対談は東京の日本旅行本社と北海道をウェブ会議システムで結び実施

日本旅行と日旅連 強固な連携で未曾有の危機乗り切る

 日本旅行協定旅館ホテル連盟(日旅連)は令和3年度通常総会を3月4日に東京で開催予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言発出の期間延長により、書面での総会に変更した。総会開催に合わせて行った日本旅行、日旅連両トップの恒例の対談は、今年は桑島繁行・日旅連会長(北海道・北こぶし知床ホテル&リゾート会長)が地元の北海道からリモートで参加する”新たな様式”で実施。コロナ禍を乗り切るための両者の連携策を語ってもらった。

対談は東京の日本旅行本社と北海道をウェブ会議システムで結び実施

 

 ――(司会=本社・森田淳)新型コロナウイルスの感染拡大で、旅行業界は現在も厳しい状況を強いられている。まず堀坂社長から、昨年から現在までの振り返りを。

日本旅行 代表取締役社長 堀坂明弘氏

 

 堀坂 当社は今年で創業116年。過去の歴史を見ると、第2次世界大戦のときにいったん営業停止を余儀なくされたことがあったが、今はそれに匹敵する、まさに戦時下と言っても過言ではない。

 私自身もJR西日本時代から、阪神淡路大震災、SARS、リーマンショック、東日本大震災と、多くの危機を経験し、その都度対応してきた。これらの時代も大変だったが、今回はそれを上回るさらに厳しい状況だ。

 国内、海外、インバウンドと、全ての需要が消滅した。このようなことはかつてなかった。

 旅行を販売するサプライチェーンの中には、宿泊をはじめさまざまな業界の方々が関わっている。今回のコロナ禍で、その全ての方々が苦しんでおられる。私も胸を痛めている。

 当社も昨年、非常に厳しい経営環境の中で、役員報酬の減額に始まり、社員の賞与支給見合わせ、一時帰休など、さまざまな痛みを伴う取り組みを行い、事業の存続を模索した。

 一方で前向きな取り組みとして、新たな日常への対応を含めた社内の構造改革など、近年取り組み始めたことをさらに加速させた1年でもあった。

 例えばオンラインの活用。今回の対談のように、今は遠隔地にいる人とも容易にコミュニケーションが取れる。これまでは育休などライフステージに合わせての在宅勤務者に主に活用されていたが、それ以外の一般の社員の働き方を変えた。一部の店頭ではオンライン接客を昨年導入、また法人営業では地域でのプレゼンに本社からもオンラインで参加するなど活用が広がっている。これらの働き方改革は数年間かけて検討を進めるところだったが、待ったなしにやらざるを得なくなった。

 DXの推進は、本年度の事業計画でも明記している。その必要性が改めて明らかになり、同時に加速度的に進めていかなければならない。

 

日本旅行協定旅館ホテル連盟会長 桑島繁行氏

 

 桑島 昨年は年初から新型コロナへの対応に追われた1年だった。緊急事態宣言発出に伴い人の動きが全く止まってしまった。インバウンド需要も壊滅状態。東京オリンピック(五輪)、パラリンピックは海外の人たちに日本の良さを再認識していただく絶好の機会と捉えていたが、1年延期となってしまった。当たり前のことが当たり前でなくなってしまい、今まで経験したことがない史上最悪の年だと私は判断している。

 日旅連は昨年2月20日に本部総会を開催したが、12ある連合会のうち半数の6連合会の総会が書面決議となってしまった。

 総会は年1回、皆で会し、懇親を深め、次に向かって進もうという意思の確認をする場でもあったのだが、大変残念な思いをした。会員施設の売り上げが減少したことで、日旅連の会費収入もおのずと減少している。本部、連合会とも財政が厳しく、今後の事業運営に影響が出ないか心配だ。

 昨年7月からGo Toトラベル事業がスタートし、特に東京発着が解禁された10月から各地へのお客さまが急増した。しかしながら、年始には再度、緊急事態宣言が発出され、Go Toも停止され、お客さまの足が再び止まっている。

 私どものホテルもそうだが、会員の旅館・ホテルも、お客さまが少なく休館を余儀なくされているところが数多くある。これから先の見通しも不透明だ。会社はもとより従業員の雇用を守らなければならない。Go Toの一日も早い再開を願っている。

 

 堀坂 Go To事業が感染を拡大させた要因との意見がある。しかし、確かなエビデンスがあるわけではなく、逆に、Go To利用者が8781万人泊で、そのうち感染が確認されたのは12月17日時点で309人だ。

 感染拡大防止はもちろん大事だが、経済も同時に回していかねばならない。旅館・ホテルをはじめ、各観光施設は感染対策をきちんと行っている。客室を定員の半分で稼働させたり、温泉の入浴人数を制限したり、食事の提供方法を変えたりと、皆さん本当に努力されている。

 

 ――日旅連事業は。

 桑島 本年の総会開催は、緊急事態宣言の延長で、東京での参集はかなわなかった。このようなときだからこそ、新たな時代の観光の在り方について、会社とともに継続して議論を進めなければと思っている。コロナ禍で憂いてばかりではいけない。

 先ほど話が出たワーケーションは、私のホテルがある知床の斜里町でも盛んになってきた。豊かな自然の中で気分良く仕事をしてもらえるし、われわれ事業者にとっても来られた人に長期滞在してもらえることが大きな魅力だ。宿泊だけでなく、運輸、飲食、自然ガイドなど、多くの業種へ好影響が波及する。会社とともに長い目で考えていければと思う。

 この1年、決して楽観視はできないが、ワクチンの普及もあって、国民がある程度旅行ができる環境は整ってくると見る。Go Toの延長と、それに伴う予算も既に決まっている。

 不要不急の外出を控えるよう言われているが、観光は不要不急のものなのか、今一度考えてみる必要がある。地方の活性化はわが国にとって大きなテーマ。流動人口の創出、つまり観光施策の推進により、それを実現するものだ。手前みそだが、少なくとも不要のものではない。

 インバウンドの段階的な復活も必要だ。日旅連は会社が進めるインバウンド事業、台湾での「日本の観光・物産博」に毎年協力している。昨年はコロナの影響でリモート参加だったが、どのような形でも変わらず協力して、インバウンドの回復に努めたい。

 宿泊業界には生産性の向上、毎年のように発生する災害への対応など、さまざまな課題がある。コロナ以外にも課題が山積している。会員を含め、広く宿泊業界の皆さまとともに議論したい。

 

 堀坂 昨年の「日本の観光・物産博」は、通常の6月から、感染が収束していると考えた11月に延期して再設定した。結果として収束のめどは立たず、一時は開催を断念しかけたのだが、イベントなどをリモートで行う方法に切り替えて何とか開催できた。

 いつもは現地に赴いて日本の魅力をプレゼンテーションするのだが、今回は日本にいながらにして、日本の魅力をリモートで現地の皆さまにお伝えした。そのプレゼンテーションに際して、日旅連や自治体の皆さまが積極的に工夫して取り組んで下さった。

 北海道からは桑島会長の地元からも参加いただいたり、各地の女将さんに出ていただいたり。瀬戸市からは市長に出ていただいて、刀剣のパフォーマンスを甲冑(かっちゅう)姿で行ってもらった。私は東京タワーをバックに中国語であいさつした。相当プレッシャーがかかったが、言葉を現地の人に褒められて、すごくモチベーションが上がった(笑い)。

 台湾の会場でのお客さまの入りを心配したが、いつもと変わらず来ていただき、感謝するとともに手応えを感じた。来年以降はリアルとリモートのハイブリッド型も良いのではと、新たな発見をしたところだ。

 

 ――会社から日旅連、日旅連から会社への要望、メッセージを。

 堀坂 日旅連には営業推進委員会(営推)という若手経営者の委員会があり、われわれの社員とともにさまざまなテーマで議論している。今の日旅連の役員の皆さまにも、この営推を経験された方が多く、桑島会長にも若いころから大変お世話になっている。

 旅館も世代交代が進み、次の世代が社長として立派に宿を経営されている。そして、営推にも多くの方が参加をされている。今はなかなかリアルでお会いできないが、オンラインなどさまざまなツールを駆使し、お互いの発展に向けて議論を深めていきたい。

 私はまだ、社長5年目だが、日本旅行と日旅連には長い歴史がある。両者の良い関係を今後も続けていかなければならない。

 

 桑島 われわれの最大の目的は、日本旅行からのお客さまを拡大させること。直近の集客から将来を見据えた取り組みなど、短期、中期、長期的にどう連携するかを模索し、それぞれの視点で知恵を絞ることが大切と考える。

 短期的にはこのコロナ禍の中で、旅行層の拡大にどう対応するか。昨年、開催できなかった社員の方々とのワークショップ、商談会は、実施可能な方向性を探り、今年は規模を縮小してでも、ぜひ再開したい。そこで宿泊拡大に向けた施策を一つでも多く見いだしたい。

 昨年発行された日本旅行の社内報「東西南北」の創刊500号に、「社員が思う日本旅行とは」というアンケートが掲載されていた。そこには創業115周年の「歴史と伝統」とともに、「社員の人柄が良い」「アットホームな温かい社風」「親切で誠実」などの回答が記されていた。
社員の皆さんが日々、どのような思いで働いているのか、興味深く拝見するとともに、そのような社風が今のわれわれとの良好な関係を築いているのだと、改めて実感した。

 これからも社員の皆さまとともに、一体感をもって、お互いの発展に向けて歩んでいきたい。

 

 堀坂 お褒めの言葉を頂き、大変ありがたい。社員にしっかり伝え、みんながさらにやりがいと希望をもって働けるよう努める。

 コロナ禍で来年の新卒採用は見送ることになったが、昨年は150人が入社した。コロナ禍なので研修をリモートで行ったのだが、みんな前向きで、終わった後もメールで質疑応答を何度も繰り返した。ウズベキスタンからの留学生も入社しており、旅連の皆さまに会わせたいほど真面目で優秀だ。いい人材をしっかり育てなければと思う。

 商談会はぜひ、再開していただきたい。リアルとリモートのハイブリッド型など、さまざまな方法が考えられると思う。旅連の皆さまの声を直接聞いて、送客拡大につなげたい。

 

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