23日からの4連休。亡父母を今年初めに納骨した墓の様子が気になり、大阪府まで行こうか迷ったが、新型コロナウイルスの感染が広がる中での長距離移動をためらい、見送った。同じように、旅行を計画しながら見合わせた人は多かったに違いない。

 政府は、4連休に間に合わせるため、観光支援事業「Go To トラベル」を前倒しして22日にスタート。東京都発着分を対象から外すなど混乱が続き、感染拡大の懸念から先延ばしすべきだとの声も多かったが、経済に軸足を置く政府は意に介さなかった。西村康稔経済再生担当相は記者会見で、マスク着用など感染防止策を徹底すれば、家族旅行を控える必要はないという考えも示した。

 しかし、国内の新型コロナ新規感染者は「Go To」初日から2日続けて過去最多に。その後、大阪府や愛知県などで過去最多を記録し、全国規模の感染拡大傾向がはっきり表れた。菅義偉すがよしひで官房長官は今月、新型コロナは「圧倒的に『東京問題』と言っても過言ではない」と発言して波紋を広げたが、もはや東京問題と呼べないことは明白だ。

 にもかかわらず、「Go To」を中断する動きは今のところ見られない。気をつければ大丈夫という政府の発信をうのみにできず、迷い悩んでいる国民は多いのではないか。

 気になるのは、安倍晋三首相の言い回しだ。

 首相は、2月に一斉休校を要請した際、国会答弁で「何よりも国民の命と健康を守ることを最優先に、対策をちゅうちょなく実行していく」と強調。その後も同様の表現を繰り返した。

 しかし、今月22日の対策本部では「最も重要なことは、効果的な感染防止策を講じながら、社会経済活動を段階的に回復させていく『両立』をしっかり図っていくこと」と説明。最も大事なものが変わったように聞こえる。

 首相は今月、緊急事態宣言の再発出を否定する一方、「3密」回避など「感染を予防する行動」の徹底を国民に呼び掛け続けた。経済重視を揺るぎなく進めるので、観光に出掛けてほしい。でも感染が広がらないよう、個人で気をつけてほしい―。こう言いたいのだとすれば、かなり難しい注文に映る。

 こうした中、今月17~19日の共同通信世論調査で内閣支持率は38.8%に。前回比で2.1ポイント上がったものの、第2次安倍政権が発足して以降、初めて3回続けて40%を下回った。自民党の支持率も31・9%で、2015年7月、17年7月と第2次安倍政権以降で最も低かった。

 新型コロナで打撃を受けた経済の回復は確かに重要課題だ。しかし、そこに力点を置くあまり、無理を重ねていないか。感染抑止を国民の努力に頼っていないか。民意はそう訴えているように思える。


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