新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に関し、政府の観光支援事業「Go To トラベル」による人の移動の増加が一因だとして、医師や専門家から事業の一時停止を求める声が相次いでいる。政府は「延べ4000万泊超の利用」に対して感染者が26日時点で202人にとどまるとして事業を継続するが、この数字は事業を利用した感染者を全て把握できているとは言い難いのが現状だ。(村上一樹)

 観光庁などによると、事業を利用した感染者数は、宿泊施設などに対し、保健所や利用者本人から連絡があった数字を積み上げて集計している。宿泊から日数がたって感染が確認される場合などは、保健所から宿泊施設に必ず連絡があるわけではないという。

 「Go To トラベル」で人の往来を後押しし、症状のない人が旅先で知らず知らずのうちに感染を広げてしまう恐れもある。こうした感染者を正確に集計するのは難しく、事業に伴う感染者数を正確につかめているとは言い切れない。

 日本医師会の中川俊男会長は事業と感染拡大の関係について「きっかけになったことは間違いない」と明言。東京都医師会の尾崎治夫会長も、事業が感染拡大の一因との見方を示して一時停止を求めた。

 だが、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は20日の提言で、事業に関して「感染拡大の主要な要因であるとのエビデンス(根拠)は現在のところ存在しない」と指摘。政府は200人ほどの感染者数を根拠に事業と感染拡大の明確な因果関係はないと正当性を主張し、一部を見直しただけで継続している。

 菅義偉首相は25日の衆院予算委員会でこうした感染者数を何度も引用し、事業の意義を強調。加藤勝信官房長官も「対策を徹底すれば、旅行、触れ合いによる感染リスクは低減できる」と繰り返している。


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