メタボリックシンドローム(Met-S)の人への栄養指導と言えば、まずは摂取エネルギー量を減らすことを目指すケースが多いのではないだろうか。あるいは、早食いや就寝前の食事を改めることからスタートする場合もあるだろう。いずれにしても、「非健康的な習慣」を減らすことが重視される。

そんな中、朝食にコーヒーとパンを食べるという、一見、健康的とも非健康的とも言えなさそうな習慣が、Met-Sを抑制しているかもしれないという、やや意外な研究結果が報告された。京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学の小山晃英氏らの研究によるもので、結果は「Nutrients」に掲載された。

横断研究のため因果関係はまだ不明だが、「あれは駄目、これも駄目」という禁止事項ばかりになりがちなMet-Sに対する栄養指導に、アクセントを加える情報として活用できるかもしれない。

コーヒーや緑茶の摂取頻度と、朝食にパンを食べるか否かでMet-S有病率を比較

疫学研究から、コーヒーや緑茶の摂取量とMet-Sや肥満の有病率が逆相関することが報告されている。また、健康的な食事スタイルの一つに挙げられる地中海式の食事では、朝食にコーヒーとパンを食べることが多い。しかし、コーヒーや緑茶の摂取量と、朝食にパンを食べるか否かを組み合わせて検討した研究はみられない。そこで小山氏らは、10万人以上の健康な一般住民を20年間追跡し、生活習慣や遺伝的背景と疾患リスクとの関連を調査している「J-MICC STUDY(日本多施設共同コーホート研究)」のデータを用いて、その関連を検討した。

対象者のコーヒー、緑茶の摂取頻度、朝食にパンを食べる人の割合

検討対象は、J-MICC STUDYの参加者のうち京都で登録された3,539人(男性1,239人と女性2,300人)。年齢は57.6±10.1歳。

コーヒー摂取頻度は、1日1回未満が28.0%、1日1回が28.2%、1日2回以上が43.8%であり、緑茶については同順に50.6%、15.1%、34.2%だった。また朝食にパンを毎日食べるという人は41.6%だった。

その他の生活習慣関連指標は、身体活動量が14.5±10.3METs・時/日、飲酒量(エタノール換算)11.9g/日、睡眠時間6.40±0.98時間/日、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)212±408であり、16.7%が高血圧、15.3%が脂質異常症、3.2%が糖尿病の薬物療法が行われていた。

この対象の平均BMIは22.2±3.24、内臓脂肪面積は61.5±32.7cm2であり、15.7%がMet-Sだった。

まずはコーヒー、緑茶の摂取頻度との関連を検討

初めに、コーヒーや緑茶の摂取頻度と臨床検査指標との関連を、単回帰分析で検討した。すると、コーヒー摂取頻度は、トリグリセライドおよび内臓脂肪面積と負の相関が認められた。一方、緑茶の摂取頻度は、コーヒーとは反対にトリグリセライドと正相関した。緑茶の摂取頻度と内臓脂肪面積との関連は示されなかった。

続いて、内臓脂肪面積や肥満に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒・身体活動量、睡眠時間、高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物治療の有無)で調整し重回帰分析を施行した。

コーヒーの摂取頻度は内臓脂肪面積と逆相関、緑茶は関連なし

その結果、コーヒー摂取頻度が高いほど、内臓脂肪面積が小さいという有意な逆相関が認められた(β=-1.652、p<0.001)。ただしコーヒー摂取頻度とBMIの関連は有意でなかった。

緑茶の摂取頻度に関しては、内臓脂肪面積およびBMIのいずれとも、有意な相関がみられなかった。

コーヒーを1日1回以上飲む人は、内臓脂肪型肥満やMet-Sが有意に少ない

次に、コーヒーの摂取頻度が1日1回未満の人を基準として、1日に1回以上飲む人が、肥満(BMI25以上)、内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm2以上)、Met-S(日本の判定基準)に該当する割合を、前記同様の因子で調整したうえで検討した。

すると、コーヒーを1日1回以上飲む人は、内臓脂肪型肥満のオッズ比(OR)が0.746(95%CI;0.588~0.947)、Met-SはOR0.706(0.565~0.882)であり、有意に有病率が低いことが明らかになった。ただし、肥満に対してはOR0.869(0.715~1.055)であり、有意な影響がみられなかった。

緑茶の摂取頻度は、肥満、内臓脂肪型肥満、Met-Sのいずれの有病率にも、有意な影響を及ぼしていなかった。

続いて、朝食にパンを食べることを加味して検討

ここまでの結果をまとめると、コーヒー摂取回数が多いほど内臓脂肪面積が小さく、1日1回以上のコーヒーの摂取習慣のある人では、内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率が低いこと、その一方でコーヒーの摂取頻度と肥満の関連は有意でないこと、および緑茶の摂取頻度は内臓脂肪面積と関連がなく、内臓脂肪型肥満やMet-S、肥満の有病率とも関連がないというものだ。

続いて、朝食にパンを食べるという習慣を追加した解析を行った。

朝食にコーヒーや緑茶とともにパンを食べる人は、Met-Sの有病率が低い

その結果、1日1回以上コーヒーを飲み、かつ朝食にパンを食べる人(1,172人、33.1%)は、肥満のOR0.613(0.500~0.751)、内臓脂肪型肥満のOR0.549(0.425~0.710)、Met-SのOR0.586(0.464~0.741)であり、すべての有病率が有意に低かった。

さらに、緑茶を1日1回以上飲み、かつ朝食にパンを食べる人(730人、20.6%)も、肥満はOR0.645(0.504~0.825)、Met-SはOR0.659(0.499~0.870)であり、有意に有病率が低かった。ただし内臓脂肪型肥満については有意な関連がなかった。

コーヒー+パンの朝食で、生活習慣の全般的な改善にトライ

このような関連の背景として著者らは、コーヒーにはエネルギー消費亢進作用が報告されており、朝食にパンを食べるとともにコーヒー摂取回数が増える可能性を考察として述べている。ただし、今回の検討では朝食でのパンの摂取とコーヒーの摂取回数は、それぞれ独立して内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率に影響を及ぼしていたという。

また本研究の限界点としては、横断研究のために因果関係には言及できないこと、摂取されているパンが肥満を来しにくい全粒粉パンか否かが不明なことなどを挙げている。その上で結論を、「コーヒーの摂取回数が多いことと朝食時にパンを食べることの組み合わせは、少なくとも内臓脂肪型肥満やMet-Sの有病率の低さと関連している」とまとめている。

本研究の成果を、Met-Sの栄養指導において、例えば就寝間際に食事をして朝食を欠食しているような人に対し、早起きしてコーヒーとパンを食べ、遅い時間の食事を減らしてもらうといった習慣改善の提案につなげるのも良いかもしれない。

文献情報

原題のタイトルは、「Breakfast Time Is Associated with Lower Visceral Adipose Tissue and with Lower Prevalence of Both Visceral Obesity and Metabolic Syndrome in Japanese Populations: A Cross-Sectional Study」。〔Nutrients. 2020 Oct 11;12(10):3090〕
原文はこちら(MDPI)


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スポーツ栄養Web編集部

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