日本サムスン「870 EVO」2TBモデル

 日本サムスンは、クライアント向け2.5インチSSD新モデル「870 EVO」を発表した。サムスン製2.5インチSSDミドルレンジモデル「860 EVO」の後継として位置付けられており、最新世代のNANDフラッシュメモリとSSDコントローラを採用することで性能向上を実現している。

 今回は、容量2TBモデルをいち早く試用できたので、仕様や性能を確認していこう。日本では2021年1月下旬の発売を予定しており、価格はオープンプライス、容量2TBモデルの市場想定価格は27,280円。

2.5インチSATA SSDとしてほぼ極限の性能を実現

 サムスンのクライアント向け2.5インチSSDでは、QLC(4bit MLC) NANDを採用する低価格モデルのQVO、TLC(3bit MLC) NANDを採用するミドルレンジモデルのEVO、最上位モデルのPROと3シリーズが用意されているが、今回登場した870 EVOはミドルレンジの新モデルで、2018年に登場した860 EVOの後継として位置付けられている。

 870 EVOが採用するNANDフラッシュメモリは、1セルあたり3bitのデータを記録できるTLC仕様のサムスン製3D NAND「第6世代V-NAND」となる。最新の第6世代のV-NANDで、メモリセルの積層数は128層に達している。従来モデルの860 EVOでは第4世代V-NANDを採用していた(2018年1月登場時点、その後変更されている可能性もあるが、詳細は未発表)ので、そこから2世代新しくなった。

 また、コントローラも最新世代のMKXコントローラを採用。こちらはQLC NANDを採用する870 QVOに採用されているコントローラと同じものとなる。

サムスンの2.5インチSSD新モデルとなる870 EVOは、TLC仕様の第6世代V-NANDと、MKXコントローラと、最新世代のNANDおよびSSDコントローラを採用する

高さは6.8mmと従来モデル同様

今回は2TBモデルを試用したが、最大容量は4TBとなる

接続インターフェイスはSATA 6Gbps

 そのうえで、コントローラ、内部の回路設計ともに第6世代V-NANDに最適化されており、書き込み時には450μs以下、読み出し時には45μs以下のオペレーションスピードを実現。これは、前世代となる第5世代V-NANDに比べて10%以上の改善となっており、これによって870 EVOではシーケンシャルアクセス速度がリード最大560MB/s、ライト最大530MB/sと従来モデルよりも高速化。また、低キュー深度のランダムアクセス速度も最大38%向上しているという。

 表1は、870 EVOのおもな仕様となる。サイズは厚さ6.8mmの2.5インチと従来同様で、接続インターフェイスはSATA 6Gbps。容量は250GB、500GB、1TB、2TB、4TBの5種類用意する点や、保証期間が5年となっている点も従来モデルと変わらない。

【表1】870 EVOのおもな仕様
容量 250GB 500GB 1TB 2TB 4TB
フォームファクタ 2.5インチ、厚さ6.8mm
インターフェース SATA 6Gbps
NANDフラッシュメモリ 第6世代 3bit MLC(TLC) V-NAND
コントローラ MKX
DRAMキャッシュ容量 512MB LPDDR4 1GB LPDDR4 2GB LPDDR4 4GB LPDDR4
シーケンシャルリード 560MB/s
シーケンシャルライト 530MB/s
ランダムリード(4KB/QD1) 13,000IOPS
ランダムライト(4KB/QD1) 36,000IOPS
ランダムリード(4KB/QD32) 98,000IOPS
ランダムライト(4KB/QD32) 88,000IOPS
総書き込み容量 150TBW 300TBW 600TBW 1,200TBW 2,400TBW
保証期間 5年

 なお、従来モデルの860 EVOの仕様はこちらの記事にあるとおりだ。これを見ると、860 EVOのランダムライトは4K/QD1が42,000IOPS、4K/QD32が90,000IOPSと、870 EVOを上回っていることがわかる。

 サムスンによると、860 EVOの仕様はWindows 7環境で評価したもの、870 EVOはWindows 7のサポートが終了したことからWindows 10環境で評価したものだという。そして、サムスンの内部調査によると、Windows 10ではWindows 7に比べてランダムライト時の遅延が大きく、ランダムライト速度が低下してしまうことがわかったそうだ。

 そこで、860 EVOでもWindows 10環境で性能を再検証したところ、ランダムライト速度が4K/QD1で36,000IOPS、4K/QD32で88,000IOPSになったという。そのため、実際にはランダムライト速度も870 EVOのほうが上回っていると説明している。

 長時間使用した場合の性能低下は、860 EVOと比較して約30%改善しているという。これによって、長時間安定して高い性能が発揮できるとしている。

Windows 10ではWindpws 7よりもランダムライト時の遅延が大きくなっているという

こちらが860 EVOにおけるWindows 7とWindows 10でのランダムライト性能の違い。Windows 10環境では性能が大きく落ちていることがわかる

870 EVOでは、長時間利用した場合の速度低下の割合が860 EVOに比べて約30%改善しており、安定して高い性能が発揮されるとしている

 総書き込み容量は表1のとおりで、250MBモデルで150TBW、4TBモデルで2,400TBWとなる。これは860 EVOと同等だが、十分な数字となっており耐久性も不安がないだろう。

 NANDの一部をSLCキャッシュとして利用する「Intelligent TurboWrite」の仕様は表2にまとめたとおりで、固定領域および可変領域の容量は従来モデルから変わっていない。また、容量1TB以上のモデルでは、Intelligent TurboWriteが尽きる大容量の書き込み時でも速度が低下しないこともわかる。

 このほか、Windows 10のモダンスタンバイが要求する要件を満たしており、モダンスタンバイ対応パソコンで利用する場合には、高速な復帰やスリープ移行が可能になるとともに、スリープ時の消費電力も低減されるとしている。

【表2】870 EVOのIntelligent TurboWriteの仕様
容量 250GB 500GB 1TB 2TB 4TB
TurboWrite領域容量 標準 3GB 4GB 6GB 6GB 6GB
Intelligent 9GB 18GB 36GB 72GB 72GB
合計 12GB 22GB 42GB 78GB 78GB
シーケンシャルライト速度 TurboWrite有効時 530MB/sec 530MB/sec 530MB/sec 530MB/sec 530MB/sec
TurboWrite無効時 300MB/sec 300MB/sec 530MB/sec 530MB/sec 530MB/sec

 870 EVOの日本での市場想定価格は、250GBモデルが5,000円、500GBモデルが6,980円、1TBモデルが11,480円、2TBモデルが27,280円、4TBモデルが未定となっている。新製品ながら、すでにかなり値下がりしている860 EVOシリーズの実売価格と比べても十分競争力のある価格設定で、870 EVOへの置き換わりが一気に進みそうだ。

従来モデルと比べてランダムアクセス速度の向上を確認

 では、簡単にベンチマークテストの結果を紹介しよう。利用したベンチマークソフトは「CrystalDiskMark 8.0.1」と、「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類。テスト環境は以下にまとめたとおり。また、今回は860 EVOの2TBモデルも用意できたので、そちらの結果も掲載する。なお、テスト環境は下に示したとおりだ。

  • テスト環境
    マザーボード:MSI MAG Z490 TOMAHAWK
    CPU:Core i5-10400
    メモリ:DDR4-2666 16GB
    システム用ストレージ:Samsung SSD 840 PRO 256GB
    OS:Windows 10 Pro 64bit

 まず、CrystalDiskMarkの結果を見ると、シーケンシャルアクセス速度はリード、ライトは870 EVOと860 EVOいずれもほぼ同等の速度が得られている。スペック上ではリード、ライトともに870 EVOが高速となっているが、その差はいずれも10MB/sとわずかで、ベンチマークテストでは差が現れなかったと考えられる。いずれにしてもシーケンシャルアクセス速度はSATA 6Gbpsのほぼ上限に近く、SATA SSDとしてはトップクラスの速度が発揮されると考えていいだろう。

 それに対しランダムアクセス速度は、870 EVOのほうがわずかだが上回っている。誤差の範囲内と言えなくもないが、このあたりはNANDフラッシュメモリとコントローラの進化による性能向上が現れているのではないだろうか。

CrystalDiskMark 8.0.1 データサイズ1TiB

870 EVO

860 EVO

CrystalDiskMark 8.0.1 データサイズ64TiB

870 EVO

860 EVO

 続いて、ATTO Disk Benchmarkの結果だ。こちらもCrystalDiskMarkのシーケンシャルアクセス速度の結果同様に、双方の違いはほとんどなかった。とはいえ、結果自体は申し分ないもので、速度的な不安はまったくないと言える。

ATTO Disk Benchmarkの結果

870 EVO

860 EVO

 最後に、HD Tune Pro 5.70を利用して150GBのデータを連続で書き込んだ場合の速度をチェックしてみた。870 EVO、860 EVOともに、容量2TBモデルはIntelligent TurboWriteが尽きても書き込み速度が低下しないことになっているが、それをチェックするためにこのテストを行なってみた。

 結果を見ると一目瞭然だが、Intelligent TurboWriteの上限となる78GBを超えても書き込み速度が低下していないことがわかる。このため、大容量データを扱う場面でも速度が低下することなく快適に利用できると言える。

HD Tune Pro 5.70を利用し150GBのデータを連続で書き込んだ場合の速度変化

870 EVO

860 EVO

2.5インチSATA SSDの新定番としてお勧め

 EVOシリーズSSDは、SATA仕様のクライアント向け2.5インチSSDの中で圧倒的なシェアを獲得しており、2.5インチSSDの定番シリーズとして高い人気を誇っている。その最新モデルとなる870 EVOは、最新世代のV-NANDとSSDコントローラの採用によって従来モデルからの性能や安定性の向上を実現し、魅力が向上している。

 QLC NANDを採用する低価格SSDの台頭によって、容量あたりの価格という点ではQLC NAND採用製品のほうが有利となっているが、耐久性や安定性はTLC NAND採用の870 EVOが圧倒しており、より安心して利用できるだろう。

 そして、その価格も、従来モデルの860 EVOの実売価格と比べてそれほど大きく変わらないため、価格の点でも十分な競争力がある。性能、耐久性、安定性、価格のバランスを考えると、870 EVOは2.5インチSATA SSDの新定番として魅力的な存在となりそうだ。


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