新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、スポーツ大会の中止や延期が相次いだなか、オリンピックの主要競技のなかで先駆けて開催された陸上の日本選手権は、いわば今後の大会運営の「試金石」ともいえる大会でした。

陸上の日本選手権は、東京オリンピックの代表選考を兼ねてことし6月に大阪市で行われる予定でした。しかし、ウイルスの感染拡大で延期が決まり、当初の予定から3か月遅れで会場も新潟市に変更して開催されました。

ほとんどの競技団体が大会の開催に慎重な姿勢を崩さない中で、日本選手権の開催を決めた日本陸上競技連盟が最も重視したのは感染対策です。

ほかの競技に先駆けて7月から始め、トップ選手が集まる中長距離の大会の開催に踏みきり、感染防止対策の実績を重ねていきました。

今大会では、そのノウハウを活かしながら選手や関係者の大会前から健康状態を管理するアプリを新たに投入し、会場の入り口には非接触型の自動検温システムも導入して、選手や関係者の利便性を図りながら人と人との接触を減らす対策をとりました。

そうした準備が新潟県在住者限定とはいえ、2000人までの観客を入れた大会の開催につながりました。
主役の選手たちからは厳しい状況の中でも大会が開かれたことについて「感謝」や「幸せ」という言葉が数多く聞かれ、大会に参加できることを大きなモチベーションに躍動しました。

なかでも輝いていたのは高校生や大学生などの若い選手たちでした。
学校や競技場が閉鎖されるなど練習環境が限られる中で、「何を目標にすればいいのか」と苦しんだ選手も少なくありませんでした。
「日本一」を争う大会で、順位は低くてもその舞台に立てる喜びを胸に、はつらつとした走りや投てきを見せていたのが印象的でした。

JOC=日本オリンピック委員会の選手強化本部長も務める日本陸連の尾縣貢専務理事は「選手たちの雄姿は国民の皆さんの内向きだった気持ちを少しでも外に向けられたと思う。今回の大会がオリンピックとパラリンピックに必ずつながると思う」と胸を張りました。
そして「この大会でのノウハウをしっかり引き継いで共有していきたい」と話しました。

ここまでは何事もなく3日間の開催を終えた日本選手権ですが、来年の東京大会の安全・安心な開催を目指すうえで、モデルケースとなるかどうかの評価はこれからで、そうなったときにはじめて、大会は成功したと言えるのかもしれません。

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