日本はこの13年で、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍と、「100年に1度や1000年に1度」の事態に計3度も見舞われた。経営コンサルタントの小宮一慶氏は「コロナ禍で日本経済の柱のひとつである飲食・運輸・旅行業界が苦境にあえいでいます。ワクチン接種が遅れているため、これは他業種にとっても対岸の火事ではありません」と警鐘を鳴らす――。


「100年に一度や1000年に一度」に三度も見舞われた日本経済は大丈夫か


日本経済全体の動きを端的に表す「名目国内総生産」の数字を見ると、2019年7~9月は年換算で564兆2000億円、それが新型コロナウイルスで1回目の緊急事態宣言が出た2020年4~6月には510兆7000億円まで下がりました。


名目国内総生産は、企業などが作り出す「付加価値」の合計で、作り出した付加価値の中から一番支払われているのは、会社員などに支給される給与です。つまり、名目国内総生産は給与の源泉で、それがコロナで一気に50兆円以上、約1割落ちたことになります。それも、飲食や運輸・旅行、イベント関連など、偏った業種での落ち込みとなりました。


その後、2020年10~12月では、551兆1000億円まで戻しています。これは、コロナの影響が少し出始めた2020年の1~3月の数字とほぼ同じです。ピークまでにはまだ戻していませんが、ほとんど戻したのです。


経済の回復が顕著な中国関連の製造業などでは業績が上向く傾向が顕著な一方、先ほど述べたような一部の業種では、戻りは非常に悪く、苦境が続いています。


今回は、とても大きなダメージを受けている旅行業に焦点をあて、その状況を見るとともに大手旅行各社の現状を見ていきます。その中で、エイチ・アイ・エス(以下HIS)やKNT-CTホールディングス(近畿日本ツーリスト+クラブツーリズム、以下KNT-CT))両社の財務内容も簡単に分析します。


コロナの蔓延は「100年に一度のパンデミック」と言われていますが、ここ13年の間に「100年に一度の経済危機」と言われた2008年以降のリーマンショック、「1000年に一度」の災害の東日本大震災(2011年)などを私たち日本人は経験しました。


旅行業は今、いまだかつてない試練に立たされていますが、これは決して対岸の火事ではなく、この先、いかなる業界でも経験しうることだという認識も必要です。


「まん延防止等重点措置」でGoToトラベルを望むべくもない


図表1は、観光庁が発表している「旅行取扱状況」の前年比の数字です。



2020年の2月ごろからマイナス幅が大きくなり、1回目の緊急事態宣言が出た4月、5月ごろには95%を超えるマイナスとなっています。つまり前年比で5%以下の売り上げしかなかったということです。


そして、その後も苦境が続きました。東京のGoToトラベルが解禁された10月でもマイナス65.7%です。最も良かった11月でも前年比で半分以下の売り上げで、その後2回目の緊急事態宣言が出て、再び前年比で8割以上のマイナスです。直近の2021年2月の数字を見ても、マイナス85.9%です。この数字を見るときに注意しなければならないのは、2020年の2月も2割近いマイナスで、それよりもさらに8割以上落ちているということです。


そこにまた、4月に入り「まん延防止等重点措置」が宮城、東京、大阪、京都、兵庫、沖縄の6都府県に発令されました。GoToトラベルなど望むべくもない状態です。



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