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新型コロナウイルスの影響で、多くのスポーツイベントが”通常開催”できていない。延期や中止に追い込まれている大会があれば、無観客もしくは観客数を大幅削減したうえで行われているものもある。では、学生スポーツで最大の人気を誇る箱根駅伝はどうなるのか。陸上競技の大会は主催者が異なることもあり、各レースの開催状況は様々だ。

インカレは参加人数を制限、出雲駅伝は中止の判断

 まずは9月以降に行われる注目大会の状況をチェックしてみたい。9月11~13日の日本インカレは長距離種目(5000m、1万mなど)を記録上位25人にするなど参加人数を制限したうえでの無観客開催となった。6月下旬から10月1~3日に延期された日本選手権(長距離種目以外)は観客を受け入れるが、開催地の新潟県在住者限定で各日2000人に制限する。

 ロードレースでいうと学生三大駅伝のひとつである出雲駅伝(10月11日開催予定だった)は7月末に中止が発表されている。大会を主催する出雲市によると、「選手、スタッフ、地元ボランティアの安全確保が困難であると判断した」というのが中止の理由。交通整理員などのボランティアスタッフの大半が65歳以上であることに〝危機感〟を募らしたようだ。

 一方、箱根駅伝の予選会は10月17日に東京・立川市で開催する予定。ハーフマラソンという距離は変わらないが、新型コロナウイルス感染防止対策のため、陸上自衛隊立川駐屯地内の1周約2.6㎞の滑走路を周回するコースに変更された(例年は昭和記念公園内や市街地も走る)。そして、無観客で行うという。

 11月1日の全日本大学駅伝は開会式と閉会式を取りやめたが、基本的には例年通りの開催となる見通しだ。ただし、今回は開催地域住民の不安を取り除くため、出場チームやその関係者によるコース沿道での〝応援自粛協力〟が義務付けられている。チームエントリーの際に、「応援自粛協力への同意書」の提出がないと参加は認められない。

 なお12月20日に開催を予定していた全国中学校駅伝大会は中止となった。日本中体連は、「地域により流行の差はあるものの全国から一堂に会する大会であり、チームで行動する場面が多いことから感染拡大のリスクが極めて高い」などを中止の理由に挙げている。

 選手同士が激しく接触する競技や、屋内でのスポーツは大会開催が難しいのは理解できる。しかし、ロードレースは屋外。観衆の密を避けることができれば、開催は十分に可能なはずだが、これだけ対応が異なっている。

開催には観衆のマナーやモラルが必須

 そのなかで箱根駅伝はどんな〝ジャッジ〟を下すのか。ちなみに箱根駅伝は関東学連が主催し、読売新聞社が共催している。日本テレビが生中継する『新春スポーツスペシャル箱根駅伝』は平均視聴率が25%を超えるほどの人気があり、動く金額も大きい。日本陸連が発表する大会運営に関するガイドラインでは「3密を回避できる1日の競技会の参加人数を設定する」ことが求められている。そのため、数万人規模の大会実施は難しい状況だ。一方、箱根駅伝の出場数は21チームで、参加人数はトータルで210人。同時に走るのは原則21人だ。参加人数の面は問題にならないだろう。

 しかし、2日間で100万人を超える大観衆は〝制御〟できるのだろうか。全日本大学駅伝のように出場校は、コース沿道での〝応援自粛協力〟が求められるのは間違いないが、それだけでは不十分だ。今年3月の東京マラソンも「今大会については、沿道での応援は控えていただき、テレビ・ラジオを通じて選手の応援にご協力ください」と呼び掛けていた。例年よりも観衆は少なかったとはいえ、場所によっては「密」ともいえる状況になっていたのは否めない。

 駅伝の場合はスタート・ゴールと各中継所に人が集まる。該当エリアだけでも、入場者数をコントロールする方法を考えないといけないだろう。加えて、観衆のマナーやモラルも必要になってくる。他の方法では、沿道に人が集まらない時期に行う手もないわけではない。来年3月7日に開催予定の東京マラソンは、新型コロナウイルスの影響で実施困難となった場合、来年秋の開催を検討しているほどだからだ。ただ箱根駅伝の場合、4年生が3月で卒業してしまうために、東京マラソンのように来秋というわけにはいかない。しかも、公道を使うロードレースは自治体や警察の許可が必要になるため、スケジュールの立て直しも簡単ではない。

開催可能性をあげる方法もあるが課題も

 開催できる可能性を上げるなら、予選会のようにクローズドな場所で、無観客で行うことも考えた方がいいだろう。しかし、それでは、テレビ番組としては〝画〟にならない。箱根駅伝は大都会、海、山とロケーションが変わることも人気の要因だからだ。また区間記録の更新はランナーの目標であり、ファンが期待するパフォーマンスのひとつになる。そのため選手はもちろん、多くの関係者は、視聴率が期待できる正月に、通常コースでの開催を熱望している。

 いずれにしても大規模イベントは、「緊急事態宣言」が出されれば開催はできない。またチーム内に感染者が出ると、その大学は出場するのが難しくなる可能性もある。箱根駅伝に出場する選手たちはほぼ全員が寮生活を送っているからだ。某実業団チームでは夏合宿中に新型コロナウイルスの陽性反応を示した選手もいるだけに、出場校のコロナ対策は万全を期さないといけない。

 そのなかで学生ランナーたちは正月の晴れ舞台があることを信じて、トレーニングを続けている。例年よりも〝戦うべき相手〟は多いが、2021年正月に国民の鬱憤を晴らすような爽快なレースが繰り広げられることを祈りたい。

著者プロフィール
酒井政人

元箱根駅伝ランナーのスポーツライター。国内外の陸上競技・ランニングを幅広く執筆中。著書に『箱根駅伝ノート』『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。


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