2020年が終了するまであと1か月となったいま、オーストラリアでは州境閉鎖やロックダウンにより、新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着きつつああります。

10月16日には、ニュージーランドとの間で隔離なしの往来が可能なトラベルバブルを開始しました。今後は日本や韓国、シンガポール、太平洋諸国とのトラベルバブルも検討されており、今後の動向に注目が集まります。

本記事では、オーストラリアにおける2020年の主要な出来事と国内旅行需要の現状をふまえ、2021年の動向を予測します。

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オーストラリアの2020年

2020年にオーストラリアで起きた出来事のなかから、山火事と新型コロナウイルスの感染流行について触れ、現在のオーストラリアの街の様子を紹介します。

日豪「隔離なし渡航」協議中 押さえるべきオーストラリア市場の特徴と最新トレンド

2020年10月15日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は日本、韓国、シンガポールの3か国の首脳と「隔離を伴わない渡航」についての議論を進めていることを明らかにしました。もし協議が合意すれば、インバウンド回復が遅いと予想される欧米豪市場のうち、訪日オーストラリア人観光客の回復が一足先に回復するでしょう。そこで、今回の記事はこれまでの訪日オーストラリア人観光客の特徴をおさらいし、それに合わせてコロナ禍におけるオーストラリア人の最新国内旅行動向や訪日意欲についても紹介します。インバウンド…

5か月間に及ぶ山火事の発生

2019年9月に過去最大規模の山火事が発生し、2020年2月までの5か月間続きました。

シドニーやゴールド・コースト、ケアンズといった観光地としても人気の主要都市は影響を受けませんでした。しかし、首都のキャンベラが位置するオーストラリア首都特別地域(ACT)政府は火災の急拡大を懸念し、2020年1月31日に72時間の非常事態宣言を発出しました。

オーストラリアにおいて、2019年7月から2020年2月までに火災の被害を受けた土地は、南部と東部を合わせて計37,500平方マイル(約97,000平方キロメートル)に上っています。

これはポルトガルの国土を上回る面積であり、アメリカのカリフォルニア州で発生した過去最大の山火事の被害と比べても50倍の規模となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大

いまや全世界で感染が拡大している新型コロナウイルスですが、オーストラリアでは1月25日に、中国の武漢から帰国した男性が国内初の感染者として確認されました。

その後国境や都市の封鎖などを迅速に実施した結果、2020年4月頃には国内における感染拡大の抑制に成功したと思われましたが、7月初旬から新規感染者数が急増し、7月下旬から8月初旬にかけて、感染のピークとなりました。

メルボルンで7月7日から再びロックダウンを開始するなど、厳しい措置を講じたことも功を奏し、12月現在の感染者数は減少傾向にあります。

ロイターのデータによると、1週間平均で1日10人〜11人の新規感染者が報告されており、2桁台に抑えられている状況です。1日平均人数のピークだった8月5日の2%にまで減少しています。

ニュージーランドとの往来再開

オーストラリアでは、感染状況が落ち着きを見せつつあることから、ニュージーランドの居住者が隔離なしでオーストラリアへ渡航可能なトラベルバブルが、10月16日より開始されました。

ニュージーランドからオーストラリアへは隔離なしで渡航が可能な一方で、ニュージーランドへの渡航者は入国後2週間の隔離が必要となっています。隔離費用がかかることなどもあり、ニュージーランド航空によると、10月16日の渡航者は約9割が片道航空券による予約だったとしています。

オーストラリアのニューサウスウェールズ州のべレジクリアン首相は、海外旅行の回復に向けて、隔離なしで渡航を可能にすることは重要な一歩になるとし、ニュージーランドも隔離措置の制限を解除することを願うと述べました。

街の様子は

オーストラリアでは、感染状況が悪化している地域では州境を閉じるなどの措置が講じられていましたが、全国的には感染状況が落ち着きを見せつつあるため、州境が開放になる地域が多く、現在は人の移動が活発となっています。

「スク―リーズ」と呼ばれる高校卒業の名物旅行の行き先として有名なサーファーズパラダイスでは、街をあげての公式イベントは開催していませんが、自発的に訪れる若者や旅行者で賑わっている状況です。

学校は1月中旬頃まで長期休暇に入るため、年末年始にかけてさらに旅行などが活発になると予想できます。

人の移動が活発となる一方で、感染対策は現在も継続して実施されています。

クリスマスシーズンの名物イベントであるサンタフォトも、今年は感染対策を考慮した開催となっています。例年は子どもがサンタの膝の上に乗ったり、椅子に一緒に座り写真を撮ったりする光景がありましたが、今年はサンタとの間にプレゼントの山などを置き、サンタと距離を取って写真を撮るようになりました。

大晦日の名物イベントの1つである花火も、人の動きを制御することが厳しいため、オーストラリア各地で中止が発表されています。

オーストラリアにおいても、依然として景気回復には時間がかかるとされている一方で、2020年7〜9月の第3四半期における実質GDP成長率は前期比3.3%に回復するなど、経済状況は徐々に回復傾向に向かっています。

とはいえ、観光業界への打撃は今後もしばらく続く見通しのため、引き続きオーストラリア国内の感染状況や観光業界の動向は注視することが求められます。

国内旅行は

5か月間という長期に渡り発生した山火事と新型コロナウイルスの感染拡大は、国内旅行に大きな影響を与えました。

2020年1月〜9月までの国内宿泊旅行については288億ドルの損益となり、山火事と新型コロナウイルスの影響から前年比47%減となりました。

ツーリズムリサーチオーストラリアは、2020年6月までに新型コロナウイルスの感染拡大が国内旅行へ与えた影響として、下記の4つを挙げています。

  1. 州境の閉鎖による各州間の市場へのネガティブな影響
  2. ソーシャルディスタンス対策でアクティビティへの参加機会が減少
  3. 国内における宿泊旅行で、首都は地方よりも大きな打撃
  4. 宿泊旅行の1人当たりの平均予算について、2019年同時期は648ドルだった一方で2020年は385ドルと大幅な減少

新型コロナウイルスの感染拡大により、オーストラリアの国内旅行市場は大きな打撃を受けていることがわかります。

しかし、Tourism Australiaが実施した2020年9月の消費者調査によると、オーストラリア人旅行者の60%がぜひ旅行をしたいと考えているほか、旅行ができる状況になったらオーストラリア国内で旅行することを検討していることが明らかになりました。

感染対策の観点から自由に旅行ができる状況ではない現在も、オーストラリア人の国内旅行への意欲は比較的高いことがうかがえます。

「スロートラベル」がトレンドに

ツーリズムリサーチオーストラリアが実施した、2020年6月までの四半期の国内旅行に関する調査では、自家用車を利用した旅行が国内の宿泊旅行のなかで90%を占め、2019年同時期の73%から18%増加しました。

一方で、飛行機を利用した国内旅行は24%から6%へ減少しています。飛行機を利用し首都を訪問するより、自家用車を利用した地方への旅行が増加しました。感染予防の観点から、自家用車を利用しソーシャルディスタンスを取りながら、混雑の少ない地方へ足を運ぶ人が増えたと考えられるでしょう。

Skyscannerが発表した「AUSTRALIA TRAVEL TRENDS2020」によると、量より質を優先する「スロートラベル」が19%を占め、最も人気の旅行スタイルとなりました。

混雑を避けるために観光客が少ない目的地を選び、オフシーズンに別の目的地を目指す「JOMO(Joy Of Missing Out)」という旅行形態が今後より主流になるとみられています。

「Holiday Here This Year」キャンペーン

オーストラリア政府観光局は2020年1月より、「Holiday Here This Year」キャンペーンを開催しています。

新型コロナウイルスの打撃を受けた観光事業者などを、国内旅行の予約と計画を促進することでサポートすることが目的です。

特設ページでは、現在クリスマスのホリデーシーズンにおすすめのホテルやレストラン、安全な観光をするためのツアールートやアウトドアアクティビティの提案をしています。

海外旅行ができないいま、安全な国内旅行の需要喚起に向けて取り組む様子がうかがえます。

2021年のオーストラリアはどうなる?

オーストラリアのモリソン首相は12月1日、新たに観光事業を含めた中小企業への支援を発表しました。国内旅行需要が高まっているなかでも、海外からの観光客受け入れ再開の見通しは立っておらず依然として観光業界は厳しい状況にあることから、新たな支援策の実施に踏み切ったものと考えられます。

また、日本を含めたアジア数か国に対するトラベルバブルを検討していることも明らかにしました。まだ打診段階のため、開始予定時期などは明らかになっていませんが、感染状況が落ち着いた国との間では隔離措置などを設けた上で、観光客の往来が可能なのではとの考えを示しています。

日本とオーストラリアの間でトラベルバブルが開始されれば、訪日外国人観光客の増加が期待できるでしょう。

国内旅行の需要喚起からトラベルバブルの拡大にも期待

オーストラリアでは、新型コロナウイルスの感染状況が比較的落ち着いていることから、引き続き感染対策を講じた上で国内旅行の需要喚起を行っています。

オーストラリア政府は日本を含めたアジア数か国とのトラベルバブルを検討していることから、2021年には日本とオーストラリアとの間で観光客の往来が再開されるかもしれません。

トラベルバブルの対象に日本も追加されれば、オーストラリアからの訪日外国人観光客の再誘客が見込まれます。訪日オーストラリア人観光客は長期滞在が主流となり、インバウンド消費額も高い傾向にあることから、日本のインバウンド復活に向けた大きな効果が期待できるでしょう。

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<参考>

・Australian Government:NATIONAL VISITOR SURVEY MONTHLY SNAPSHOT

・Australian Government:NATIONAL VISITOR SURVEY RESULTS

・Australian Government:Support for Business

・TOURISM AUSTRALIA:HOLIDAY HERE THIS YEAR

・TOURISM AUSTRALIA:12 DAYS OF CHRISTMAS GIFTING

・JETRO:第3四半期のGDP成長率は前期比3.3%に回復


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