視聴者に紹介された機体は最新のエアバス A350-900型機(登録記号:JA03XJ)。羽田~福岡/札幌/那覇線に投入されている

 キリンビバレッジとJAL(日本航空)は、日本マイクロソフトの技術協力のもとに、「おうちで工場見学を楽しもう!!リモート社会科見学」を6月27日~28日に無料で実施した。

 この企画は「Microsoft Teams ライブイベント」とMR(Mixed Reality:複合現実)テクノロジー「Microsoft HoloLens 2」を活用し、リアルタイムで工場や整備場内の様子を視聴者に配信するもの。第1弾ではキリンビバレッジの湘南工場を、第2弾ではJALの羽田整備工場を紹介した。本稿では、28日に行なったJALのライブ配信についてレポートする。

6月28日、JALの羽田整備工場においてリモート工場見学が行なわれた(写真提供:JAL)

 新型コロナウイルス感染症の影響から人が密集しやすい工場見学を見合わせている企業が多い。JALが羽田整備工場で実施している見学企画も3月から休止したままで、再開は未定となっている。

 今回のリモート社会科見学では、インターネットで一度に多数の人に向けてライブ配信できるTeams ライブイベントを使って密集を避けるとともに、普段なかなか訪れることが難しい遠隔地の人でも参加できるのがポイント。

 HoloLens 2を使い工場にいる見学者役が装着し、Teams ライブイベントとつなげることで、視聴者が見ている工場の映像に遠隔地にいる従業員の顔が重ね合わせて表示され、表情を見ながら設備について会話をする臨場感あふれるライブ映像が楽しめる。このTeams ライブイベントとHoloLens 2を活用したリモートでの工場見学は国内初の試みだそうだ。

Microsoft TeamsをインストールしたPCやタブレット、スマホなどで視聴でき、最大2万人まで参加できた

ヘルメットに装着したHoloLens 2。眼鏡型のスクリーンに実像と映像を映し出せる最新のMRデバイス(価格は3500ドルほど)

 ライブ映像は、JALの羽田整備工場にある格納庫から13時~13時45分までの約45分間配信した。視聴にあたっては見学会のような抽選もなく、PCやスマホ、タブレットなどにMicrosoft Teamsをインストールし、特設ページからリンク先に移動するといったもので、開始直前には約4000人ほどがアクセスした。

 格納庫には2019年に導入したエアバスの最新モデル「A350-900型機」の3号機がスタンバイしており、案内役の渡部氏と整備士の大西氏が解説しながら機体を紹介。ところどころでは別室に控えている整備士が視聴者の質問などに回答する形でライブ配信が進められた。

 途中、HoloLens 2を使ったシーンだけは電波状況の問題もあり配信に遅延が生じてしまうことから、事前に収録した映像を使った。こちらのシーンでは大西氏がノーズギアのすぐ近くまで移動し、HoloLens 2で捉えた迫力ある映像を見せながらパーツの役割を紹介。渡部氏の映像も画面内に表示させ、実像と映像を映し出すHoloLens 2ならではの機能を使った興味深い内容となった。

HoloLens 2を装着した大西氏の目線で撮影したもの。遠目では分からない細部まで見ることができた。画面左下に映し出された渡部氏と掛け合いながらノーズギアの説明をした(写真提供:JAL)

ノーズギアの前に立つ大西氏。安全上の理由から普段の見学ではここまで近寄ることはできない

 通常の見学コースでは、整備士以外は機体の下に移動してはいけないルールのため、見学者は機体を遠巻きで見るしかないが、大西氏がHoloLens 2を装着することで間近に機体を見るという体験を視聴者に提供できた。ライブ配信の最後は、この日のために収録された成田空港から羽田空港までのフライトシミュレータの映像で終了した。

安全面を徹底的に考慮しながら、多くのスタッフが携わる

スマホでも快適に視聴できた

特別に用意された成田空港から羽田空港までのフライトシミュレータの映像

 ライブ配信後、案内役の渡部氏に話を伺うと、「お客さまの表情が見えない、年齢層が分からないといったこともあり、分かりやすくなるべく平易な言葉を選びました。事前には飛行機をどのような角度で見るとカッコよさが伝わるかを考えました」と感想を述べた。

 リモート見学は「遠方から気軽に参加できる、小学生以下のお子さんでも見てもらえるのは大きなメリットです(JALの工場見学は小学生以上を対象)。でも、実際に来ていただいて、飛行機の迫力を感じてもらいたい気持ちもあるので、従来の見学にプラスしてやっていければいいなと思います」と、リアルとリモートそれぞれのメリットを語った。

 HoloLens 2を装着して案内した大西氏は、「タイヤにあそこまで接近して伝えられるのはリモートならではだと思います。情報がすぐに出てくるという、とても未来感のあるデバイスなので、整備現場においてもとても便利そうではあるなと思います」と話してくれた。

案内役の渡部氏(左)と整備士の大西氏(右)

 今回の「おうちで工場見学を楽しもう!!リモート社会科見学」は、2日間で約1万アクセスを集め、家族で見ていることを想定するとその数倍の視聴者がいたことになり、数字的には上々の結果となった。

 この取り組みは異業種交流会が発端となり、2か月前から準備を始めたとのこと。企業間の垣根を越えたプロジェクトであり、安全面の確保や通信テストは良好な結果でも、格納庫という特殊なシチュエーションから実際に映像を乗せるとうまくいかないといった問題などを一つ一つ解決してようやくこの日を迎え、関係者全員が安堵と達成感を口にしていた。

 コロナ禍でも各社とも新しいテクノロジーを使って、さまざまな社会貢献を行なっていこうという認識は一致しているので、今後もこのような企画が実施される可能性はあるとのこと。次の企画も楽しみにしたい。


クレジットソースリンク