2000年に通販サイト「Amazon.co.jp」を日本で開設したアマゾンジャパン。同社の20年間の歴史を振り返ると、実にさまざまなサービスを日本でローンチしてきた。リテールを中心に、物流サービスやクラウドサービスなどを提供し、Kindle、FireTV、Echoなどのデバイス拡大とともに消費者との接点を多岐にわたり増やしてきた。

 そんな同社の広告事業を担うアマゾンアドバタイジングジャパンは2000年代後半に発足し、消費者との多様なタッチポイントやオーディエンスのインサイトを効果的に活用して幅広く広告事業を展開してきたが、同社カントリーマネージャーの塚本信二氏によれば、いま「フルファネル化がさらに加速している」という。


アマゾンアドバタイジングジャパン カントリーマネージャーの塚本信二氏

 なかなか明かされることのないアマゾンジャパンの広告事業の現状や事例なども含め、塚本氏に話を聞いた。

アマゾンで「フルファネル」案件が引き続き加速している

——まず、アマゾンジャパンの広告事業の現状について教えてください。

 ご存知の通り、アマゾンアドバタイジングはこれまで、リテールを中心に成長してきました。ここ数年の変化としては、広告運用に対する売上を測るROAS中心の“オン アマゾンファネル”から、ブランディング目的の“オフ アマゾンファネル”も含めた「フルファネル」の案件が増えてきています。

 アマゾンの日本での月間ユニーク訪問者数は5000万人以上です(出典:Nielsen Digital Content Measurement 2019年2月度 ブランドレベル 家庭と職場からのアクセス)。今年マクロミルと共同で行った調査では、訪問者数の約90%が「アマゾンでこれまで知らなかったブランドや商品を知って、欲しいと思った」と回答しています。

 購入のためではなく「情報収集」のためにアマゾンを訪問する割合も多く、今年のマクロミルの調査によると来訪者の74%が予定外の商品を見つけて購入しており、実店舗で購入する前にアマゾンで商品を検討している方も、消費財では35%、耐久財では37%いらっしゃるという状況です。

 つまり、オフラインの購買にもAmazon上の情報が活用されているということです。そのため、アマゾンには消費者にも広告主にも最適な環境を提供していけるツールがある。それらを上手く活用していこうという動きが、企業の宣伝やブランディングの部門の方にも以前にも増して広がってきているのだと思います。

——セールスだけではなくブランディングを目的としたフルファネルの広告案件が増えている中、アマゾンとして重視していることは何でしょうか。

 最終的にどこで購入するかはお客様、つまり消費者の皆さんが決めることなので、我々はアマゾンだけでご購入いただくということは、全く考えていません。購入まで時間をかけて検討したいと思っている消費者の皆さんも含めて、すばらしい体験を提供し続けていれば、オンでもオフでも必ず成果が現れてくるということを重視しています。

 アマゾンがご提供させていただくサービスやツールは益々多様になっています。でも、プロダクトアウトだけでは駄目なんです。広告主のブランドに寄り添い、それぞれの広告手法の役割を明確にして、ストーリーを紡いでいくことで、消費者の皆さんにきちんとした体験を届けていかなければと考えています。フルファネルへのシフトを図るなかで、効果測定ソリューションであるアマゾン アトリビューションなどのな取り組みを加速させています。

——アマゾンではどのような層を集客できているのでしょうか。

 いまアマゾンは、購入やコンテンツ消費のみならず「情報収集の場」になっており、新しい商品や情報に敏感な方が多く集まっています。これは2019年のマクロミルによる調査データになりますが、新商品が出ると情報をチェックせずにはいられない好奇心旺盛な方、新しいものをいち早く購入する方、新商品の情報を周囲から訊かれることが多くご自身としてもよいものを知人に勧めたいという方が多いですね。

「メディア」としてのアマゾン

——ECサイトのみならずFireTVまで、広告を展開できるメディアがかなり多岐にわたる印象ですが、直近で新たな動きなどもあるのでしょうか。

 Amazon.co.jpの検索結果ページに表示されるスポンサーブランド広告で、最近動画を使用できるようになりました。また、Twitchが正式にローンチしてインサーション動画を配信できるようになりました。全体として、私たちは動画広告ソリューションで多くのことを行っており、このような機会は来年も成長していくであろうと思っています。

——たとえば、FireTVではどのような広告体験が提供されるのでしょうか?

 FireTVを接続したテレビ画面は、多分家の中で一番大きなスクリーンなので無視できないと思っていて、広告にマウスをかざすとミニコマーシャルが流れるサービスもスタートしました。これはブランドキャンペーンの他の要素を効果的に補完するものです。日本ではトヨタ自動車様などにすでにご利用いただいています。

——オフ アマゾンファネルのほうでは、どのような動きがありますか。

 定期便ユーザーに対して新商品のサンプルをお送りするものや、配達時に使うボックスをクリエイティブに活用したブランディングなどは面白いですね。特別仕様の箱で荷物が届くのでかなり目を引きます。数量限定なので、実は私もまだ受け取ったことがなくて楽しみにしているのですが(笑)。

 2020年は、コロナ禍でStay at Homeになってしまった子どもたちに向けて、社会貢献的な目的で、段ボール箱を使って工作をするというキャンペーンを実施したのですが、ありがたいことにかなりの反響がありました。

——広告主はオンとオフをどのように使い分けていくべきでしょうか。

 これはもう10年くらい言い続けていますが、オンでもオフでも「体験」がすべてです。私自身、生活者として考えてみても、嫌な体験をしてしまったお店にまた戻りたいとはなかなか思えません。それはデジタルでも同じことです。たとえば「これを買っている人におすすめの商品」と言われて、自分が求めているものと全然違うものが表示されたらむしろ逆効果ですよね。

 「テクノロジーがおもてなしに変わるタイミング」というものがあるはずで、見つけやすさ、導線、ナビゲーション、レコメンドなどあらゆる機能が、オンラインそれぞれのファネルにおいて生活者にとって使いやすいものになり、お客様ひとりひとりに自分は大切にされていると感じていただける最高の体験を提供していけるよう、努力し続けることが一番重要だと思っています。仮に、それがアマゾン以外で購入されたとしてもです。

 広告主様には、充実してきている動画を駆使したミッドファネルを含めてメディアとしてのアマゾンが提供するあらゆる広告を、オーディエンスプランニングをした上でPDCAを回しながら展開し、ブランドとお客様を繋げていく「ストーリー」が重要だということを、よくお話させていただいています。


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