機内アナウンスを体験する大学生=いずれも体験フライトの機内で

 成田国際空港(千葉県成田市)発着のチャーター機に搭乗し、東海地方上空を経由して約千キロを九十分で周遊する「航空教育プログラム」が誕生した。操縦士とは別に現役パイロットが客室で裏話を披露、機内アナウンスの体験もできる。対象は中高生で「新型コロナウイルスの影響で中止した修学旅行の代わりに」と学校側の期待も上昇中だ。

機内ではパイロットの西崎圭さんが、飛行機に関する豆知識などを紹介

 機体が滑走路へそろりと動きだす。すると客室最前列に座るジェットスター・ジャパンの現役パイロット、西崎圭さん(49)が「飛行機が空港内を走ることを『タクシー』と言います。この間、パイロットは翼の面の動きとかをチェックしていて忙しい」と解説する。

機内から見た富士山

 九月末、教職員や旅行会社の社員らを招いた体験フライトがあり、記者も搭乗した。離陸すると、西崎さんやこの日の機長・文屋貴光さん(46)が「右下に見えるハート形は渡良瀬遊水地。見えるとラッキーな気がします」「左に富士山が見えてきました。影富士になっていますね」と細やかにアナウンス。高度は六千メートルで、定期便より五千メートルほど低く、雲が少なければ地形がよく分かる。

 「オンラインでもいろいろできるが、実際に飛行機に乗る体験は、ひと味違う思い出になるのでは」。「航空教育プログラム」を発案した「エアーチャータージャパン」(千代田区)の中鉢(ちゅうばち)真輔社長(46)は自信を見せる。同社は海外の航空会社向けにチャーター機を提供しようと昨年、設立された。コロナ禍に見舞われ「なにか別の仕事を」と考え、同じくコロナ禍で修学旅行や校外学習が制限された中高生対象のフライト計画を練ってきたという。

体験フライトの搭乗機=成田空港で

 さて機上では、同社の関連会社でインターンをする中沢凜々子(りりこ)さん(20)=玉川大三年=ら三人が、機内アナウンス体験。客室乗務員(CA)が使うマイクで「ご搭乗のみなさま、おはようございます。機長は文屋…」などとまずは日本語で、続けて英語であいさつした。「ボタンを押し損なって声が小さくなった」と中沢さんは反省するが、見守った本職のCA樋渡(ひわたし)亜希さん(45)は「初めてなのに上手。百点満点」。

 続いて西崎さんへの質問タイム。参加した都内の中学校教員から「学校でエコの授業をしていますが、今回のフライトで使う燃料はどのくらいですか?」と聞かれる。「およそ三・三トンですね」と西崎さん。フライトを楽しむだけでなく、CO2排出削減や空港周辺の騒音問題などを考えるきっかけになりそうだ。

コックピット

 機体は洋上を東へ戻り、伊豆大島や三宅島を眼下に見た後、九十九里浜を横切って着陸。降りる時にコックピットものぞける。参加した地元の市立成田中学校の松田信明教諭(39)は「京都・奈良の修学旅行を中止した代わりになるかも。高校受験後の二月末か三月なら…」。

 費用は一人三万円ほど。政府の観光支援事業「Go To トラベル」の期間中は値引きがある。中鉢社長によると、既に交渉中の学校もあり「海外への修学旅行を中止した学校から『アナウンスや機内サービスを英語で』という要望があった。空席を設けるなどの感染対策も含め、リクエストに応じていきたい」。

 連携するジェットスター・ジャパンも利用客減の歯止めを期待。コロナ禍から生まれたビジネスは、中高生の気分も上げられるか。

 文・梅野光春/写真・芹沢純生

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