博樹さん(川崎市・多摩ファミリークリニック院長)に聞きました。(渡辺勝敏 読売新聞専門委員)

第1波では町のお医者さんの力は十分に生かせず

――先生は、感染症はもちろん一般内科から小児科、簡易な外科、在宅医療も行う総合診療の専門医で、地元の川崎市医師会では理事を務めています。言ってみれば、かかりつけ医のプロフェッショナルですね。これまで新型コロナには、どのようにかかわってこられましたか。

 2月にクルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号が横浜港に入って、船内に入ったところから始まっています。外来では、当初から発熱の患者さんも診ていましたが、4月中旬になると患者さんが増えたので、診療所内での動線を分けるだけでは難しくなってきて、受診時間を分けるようにしました。そのことをホームページで告知すると、「発熱患者お断り」という診療所も出てきていたので、近隣からも患者さんが集まるようになりました。

――当初は、新型コロナかどうかを診断するPCR検査の数が増えず、診療所の医師が疑いを持って保健所に電話をしても、受けてもらえないということが問題になりましたね。

 実情は、こちらも痛いほどわかっていました。地域の大学病院や総合病院は重症の入院患者がいっぱいな状態で、そこで疑いがある患者のPCR検査の検体採取までやっていたわけですからマンパワー的に難しい。そこで、市医師会で集合検査場を作ろうということで、5月の連休明けに市内3か所に設置しました。東京や横浜市でもやり始めていました。

市内に検査センターができて検査状況は改善

――患者としては、熱があっても検査を受けることができずに自宅待機となり、不安な状態に置かれていました。

 2009年の新型インフルエンザ流行の時、僕自身は勤務医として総合病院の発熱外来を担当していました。当時、開業医は発熱患者を診ず、発熱外来に患者を集約することになっていたため、僕らがパンクしてしまいました。市医師会にもその時の反省があって、当初から何ができるか考えていました。しかし、医師会の中にも意欲に温度差がありました。会員の平均年齢は60歳を超えていますから、ハイリスクの方も少なくありません。それに、防護服などの資材が足りず、患者を診ても検査ができないのでは仕方がないという声もありました。その状況の中で、「医師会で集合検査場をやります」と提案すると、40、50歳代中心に100人近い先生が手を挙げてくれました。これだけの医師が集まったことには、僕自身も驚きました。

――集合検査場ができたことで、PCR検査が受けられないという問題は解消しましたか。

冬に向け、新型コロナ検査はかかりつけ医でも…日本プライマリ・ケア連合学会副理事長・大橋博樹さんに聞く

 大きなブレイクスルーになりました。集合検査場は市内3か所に設置し、1か所で1日15人ぐらいの検査ができます。これで「発熱患者を診ても検査できない」という状況が解消されて、クリニックの先生たちが発熱患者を診てくれるようになりました。しかし、第2波と言いますか、7月には患者さんが増えて間に合わなくなりました。そのため、自院でPCR検査や抗原検査を実施しようという医療機関を川崎市が募集すると、50か所以上が希望して、それらの診療所では患者さんに自己負担のかからない行政検査として実施できるようになりました。集合検査場がいっぱいなら、検査ができる診療所を紹介する形になります。これで、PCR検査難民はほぼいなくなりました。

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