ウェルネスツーリズム(Wellness Tourism)は、心身のリフレッシュや健康の増幅を図ることを目的としている旅行形態です。

市場規模も拡大傾向にあり、日本は温泉資源や豊富な文化を利用して推進することでウェルネスツーリズムのニーズ拡大が見込めるとされています。

コロナ禍でインバウンド需要が急激に落ち込んでいる観光業界にとって、ウェルネスツーリズムはアフターコロナにおいて日本旅行の新しいニーズを喚起する可能性があります。

本記事ではウェルネスツーリズムの基本的な概念と国内外の事例、そしてコロナ後を見据えてウェルネスツーリズムの持つ可能性について紹介します。

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ウェルネスツーリズムとは?定義、市場規模、日本での可能性

世界的に見てウェルネスツーリズムの市場規模は拡大傾向にあり、日本は温泉資源を多く有していることから、日本におけるウェルネスツーリズムの拡大が見込めると考えられています。

またウェルネス資源である温泉は訪日外国人観光客からも人気の日本文化であり、集客力もあることからインバウンド効果も見込めます。

ウェルネスツーリズムの定義|心身健康のための観光

ウェルネスツーリズム(Wellness Tourism)とは、旅行を通して心身の健康、また社会と環境の健康を促進し、より質が高く豊かな人生を目指す旅行形態です。

ヘルスツーリズムの下位分類として扱われることもあります。

琉球大学大学院観光科学研究科ウェルネス研究分野教授・荒川雅志の著書『ウェルネスツーリズム〈サードプレイスへの旅〉』によれば、ウェルスツーリズムをテーマにしている旅行のプログラムは様々であり、食、運動、温泉、スパ、スポーツ、保養などがあります。

美容やアンチェイジング、フィットネスなど美にまつわる体験もウェルスツーリズムコンテンツの一種とされています。

またウェルネスツーリズムの起源の一つはスパとされており、現在ウェルネスツーリズムの多くもスパツーリズムのため、海外では両者を同義語として使うことが多くあります。

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拡大するウェルネスツーリズムの市場規模

ウェルネスツーリズムの市場規模は拡大が進んでいます。

Global Wellness Instituteによると、ウェルネスツーリズムの市場規模は、2015年時点では全世界で5,630億ドル(約60兆円)であったのが2017年には6,394億ドル(約70兆円)まで増加したことが明らかになっています。

年間成長率は6.5%となり、観光業全体成長率(3.2%)の2倍以上のスピードで増加しています。

また同機関は、ウェルネスツーリズムの市場規模はさらに急速に増加し、7.5%の年間成長率で2022年までに9,190億ドル(約101兆円)に達すると予測されています。

今後も拡大し続けるウェルネスツーリズムの需要に応えることは、インバウンド需要の拡大を促進させる一手になる可能性があります。

温泉大国の日本はウェルネスツーリズムに最適?インバウンド需要の拡大にも期待

環太平洋造山帯に位置する日本は火山大国であるといえます。環境省の「令和元年度温泉利用状況」によると、2019年時点で日本には3,000近くの温泉地と、13,000を超える温泉宿泊施設が存在します。

この豊富な温泉観光資源は、訪日外国人から人気を集めています。

観光庁の「訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書」によると、回答者の約3割が「温泉入浴」を「今回したこと」に、約半数が「次回したいこと」として挙げています。

また、実際に温泉を体験した訪日外国人観光客のうち、満足したと回答した人は94.4%と、極めて高い満足感を与えていることがうかがえます。

▲[「今回したことと次回したいこと」・「今回したことの満足度」]:観光庁「訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書」

ウェルネスツーリズムの中心がスパツーリズムであることから考えると、温泉を活用したウェルネスツーリズムの促進によってインバウンドの獲得が見込める可能性があるといえるでしょう。

国内外のウェルスツーリズム事例を紹介

ウェルネスツーリズムに対する需要の高まりにつれて、国内外ではウェルネスツーリズムに対応した施設やプログラムが増えています。

本項では海外と日本のウェルネスツーリズムの事例を紹介します。

【海外の事例1】インド|世界初の国際ホリスティックヘルスセンター

ヨガの発祥国といわれるインドには、世界初の国際ホリスティックヘルスセンターである「SOUKYA(ソウキャ)」があります。

ホリスティックヘルスとは、精神・身体・環境の調和を重んじる健康の考え方を指します。

SOUKYAではヨガやインドの伝統医学であるアーユルヴェーダを体験できます。

アーユルヴェーダは現代医学を補完する医療技術として注目されており、SOUKYAでは古くから伝わってきた伝統医学と現代の最新医学を組み合わせた多様なプログラムを提供しています。

▲[SOUKYA 公式サイト]:編集部スクリーンショット
▲[SOUKYA 公式サイト]:編集部スクリーンショット

【海外の事例2】スペイン|長期滞在も可能なウェルネスツーリズム専門ホテル

スペインにある「SHA Wellness Clinic(シャー ウェルネス クリニック)」は、ウェルネスに特化した滞在型ホテルとして有名です。

宿泊客に対しては栄養面で考慮されたマクロビオティック料理を提供し、自然療法や再生医療、美容医学、フィットネス、料理教室、ヨガやマインドフルネスといったリラクゼーションエクササイズなど様々なプログラムを展開しています。

SHA Wellness Clinicはこれまでに、The Platinum List 2019、Tatler Spa Awards 2018など数々の賞を受賞しています。

また海外展開も視野に入れており、2022年にメキシコ、2023年に アラブ首長国連邦でもオープンする予定です。

▲[SHA Wellness Clinic 公式サイト]:編集部スクリーンショット
▲[SHA Wellness Clinic 公式サイト]:編集部スクリーンショット

【日本の事例1】金沢|心身の健康を目指すプログラム

石川県金沢市では「KANAZAWA WELLNESS TOURISM」の推進に取り組んでいます。

サイクリングやトレイルといったアウトドアプログラムのほかに、日本文化の真髄を一流の講師から伝統工芸や芸道、食文化学ぶことができるプログラム、瞑想、写経、フィットネスなど様々な旅行プランが提供されており、心身ともに豊かな体験が提案されています。

公式サイトは英語にも対応しており、訪日外国人の需要を取り込もうとしている動きが見られます。

▲[金沢旅物語ーKANAZAWA WELLNESS TOURISM 公式サイト]:編集部スクリーンショット
▲[金沢旅物語ーKANAZAWA WELLNESS TOURISM 公式サイト]:編集部スクリーンショット

【日本の事例2】鹿児島|温泉天國のウェルネスツーリズム

九州南部の鹿児島県は、桜島をはじめ、多くの活火山があることから温泉の数も多く、2,753か所と全国第2位の源泉数を誇っており、世界自然遺産や自然の恵み、歴史・文化など豊富な資源を有しています。

鹿児島ではこれらの資源を「鹿児島のウェルネス」として捉え、「ウェルネスかごしま Wellness of Japan」というブランドでウェルネスツーリズムを展開しています。

また「わたしのウェルネス」と名付けて一般市民からのウェルネス体験をInstagram、YouTube、Facebookで公開しており、鹿児島のウェルネスツーリズムの魅力を国内外に発信し、観光客の誘致を狙います。

▲[ウェルネスかごしま Wellness of Japan 公式サイト]:編集部スクリーンショット
▲[ウェルネスかごしま Wellness of Japan 公式サイト]:編集部スクリーンショット

ウェルネスツーリズムはコロナ禍で注目、インバウンド対策のポイントは?

新型コロナウイルス感染症は人々の健康意識を向上させることになり、それに伴ってウェルネスツーリズムの注目度が高まっています。

「免疫力」や「心身の健康」など、健康意識の高まりが考えられるアフターコロナにおいては、ウェルネスツーリズムはさらに盛り上がりを見せインバウンド需要獲得のカギになる可能性があります。

コロナ禍で健康志向が高まり、「旅行」と「免疫」がキーワード

新型コロナウイルス感染症の拡大で観光業界に大きな打撃を与えている一方、人々の生活様式の変化と健康意識の台頭により、健康の維持・促進を目的とした「ウェルネスツーリズム」が注目されています。

ウェルネス業界に特化した国際会合であるGlobal Wellness Summitが発表した「Global Wellness Trends Report: The Future of Wellness 2021」では、今後注目される9つのウェルネストレンドの一つは「旅行」です。

同レポートでは、これまで特定の観光地に観光客が集中する「オーバーツーリズム」が取ってかわり、余裕を持ってマインドフルな体験をする「ウェルネス旅行」は求められるとされています。

また旅行以外に、同レポートは、消費者は「免疫」に対する意識も高まっています。

このようなトレンドを踏まえて、ウェルネスツーリズムは心身の健康やリフレッシュなどに焦点を当てた旅行形態であり、コロナ禍をきっかけに健康志向が高まっている現代消費者に順応できるツーリズムと考えられます。

インバウンドでウェルネスツーリズムを推進する際のポイント

上記でも述べたように、訪日外国人を対象にウェルネスツーリズムを推進する際に、「温泉」は有効的なコンテンツとされています。

ただし日本と海外の入浴文化が異なり、たとえば裸に抵抗感がある外国人は少なくありません。

またタトゥーに対して国内外の考え方も異なり、現在タトゥーがある人の入場禁止をしている施設はまだ多くあります。

これらの文化の違いを解決できるかどうかもポイントになっていくと考えられます。

温泉以外にも、たとえば健康でヘルシーな日本食はウェルネスツーリズムにおいても活用可能な分野ですが、ベジタリアンやビーガン、ムスリムに対する配慮も必要になってきます。

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コロナ収束後、注目のウェルネスツーリズム

ウェルネスツーリズムは、健康増進や心身のリフレッシュを図る旅として、コロナ禍をきに今後さらに人気が高まっていくと考えられています。

日本は温泉や日本食などウェルネスツーリズムに適する観光資源を多く有していますが、訪日外国人観光客のニーズに合わせて、コンテンツの磨き上げが必要でしょう。

こうした最新の観光動向を掴むことで、アフターコロナを見据えた訪日外国人観光客へのプロモーション戦略の見直しも求められるでしょう。

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<参照>

・Global Wellness Institute:Global Wellness Economy Monitor October 2018

・環境省:令和元年度温泉利用状況

・観光庁:訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書

・Global Wellness Summit:Global Wellness Trends Report: The Future of Wellness 2021


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