「で、どうしたいの?」
SSW・Reiが過去の自分に向けた“挑発”

《挑戦は快感》、幼少期からステージに立ち続けている彼女だからこそ、ここまで強い言葉を操ることができる。

幼少期からブルーズに傾倒し、ギター片手に様々なステージを経験してきたというSSW・Reiの経歴は、多くのメディアが語る通り、ある種「異質」である。
しかし今回、専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)のCM用に書き下ろされた新曲”What Do You Want?”は、彼女に貼り付いたあらゆるエピソードを払拭し、裸一貫で戦陣に突っ込んでいくような潔さを感じられる。

《WHAT DO YOU WANT?》という挑発的なフレーズ、そして膝から血を流すほどに暴れるミュージック・ビデオでの姿。前作の『SEVEN』リリース後、荒ぶった姿で登場したReiがチャレンジしたこととは? 自宅にて楽曲制作に勤しむ彼女へZoomで話を聞いた。

今回のシングルリリースを記念して、最後まで読んでくださった方々に、Zoomの背景に使えるオリジナル画像をプレゼント。
期間限定なので、こちらもチェックしていただきたい。


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Interview:Rei

視覚的なモチーフが楽曲に影響を与えている

━━CMに向けた書き下ろし自体、Reiさんにとっては初めての体験だったと思うのですが、楽曲作りの準備はいつ頃からされていたんですか?

昨年の12月初旬くらいですね。CMのイメージやキャッチコピーがすでに用意されていたので、それらのイメージをベースにして作り始めました。

━━そうだったんですね。歌詞も曲調も、今までのReiさんの楽曲と比べ鋭い印象を受けました。すごくCMのビジュアルとマッチしているなと。

ビジュアル自体がソリッドで、強くて、かっこよくて……というイメージだったので、その雰囲気は意識しました。特に今回の映像はモデルの目が印象的ですよね。楽曲も、挑戦的なまなざしを彷彿とさせるような曲がいいなと思ったんです。

━━でも、すでに用意されたビジュアルに沿った楽曲を作るのは大変だったのでは?

むしろ自分に適した作り方だったんじゃないかな、と思ってます。というのも、普段から視覚的な要素を音楽に置き換えながら、発想を得ることが多くて。楽曲作りのアプローチは毎回変えるものの、最初の種になるのは1つの視覚的なモチーフなんです。
実は普段から絵を観るのは好きで。グラフィックデザインや、タイポグラフィも好き。

モード学園 2020年度TVCM 「SEKAI MODE」篇

━━好きなアーティストや、影響を受けた作家は?

自動車が好きなのもあって、車のデザインを手がけている人の作品は特に好きですね。ジョルジェット・ジウジアーロとか。シェルとかシトロエンの広告デザインを手がけたカール・ゲルシュトナーも好き。

モノが「必要に迫られてそういう形になっている」ということにすごく魅力を感じます。楽器や車のデザインも、実用的じゃないですか。必然的にそういうラインやフォルムになっていることが素敵だと思う。フェルメールのような西洋画の雰囲気も好きですけどね。

━━視覚的な情報が楽曲制作に昇華される時に、Reiさんの脳内でどういった思考回路が働くのかが気になります。

視覚的な情報から、言葉や音に形容されていない、輪郭みたいなものがまず頭の中に浮かぶんです。そこから「曲線的なフレーズをここに入れ込もう」というイメージが具体的に浮かんでいく感じ。「2番までは平面的なサウンド作りにして、そこから急に3Dメガネをかけて立体的になるようなサウンドにしよう」とか。

━━じゃあ、その平面的・立体的といったイメージを、フレーズに落とし込む時、参考にするものは?

自分の中のリファレンスですね。イメージを具現化するために、カントリーやブルーズの要素を、引き出しの中から探していく感じ。「あの人がプレイするこういうビートをもってこよう」「あの人の形容詞の使い方を歌詞に使ってみよう」とか。たくさんのリファレンスをつなぎ合わせて、自分の頭の中にある抽象的イメージを可視化していってます。


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日本語と英語の乳化が、表現に強みを与える

━━実は、今回の”What Do You Want?”も然り、Reiさんが歌詞を生み出す際の考え方や、言葉の選び方が気になっていました。英語と日本語をバランスよくミックスし、歌詞を構築していますよね。バランスの取り方に面白さを感じます。

言葉を使うとき、「意味」と「響き」という2つの側面から表現を選んでいて。バランスを取りながら、日本語と英語をブレンドしていく感じで書いてます。楽曲にもよるんですけど、英語で全部書いてから、日本語にする箇所を決めることの方が多いです。今回もそうでした。英語で全部書いて、そこから日本語にしたい場所を選んで。

━━なるほど。例えば、今回の日本語歌詞の中だと《挑戦は快感》という言葉にインパクトを感じましたが。

《挑戦は快感》はすごく自然に出てきたフレーズなので、自分の軸になる考え方の1つなのかなと思います。人間ってユルく生きていても、60%~70%の幸せは保つことができると思うんです。でも120%〜200%の幸せを手に入れるためには、ある程度のプロセスが必要。
挑戦することはカロリーも使うけど、120%〜200%の幸せを手に入れることができると思って生きてます。達成した時の気持ちよさを生きがいにしてる。

━━そもそも異なる文化圏の言語をバランスよくミックスして使うこと自体、すごくカロリーを消費することですよね。そこにあえて挑戦するところに、言葉へのこだわりを強く感じました。

英語と日本語、相対するものが混じり合う瞬間があるんです。自分の中では「乳化」と呼んでいるんですけど、上手く混ざり合った時に、作品としての強さが出ると思っていて。自分の中では日本語と英語ってそういうもの。

━━相互作用を生み出すために、言葉をミックスさせて使っているんですね。

逆に混ざらない時もあります。混ざらないまま一方的に世に出すこともあれば、どちらかの言語で全部書いてしまうということもある。「どちらかに統一する方が意味も伝わりやすいでしょ」って思う人もいるだろうけど、局所的に日本語の強い言葉を差し込むことで、印象が強まることがあるんですよね。

━━日本語で浮き出されたフレーズに強さがあるからこそ、”What Do You Want?”というタイトルからは、アグレッシブなニュアンスを感じます。

まさにそう! このタイトルは英語だと挑発的な意味を持っているんです。直訳すると「何が欲しい?」ですけど、表現の中に「で、どうしたいの?」みたいなニュアンスも入ってる。

━━そこまで強い言葉で煽りたい相手《YOU(君)》とは、いったい何者なんでしょう。特定の存在を意識して、歌詞を作っている印象を受けます。

ティーン・エイジャーだった頃の自分ですね。昔の自分を煽る感じに近いです。
当時は学校で過ごす時間を不毛だと思っていたけれど、自分を作り上げた時間でもあった。「苦しいだろうけど、どこかに辿り着くための時間だよ」ってことに気づいてほしいんです。ひとつの欲望に向かって真っすぐ進んでいる人のまなざしは強くてかっこいいですよね。「このまま貫いていくべきだよ」って、過去の自分に戻って言えるなら言いたい。


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音楽なら平等に、人と繋がれる

━━そこまでReiさんが言葉に執着する理由はなぜでしょう?

言葉に意味が付随することへの恐怖感が強いんです。音楽や絵画や香りは意味が付随しなくて、より本能的なもの。それがズレていることに対しては答え合わせをする必要がないと思っています。言葉とかに疲れてしまうときは、音楽があって良かったなと思う。

━━言葉への恐怖は、いつから感じていました?

幼少期から日本語と英語という2つの言語の狭間で「自分が人とコミュニケーションが取れていない」と感じることはたくさんありました。ただ、音楽のセッションをすることで、人とコミュニケーションをとれている感覚を初めて抱いた記憶があります。逆に言葉だと通じ合えていない感じがしていたので……。それは今現在でも感じてるかも。

━━ええっ、そうなんですか?

いつも自分は勘違いされていると思って生きていて……(笑)。相手の思うオレンジと、私の思うオレンジは微妙に違う、という前提で人と話しています。

ただ、その前提で話し始めると混乱してしまって。特に、感覚共有が十分できていない状態だとすごく不安になってくるんですよね。「通じ合えてないのでは」という不安からコミュニケーションをとること自体が億劫になる日常です。

━━でも、音楽を介するとコミュニケーションの疎通ができていると感じるんですね。

「コミュニケーションができている」というより、相手とのズレすら楽しむことができる自分がいるんです。同じだった時も嬉しいし、ズレていても嬉しい。

━━その「言葉」を介する時と「音」を介する時に生まれる、許容範囲の差はなんだと思いますか?

技術的なものが伴っていなくても表現でき、高尚なものが成り立つのが、言語のコミュニケーションとの差異ですね。原始人が太鼓を叩きながら踊っているところに、スティービー・ワンダー(Stevie Wonder)が参加しても多分成り立つんです(笑)。技術や知識が追いついてなくてもやり取りが成立できる、というのは平等でいいなと思います。


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見世物として守るべき、パフォーマーとしての姿

━━まさに今回のミュージック・ビデオも、プリミティブな映像ですよね。ギター1本と生身の体だけで戦っているような感じ。しかも撮影はワンカット。動きや構成はどれくらい厳密に決めていたんですか?

通過する地点だけ事前にざっくりと決めてました。コレオグラフィーは自分の中で考えていたものがあったので、本番にチャレンジしてみました。階段のオブジェに滑り台を作ってもらったんですけど、そこから降りるときに膝を怪我して(笑)。アドレナリンが出ると大体のことはできる。すごく楽しかったです。

━━Reiさんがステージでパフォーマンスする時の状態に近いのかな、とも思いました。

パフォーマンスしているときに入るスイッチがあって、撮影時はそれが自然と入りましたね。今回のミュージック・ビデオはステージキャラに近いと思います。

━━「ステージキャラ」っていうのは、ある種の役者的な立ち回りをしてるっていうことですか?

いえ、お芝居みたいに繊細に作っているものではないです。見世物として守るべきマナーのようなものかも。例えば「照れや恥らいは一回捨ててやりきること」とか。パフォーマンスは一発ギャグと同じ。照れていたらウケないし、オチの前に笑いだしたりしちゃうとギャグが面白くならない。

━━そういった「見世物のマナー」はどうやって身についたんですか?

幼いころからステージに立っていた経験もあるけど、それ以上に海外フェスで得たことが大きいと思います。アーティストのアクションやMC、セットリストの運び方などにエンターテインメント性を感じました。音楽のライブというより、ショーを観る印象を受けたんです。ただ練習してきたものを披露する場ではなく、オーディエンスを楽しませることも意識するようになりました。

Rei – “What Do You Want?”

「色モノ」というアイデンティティはもう剥がれている

━━お話を聞いていて「相手がどう受け取るか」ということに対する感度が高いな、と感じました。

昔からどう思われるか気にしすぎて、苦しむタイプではありました。今もファッションやSNSの言動、セレクトしている楽器など、いろんな部分で自分の個性をだせるようにはしています。今の時代、音楽だけじゃなく、様々な側面から愛してもらわないといけない時代かな、と思っていて。

━━しかもReiさんは毎回シーズンごとに、ビジュアルの印象も変わっていきますよね。ちなみにファッションにはどういったこだわりが?

必ずヒールは履いています。理由はみんなと同じで、身長とスタイルが気になるから。ファッションに詳しくはないけど、絵を描くのと同じ感覚で、色と柄とシルエットのバランスを見ながらコーディネートしています。

━━前作のモフモフなファッションとのギャップがすごいなと思いました(笑)。ただ、どんどん新しい一面を見せてくれるReiさんだからこそ、そこで生まれる個性のブレと折り合いをつけるのが難しそうだな、とも思いました。

実は個性は自分に根付いていて、生涯ついて回るものだと諦めているところもあるんです。この肌だし、この骨だし、この顔だし。育ってきた環境や過去は変わらない。逃れられないアイデンティティがあるからこそ「変わろうとしても変われないんだ」という安心感はあります。だからいろんなことに挑戦できるのかも。

━━そこで「アイデンティティから逃れたい」とは思わないですか?

むしろ利用するしかない、と思っていたくらい。10代でブルーズをやっていて、ギターが弾けて、帰国子女で、女の子で、童顔で……と、色んな肩書にまみれてきた。基本は「色モノ」としてみられてきたからこそ、の考えだと思います。今はどの要素も当たり前で「色モノ」にはならないですけどね。

━━じゃあ、その「色モノ」というレッテルが剥がれた今、自身の「変わろうとしても変われない」、アーティストとしての個性は何だと思いますか?

エゴがすごくて、自己中なところ。最近までは、受け取り手を意識しすぎていたところがありました。でも、自分の好きな表現や、好きな人の作品を改めて振り返ると、自己中な人に憧れる傾向があるんですよね。

そういったエゴの強い人を見て「自分もああいう風に身勝手に生きられたらいいよな」と羨むよりも、「もう少しエゴを認めて、自分勝手に表現してもいいかも」と感じるようになってきた。考え方が変わってきているところです。


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受け取る人がいるからこそ、今の自分が成り立っている

━━今作のタイトル”What Do You Want?”に絡める訳ではないですが……このコロナの一連の事態が収束したら、まずは何をしたいですか?

ライブしたい! お客さんと騒ぎたいのもあるけど、好きなミュージシャンと一緒にステージで演奏したいです。ステージの上で一緒に演奏している感覚が尊くて、恋しい。
受け取ってもらう人を楽しませたいという気持ちも強くなったので、どこまで自分がやりたいことだけをやるかは難しいですけど。ライブができない状況になって「自分は受け取る人がいるから成り立っているんだ」と気づかされました。

━━では、もし受け手のことを考えずにエゴを突っ走らせることができるとするなら、自分がやりたいこと、新たに挑戦したいことはなんですか?

五感を最大限に利用したイベントをやりたいなと思います。遠隔でしかできない音楽の楽しみ方を探ることはできたけれど、その一方でライブであることの価値が高まったと思う。対面だからこそできるようなライブの形式を探っていきたいなと思います。

━━確かに。この取材も本当はZoomじゃなくて対面でやりたかったです……。でもお話を聞いていると、この自粛要請期間中、人と一緒に何かを体験することから一時的に離れてしまったことは、Reiさんの次の楽曲にも影響を与えそうな気がしてます。

そうですね……。次はすごくパーソナルなものを作りたいです。自叙伝的なことを書くわけではなく、質感的にパーソナルなもの。隣で人の息遣いが聞こえるような、生々しい言葉やサウンドを作りたいです。
ここ最近、自分が聴いているものがそういうものばかりなんです。汚くても、暗くても、明るくてもいい。近くにある感じ、傍にいてくれると思う曲を、「君」っていう一人に届けるために作るのかなと思います。玉置浩二さんの作品で、亡くなった猫に宛てた『プレゼント』というアルバムがあって。そういう強さやリアリティを感じる作品にしたいです。


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Text by Nozomi Takagi
Photo by TAK SUGITA


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Rei
卓越したギタープレイとボーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。

兵庫県伊丹市生。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシックギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。
2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、1st Mini Album『BLU』をリリース。
FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC、RISING SUN ROCK FESTIVAL、ARABAKI ROCK Fest、SXSW Music Festival、JAVA JAZZ Festival、Les Eurockeennes、Heineken Jazzaldiaなどの国内外のフェスに多数出演。

2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる「TED NYC」でライヴパフォーマンスを行った。
2019年11月7作品目となる 4th Mini Album『SEVEN』をリリース。
2020年4月3日に専門学校 モード学園(東京・大阪・名古屋)新CMソングの「What Do You Want?」をリリース。

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