10月後半、カンファレンス取材で約1年半ぶりとなる米国に渡航してきた

新型コロナウイルスの影響により、海外渡航ができなくなって久しい。筆者も2020年2月のアフリカのルワンダ訪問がコロナ禍突入前の最後の海外取材であり、同年3月にヨーロッパ経由で帰国して以来国外に出られていない。それでも慣れたもので、海外在住の関係者とのWeb会議を介しての取材は続いていたし、いくつかのバーチャルイベントにも出席した。

だが対面取材ができない弊害はあり、例えばカンファレンスでも講演者に直接質問する機会が限られていたほか、特に展示会においては担当者と密に語り合ったり、会場を歩いての新たな発見などもなく、バーチャルイベントそのものに限界を感じていた。

そうしたなか、筆者が毎年取材していたイベントの1つ「Money20/20 USA」がリアル開催を前提にしたスケジュールを喧伝し始め、リハビリも兼ねてこの取材ができないかと考えるようになった。同イベントの会場は米ネバダ州ラスベガスだが、フライトで足を少し伸ばせば以前まで取材したいと思っていた「Amazon One」や「Amazon Fresh(旧Amazon Go Grocery)」を実際に体験しに米ワシントン州シアトルまで足を伸ばせる。また個人的事情だが、日本にはない体型に合う服を現地で買い足しつつ、米カリフォルニア州サンフランシスコのベイエリアに住む友人や知り合いにも挨拶できる……ということで、諸処の手配を済ませて12日間の米西海岸の旅に出た。今回は2021年10月下旬時点での、渡航までの準備から入国の様子、そして実際の現地の様子までをレポートしたい。今回の出国編のほか帰国編、隔離編と3回のレポートを予定している。

事前準備は陰性証明とワクチン接種証明書の入手、オンライン登録

渡航前の事前準備として、新型コロナウイルスの「陰性証明書」と「ワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)」の2つの書類を入手する必要がある。

前者は「米国行きフライト」に乗るために必要なもので、フライト搭乗72時間以内に行なわれたPCR検査等の陰性証明書でなければならない。後者は「イベント取材」に必要なもので、これが提出できないと当日入場バッジを入手するために会場で定期的な検査が必須となる。これらを書面で入手し、あらかじめオンライン申請して承認を得ておくことが事前準備となる。

まずは前者の入手について。米国渡航向けに英語の文面で必要な情報が書かれた陰性証明書であれば問題ないが、今回は渡航に利用する日本航空(JAL)がホームページで紹介していた北品川の医道五十三次クリニックのPCR検査サービスを利用した。

午前中の検査であれば、その日の18時までには結果とそれを記した紙の証明書が15,000円で発行されるというもので、同業他社や空港での検査に比べて安価で証明書入手のタイミングも早い。筆者は10月23日土曜日のフライトだったので、その2日前にあたる21日に検査日を設定して陰性証明書を入手した。

出国前にPCR検査に医院を訪れたところ。外国人利用が非常に多く、「今日の○時までに証明書を入手できないか」と切羽詰まった状態で問い合わせている人もいた

入手した陰性証明書これを後述のVeriFLYアプリを使って事前にアップロードする

PCR検査をフライト前日や当日行なわなかったのはリスク回避の意味合いもあるが、もう1つの理由としては以前の連載でも紹介した「VeriFLY」というアプリの存在にある。

日本航空を含むワンワールド系航空会社では海外(あるいはハワイ諸島などの離島)渡航に必要となる情報を事前登録しておき、対面での審査手順を簡略化するためにVeriFLYを積極活用している。日本航空でも10月以降は米国行きの全路線でのVeriFLY運用を開始しており、さらに11月8日以降に米国に入国する(市民権を持たない)すべての外国人についてワクチン接種完了後14日間の期間を経ていることを条件としている。VeriFLYでも11月8日以降はワクチン接種証明書のアップロードに対応しているが、今回の渡航ではまだワクチン接種が必須ではなかったため、その手順を紹介する。

先ほど検査で入手した陰性証明書の紙面をスマートフォンで撮影しておき、VeriFLYアプリにフライト情報を入力しつつアップロードしておく。すると先方でのチェック後に了承のマークが出るので、続いて「Attest(証明)」「空港到着前のチェック」の2つの項目をパスすることで「Ready to Fly」の表示になる。空港カウンターでのチェックも行なわれるが、これは実際に搭乗と到着時に必要な書類のチェックが事前に終わっていることを意味するので、以後は引っかかることなくスムーズに移動できるようになる。

続いて海外渡航用のワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)だ。ワクチン接種記録書自体はあるものの、英文表記ではないため、そのままでは相手に必要な情報が伝わらない可能性が高いため必要となる。

入手方法は在住の自治体に返送用封筒に宛先を書いて切手を貼った状態で必要書類と一緒に送付すればいい(自治体によって異なる)。先方からは「(返送まで)1週間から10日程度」といわれていたが、筆者の場合は1週間かからず戻ってきた。

今回のイベント取材では、Money20/20 USAに参加登録をした時点で「『CrowdPass』というシステムにイベント開始48時間前までにワクチン接種証明書をアップロードして審査を済ませておくこと」という指示メールがやってくる。イベントが開催されるラスベガスではこうした大規模イベントの屋内開催において特に厳しいレギュレーションは存在しないが、イベント主催者として安全性をアピールするためにこのような施策を行なっているとみられる。本来であれば、自治体から入手した英文表記のワクチン接種証明書だけで問題ないはずだが、現時点ではQRコード等もなく手作りの贋作と思われる可能性もあるため、2枚目の写真がアップロードできることを利用して接種記録書の画像も一緒に登録しておいた。結果として特に問題なく審査をパスしている。

入手した海外渡航用のワクチン接種証明書

こちらはワクチン接種記録書。念のために渡航時には合わせて持参した

余談だが、少ない準備期間の合間を縫って海外旅行保険も申し込んでおいた。筆者は海外渡航時はカード付帯のものとは別に必ず掛け捨ての保険を掛けていくのだが、今回は特に重要だと考えている。もし、仮に現地で新型コロナウイルスの症状が出て集中治療室で数週間ないし1カ月などの入院ともなると、医療費は膨大となる。カード付帯の場合上位カードでは医療費上限1億円などのケースもあるが、数百万円程度のものが多い。個別に無制限の保険を掛けていけば多少は安心につながるので、もし近いタイミングで渡航される方がいる場合には検討しておくといいかもしれない。

海外旅行保険を別途申請すると医療費限度額無制限などのオプションが選択できる

今回、コロナ禍の事情に合わせたのか普段は貼付されない専用の英文レターが追加されていた

米国到着と現地のワクチン接種を前提とした行動規制

フライト時間中は常時マスク着用が必須な点を除けば、以前までの海外渡航と何も変わらない。VeriFLYで必要書類のチェックも終わっているため、到着直前までずっと寝ていても問題ない。そして到着後、日本への入国の場合は検疫官がやってくるまで比較的長時間待機している必要があるが、米国到着の場合はそうしたこともなく、ボーディングブリッジが機体に接続されてドアが開いた時点ですぐに搭乗クラス別に降機が開始される。もっとも上位クラスの乗客はほとんどいないため、すぐに順番がやってきて入国審査場へと歩いていくことになる。

出発の際に航空会社カウンターで「VeriFLYアプリを含めて改めてランダムで書類チェックされる可能性があるので、準備しておくように」と注意されていたが、実際にはそうした懸念とも無縁で、入国審査官にパスポートとビザを見せつつ、税関申告書を渡し、「どこの会社で働いている?」「渡米目的は?」「行き先はサンフランシスコだけ?」といった3つの定例質問を10秒ほど浴びせられただけで、すぐに解放された。税関では人影も見られずそのままスルー。結果として降機から10分とかからず制限エリアの外に出ることができた。

入国後の行動制限も特にないため、そのまま電車に乗ってサンフランシスコ市内へ移動。入国後のトラブルに備えてイベントのあるラスベガスへの移動は翌日に設定していたが、特に問題なく現地移動ができて実質的な半日ほどのフリータイムができたほどだ。

1年半ぶりのサンフランシスコの市内の様子をカメラに収めつつ、渡米時に実験してみたかった「日本のワクチン接種証明書が米国で使えるか」を試してみた。日本のワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)は米国では公的書類としては認められていないため、例えばレストラン等での店内飲食にワクチン接種証明を提示する必要のあるサンフランシスコやニューヨークにおいて「日本からやってきたばかりの日本人は店内飲食ができないのでは?」という疑問があった。なので実際に利用できるか試してみたところ、地元のタイ料理レストランで(顔写真のある)パスポートとワクチン接種証明書を見せたところ、何の問題もないということで食事ができた。

今回の渡米ではサンフランシスコ市内で計5回飲食しているが、そのうち1回はチェックを失念したのか確認されなかったが、残り4回はすべてきちんと所持をチェック(店舗への罰則規定がある)。一緒に食事をした友人は、自身の紙の接種証明書をスマートフォンで撮影してその画像を見せるだけで入店していた。

カリフォルニア州ではワクチン接種記録を基にしたQRコード表示アプリを提供しており、こうしたものを使って厳密にチェックされているのかと思っていたが、実際にはより柔軟な運用だった。筆者のケースでも、現物を持ち歩かずともパスポートと接種証明の写真を見せるだけでも問題ないということで、これくらい柔軟でないと利用が進まず、現場も混乱するという考えなのだろう。

現地の友人によれば、観光客しか来ない店舗が密集する「Pier 39」のような観光名所では、いちいち観光客相手にチェックするのがあまりに煩雑で、市の政策に反発して店を当面閉めることを決断したところもあるという。日本でも今年12月のリリースに向けてスマートフォンアプリを介したワクチンパスポートの提供を目指しているが、運用方法を間違えると逆に店舗へのダメージになりかねず、ある程度柔軟性を持って臨むべきかもしれない。

ラスベガスはマスクなしの光景も。イベント会場は厳密

サンフランシスコでの一夜が明け、悪天候でフライト遅延が続くなかで2時間弱の遅れでラスベガスへと到着した。米国内線もマスク着用必須以外のルール上の違いもなく、あえて違いを挙げれば制限エリアに入る際のIDチェックで職員に顔を見せる場面で、審査官が専用ブースに入って会話での“つば”の飛散を防いでいることくらいだ。

このようにラスベガス到着までは特に変化はない……と言いたいところだが、1点大きな問題は空港とホテルを往復するシャトルバスの運行が制限されている点だ。例えばサンフランシスコでは一律でシャトルバスの運行が止まっており、今回の日曜朝の移動ではタクシーを使わざるを得なかった。ラスベガスも同様で、シャトルは事前予約制となっており、飛び込みでの利用はできない。結果、タクシーまたはUber/Lyftを使うことになるため、現地を訪問予定の方はアプリを入れておかないと行動が制限される可能性がある。

そして2年ぶりとなるラスベガスだが、一時期の苦境は抜けて、ホテルは賑わいを取り戻しつつあるように見える。店舗営業時間短縮やイベント中止ということもあり、夜間飲食に制限がある問題はあるものの、マスク未着用の観光客も含め、全米から人が集まっていることはうかがえる。もちろん施設によってはマスク着用を義務化しており、今回のイベント会場では制限エリアに入るためのバッジ入手の前に、ワクチン接種証明書または陰性証明書の提出が必須となっている。冒頭でも触れたCrowdPassのシステムを利用していれば、チェックをパスした参加者にはQRコードが事前配布されているので、それを提示するだけでいい。ラスベガスにおいてコロナ禍での行動制限は特に規定されていないが、やはりイベント運営者としては安全第一なのだろう。(続く)

カンファレンス取材のためにラスベガスへとやってきた。ホテルのチェックイン行列だが、ここだけを見るとすでに往時の賑わいを見せている

ホテルからカンファレンス会場へ行く際に通過するGrand Canal Shoppers入り口に掲載されたマスク必須の注意書き。カジノや宿泊ホテルではマスク未着用の人々を多く見かけたが、このようにマスク必須を掲げる施設もある

カンファレンスのバッジピックアップ会場。明らかに参加人数に比べて過大な空間だが、それだけソーシャルディスタンスを重視している結果ともいえる

バッジピックアップの前にCrowdPassのワクチン接種証明チェックを通過したQRコードを提示する必要がある

第1回:海外渡航のいま(出国編)。事前準備は入念に。ワクチン前提の行動規制
第2回:海外渡航のいま(帰国編)。時間も費用負担もきつくて公共交通NG
第3回:海外渡航のいま(隔離編) ~来週掲載予定


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