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前世代に比べて窒素酸化物を80%削減

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
数年前まで欧州では、優れた走行性能や燃費、運転のしやすさを求めるドライバーは、ターボディーゼルを搭載したフォルクスワーゲン・ゴルフを選んできた。

英国の道にもディーゼルのゴルフが溢れていた。やや出だしの鈍いクルマではあったが、多くのメリットが補い、価格も納得できるものだった。しかし世の中を騒がせた不正に関しては、多くの読者が知るところだと思う。

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フォルクスワーゲン・ゴルフ2.0 TDI

それからの選択肢といえば、1.5LのガソリンエンジンとなるTSI。スムーズに回転するダウンサイジング・ターボで、8代目になった新ゴルフにも採用され、電圧48Vのマイルドハイブリッドが組み合わされている。

電動化が進む中で、ディーゼルエンジンがかつての高支持率を得ることはないだろう。だがフォルクスワーゲンの技術者によれば、8代目ゴルフに搭載される新しいTDIは、同排気量のガソリンエンジンより排気ガスがクリーンなのだという。

環境に優しいディーゼルを実現しているのが、尿素の二重投与システム。アドブルー液の噴射口を触媒の上流側に2つ設けることで、排気ガスの広範囲の温度に対応。窒素酸化物の濃度は、前世代のエンジンに比べて80%も削減しているそうだ。

かなり大掛かりなシステムにも見えるが、新しいゴルフは非常に環境に優しいことは間違いない。燃料消費も少なく、ドライバーのお財布にとってもメリットはある。

まだ具体的な燃費は公表されていないが、先代のTDIユニットと比べて17%も向上しているという。つまり、WLTP値でも21.0km/Lは超えてくることになる。

素晴らしいMQBシャシーの精度

驚くほど優れた燃費を実現しているのが、EA288エボ・エンジン。型式は先代と共通しているが、機械的な損失を大幅に減らし、中身は全面的に新しくなっている。

ロードテストで検証する必要はあるものの、現在の8代目ゴルフの中で最も燃費に優れているグレードがTDIとなるだろう。来年には248psを発生するプラグイン・ハイブリッドのGTEも登場する予定だが、長距離を走った際の燃費ではTDIの方が有利かもしれない。

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フォルクスワーゲン・ゴルフ2.0 TDI

新しいTDIの排気量は2.0L。最高出力は110psと150psの2段階が用意され、実用性と経済性重視の人と、8代目のシャープなルックスに見合う馬力を求める人との、両方の希望を叶えてくれる。

トランスミッションは、7速デュアルクラッチ・オートマティック(DCT)か6速マニュアルを英国では選べる。今回試乗したのは7速DCT版で、最高出力は150ps版。最大トルクは36.7kg-mと太く、1750rpmから湧出する。

走り出してみると、運転は安楽であっさり味。過去のTDIとも共通する雰囲気が残っている。過度に燃費重視のDCTのプログラムはガソリンエンジン版では相性が悪いが、ディーゼルエンジンなら好印象。太い低回転域のトルクによって、ほとんどの場面でスムーズに走る。

前回試乗したマイルドハイブリッド版の1.5 eTSIでも同様だったが、強化されたMQBシャシーの精度が素晴らしい。コーナリング時では、カーブ外側のダンパーが引き締まり、内側のダンパーが柔らかくなる設定が与えられ、旋回性を高めている。

フォルクスワーゲンでこの足さばきをするモデルは初めてだと思う。明確なアンダーステアに持ち込むには、かなり負荷を掛けなければ難しい。

上質ながら最良の組合せではない

乗り心地もしなやかで全般的に良い。試乗車にはDDCと呼ばれるアダプティブダンパーが装備されていたが、150ps以上のゴルフに採用される独立懸架式のリアサスペンションの影響も大きいはず。

今回の試乗コースを走った限り、橋桁の継ぎ目などでは明確な振動があった。英国で乗る場合は18インチより小さいホイールの方が望ましいと思う。

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フォルクスワーゲン・ゴルフ2.0 TDI

ディーゼルエンジンは燃費を優先させたためか、高負荷時のノイズが予想よりも荒々しい。先進的な雰囲気のインテリアとは不釣り合いに感じる。穏やかに走っている限り、熟成された上質な味わいはある。

車内はイノビジョン・コクピットと呼ばれるタッチモニターとセンサーによる操作系が導入され、物理的なスイッチはほぼ見当たらない。使い勝手は完璧とはいえず、コマンドや操作方法を覚える作業に抵抗を感じる人もいるだろう。

開放的なインテリア全体のデザインや素材の質感は非常に高く、メルセデス・ベンツAクラスが安っぽく、BMW 1シリーズが狭く感じられてしまうほど。

これらの印象をまとめると、ファリミー層向けのハッチバックとして最良の組合せとするには、違うエンジンも試したくなる。特に高速道路での合流加速や、3速コーナーの脱出時に響くTDIエンジンの唸り声が、上質さを薄めている。

ただし、エンジンが洗練性を欠くわけではない。7速で走行できる高速道路では回転数は1500rpm程度に保たれ、エンジンの存在自体が目立たなくなる。シャープな形状のドアミラーから生じる風切り音が気になるくらいに静かだ。

低速域では2000rpmを超えるまで、やや鈍さを感じることもある。だが3速以上の速度域では、4000rpm以上回す必要がないほどリニアで力強い加速が得られる。

日常的に長距離を走るならディーゼル

多くのドライバーにとって、使いでの良い低速トルクは価格に見合う強みでもある。荷物や家族を沢山乗せて移動する時、TSIだけでなくマイルド・ハイブリッドのeTSIと比べても、力強い走りを味わえるはず。

高速巡航時の上質さを備えた燃費で優れるディーゼルエンジンは、日常的に長距離を走るドライバーにとって大きな魅力となる。走りの楽しさではTSIの方が上だとしても。

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フォルクスワーゲン・ゴルフ2.0 TDI

BMW 1シリーズのエンジンの方が、訴求力は強いかもしれない。ハンドリングも秀逸で、インフォテインメント・システムも操作しやすい。だが居心地の良さ、特にリアシートのヘッドルームの狭さは避けがたい。

メルセデス・ベンツAクラスの乗り心地は新しいゴルフに及ばないし、アウディA3はモデル末期。最新のフォード・フォーカスには、ゴルフ並みの洗練性が備わらない。フォルクスワーゲンが採用した運転支援技術や、質感も見た目も良いコクピットも無視できない価値がある。

車両価格や燃費が正式に明らかになるまで、評価は難しい。それでも少なくとも7代目と同様に、8代目ゴルフもこのクラス最強のオールラウンダーであることは間違いないだろう。

英国の道でディーゼル・ハッチバック対決もしてみたいところだ。すべての主要モデルを直接比較して、お互いの実力を確かめたい。

フォルクスワーゲン・ゴルフ2.0 TDIのスペック

価格:2万8000ポンド(392万円・予想)
全長:4284mm
全幅:1789mm
全高:1456mm
最高速度:223km/h
0-100km/h加速:8.8秒
燃費:−
CO2排出量:−
乾燥重量:1400kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒1968ccターボチャージャー
使用燃料:経由
最高出力:150ps/3500−4000rpm
最大トルク:36.7kg-m/1750−3000rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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