新型コロナウイルス感染拡大による観光業の著しい損害に対して需要喚起のためのGo toキャンペーンは果たして再活性を本当に促せるのだろうか。4月30日に補正予算が国会で通過し観光の需要を喚起するための総額約1兆7000万円のGo toキャンペーンの予算も決定した。新型コロナウイルスの感染拡大による移動の制限で需要が減退してしまった交通や宿泊を中心とした観光産業の需要喚起の起爆剤として期待される。しかし、現状の制度設計では旅行業者等経由で上限を2万円として旅行代金の2分の1相当分のクーポンを付与する制度になっている。

 旅行の予約はインターネットの進化と共に非常に多様化してきており旅行も団体から個人にシフトし、商品も企画旅行から個人のニーズに応じる手配旅行の流れに変わってきている。実際に個人の費用負担による個人旅行は国内旅行全体の66%に及び(日本旅行業協会「数字が語る旅行業2019」より)、オンラインによる旅行の取引は年々伸長し2017年の調査では市場規模は4兆4000億円にも上り、そのうち宿泊の手配は約2兆円、航空、鉄道、バスの交通機関の合計で約2.3兆円(フォーカスライト「日本のオンライン旅行市場第4版」)にも上っている。

出典「数字が語る旅行業2019」(一社)日本旅行業協会

 数字からもオンラインによる旅行の取扱いは年々増加しており、OTAだけでなく宿泊や交通機関へのオンライン直予約も拡大しており予約が多様化していることは明白である。このようなマーケットの状況を踏まえて、クーポン付与という方策で本当に観光業の需要喚起に結びつくといえるのだろうか。

 宿泊の手配をオンラインで取り扱う旅行会社ではクーポンだけではなく利用者への割引や還元には次の宿泊費や交通費に利用できるマイルやポイント付与もある。特に、航空ではマイレージによるポイント付与が主流である。今回のGo toキャンペーンでは飲食業に対する需要喚起を行なうGo to Eatキャンペーンも含まれており、こちらの制度ではオンライン飲食予約サイト経由で利用者に対してポイントを付与すると謳われている。Go to Travelキャンペーンでも同様な制度は認められないのだろうか。手配旅行や交通機関の予約でクーポン以外にもマイルやポイントの付与も可能になればメリットがいくつも見出せる。個人旅行の受け皿になる。交通機関や宿泊施設の予約サイトでの利用の選択肢が増えて裾野が広がる。クーポンと違いマイルやポイント付与は次の旅行需要を創出しリピーター対策にもつながるだろう。

 一部にマイルやポイントがショッピング等の旅行以外に利用できるという声があると聞く。しかし、実際には専業者の場合、顧客囲い込むための自社サービスに利用にしかできないポイントシステムであることが多いし何等か制限も工夫によってかけられるはずだ。

 Go toキャンペーンの主管は経済産業省のキャッシュレス推進室である。キャッシュレス推進で世界に遅れをとっているとも言われる我が国でも今回テレワークが進みオンライン社会への進展がみられた。幅広い仕組みでオンライン対応しなければ、さらに遅れていると言われても仕方がないのかもしれない。

山口一弥:コロンビアビジネススクール通信情報研究所客員研究員等を経て2015年より甲南大学非常勤講師。情報通信学会員。

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