国内旅行の需要喚起策としてGo Toトラベルキャンペーンが始まり、観光業の回復に向けた動きが本格化している。しかし、感染拡大の第二波への懸念も払拭できず、客足の戻りは鈍い。withコロナ時代を切り抜けるために、宿泊施設や観光地が今できることは何か。

今回は世界を代表するOTAであるエクスペディアホールディングス株式会社代表取締役 マイケル・ダイクス氏をお招きして、検索や予約動向から見えてくる今後の旅行ニーズやマーケットの捉え方、将来のインバウンドの戻りについて展望を語っていただいた。

 

コロナショックで直面した課題にIT技術とスピードで対応

コロナ発生後、エクスペディアがまず直面したのがキャンセルの嵐だ。ピーク時は10週間で約2200万件のキャンセル電話がコールセンターに殺到した。これは通常の5~7倍の件数に相当し、人員増加だけでは対応しきれない状況に陥っていた。そこでIT企業ならではの技術力を活かし、キャンセルの処理をより簡単に行なえるツールを約2週間で開発。これまでコールセンターに一本化していたキャンセル権限を、パートナーである提携宿泊施設にも移譲した。

「約2週間でこのような機能をグローバルで開発したのは初めての経験だったが、迅速なキャンセル対応の実現は、お客様と宿泊施設の両方の満足度を高めることにつながった」と話す。

同様に、宿泊施設の衛生管理対策ツールも開発。世界各国の感染防止策を調査し、20項目におよぶチェック項目を設定。日本では提携施設のうち3分の2以上が既に登録済みで、世界的に見ても1~2位を誇る登録率の高さだ。エクスペディアの調査によると、宿泊施設の衛生管理について、世界平均では50%のところ、日本は約80%の人が関心を持っているという結果が出ている。こうした日本人の消費者心理が後押しとなって、日本国内の宿泊施設も”衛生管理について積極的に表示したい”という動きが強まっていると見ている。

 

スマホで直前予約が増加 大都会を避けリラックスした旅行

独自の調査で世界の旅行動向を常に捉え、サービスに反映してきたエクスペディアだが、今後の旅行ニーズをどのように見ているのか。ダイクス氏は「スマートフォンで直前に予約する傾向が顕著に表れている」と指摘する。スマートフォン経由の検索が、コロナ前の50%から現在は75%まで増えている。予約時期も0~3日前が約15%、1カ月前近辺が約25%と2つのピークが存在しているという。

こうした直前のニーズを取り込むためには返金可能な料金プランを設定することが有効だとアドバイスする。

また、Expedia上での地名検索履歴を見ると、最近は沖縄、北海道、石垣島が最も多く検索されており、大都会を避ける傾向がみられた。旅行するなら、温泉旅館が70%、ビーチリゾートが32%、家族旅行が40%など、ゆっくりした場所でリラックスしたいニーズが表れているという。

訪日マーケットについては、年末年始から2月の冬の時期に「京都」を多く検索する傾向が、米国、香港、カナダ、台湾、タイといった国/地域で見られる。また「札幌」「北海道」が多く検索されているのは、香港、シンガポール、米国、タイ、オーストラリアだった。特にシンガポールとタイにおいては、冬に一番行きたい国として日本が検索されていた。このような検索傾向を見てダイクス氏は「新型コロナウイルス感染症が拡大したからといって、日本の観光地としての魅力は損なわれていない」と断言する。

 

旅行したい人「2割」を取り込むために柔軟性のあるプランを設定

Go toトラベルについて民間の調査会社が7月に行ったアンケートによると、キャンペーンを活用して旅行したいと答えた人は約18%だったという。

この結果についてダイクス氏は「今の困難な状況でも2割もいる」とポジティブに捉え、この2割を確実に取り込むために2つのポイントを挙げた。OTAの活用と返金可能プランの拡充だ。

特に返金可能プランは、直前キャンセルでも返金してもらえる安心感から、より多くの予約を集めることができる。既にエクスペディアでは全体の70%が返金可能プランに変わってきているという。

 

観光業復活の鍵を握るインバウンドは冷静なデータ分析に基づいて再開を

感染拡大が下火になっていない中で開始したGo toトラベルには賛否両論はあるが「今や観光業は国内雇用の約8%、GDPの約7%を占め、日本経済の重要な柱の1つとなっている。コロナショックで大打撃を受けた観光業の回復を、国の施策として促進するという方針は支持したい」とダイクス氏は話す。さらに「観光業が復活するためには、国民に対して、安心してインバウンドが再開できることを説明する必要がある」と指摘。

Go toトラベル最中のいま、東京からの旅行者が敬遠されているように、海外からの旅行者を敬遠する風潮は存在するが、冷静にデーターを示せば一様に怖がる必要はないと説く。各国の感染率など客観的なデータを分析してみると、日本と同等かそれよりも低く感染が抑えられている国が存在する。そうした低リスクの近隣国から再開するのが現実的だとの見解を示した。

最後にダイクス氏は「悲観的になり過ぎず、可能性がどこにあるのかデータをもとに冷静に見極め、そこを取り込めるように積極的に努力することが重要だ」と締めくくった。

 

【登壇者プロフィール】

エクスペディアホールディングス株式会社 代表取締役
マイケル・ダイクス氏

1974年沖縄生まれ。マサチューセッツ工科大学数学科卒。米サン・マイクロシステムズ(現オラクル社)に入社。2001年に、同社の東京オフィスに派遣。03年日本マイクロソフトへ転職。07年同社社長室へ異動、COO/社長の経営企画補佐。09年同社SMB営業統括本郡の業務執行役員・統括本部長。13年同社コーポレート営業統括本部の業務執行役員・統括本部長。15年よりエクスペディアホールディングス㈱。

 

【開催概要】
日時:2020年8月7日(金)15:00~16:00
場所:ZOOMウェブセミナー
主催:株式会社やまとごころ


【今後開催予定のセミナー】

◆withコロナ時代の観光戦略 vol.6 ~脱観光・脱インバウンド コロナに負けない事業を作る〜

2020年8月21日(金) 15:00~16:00


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