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台風19号被害から1年 冠水の宮城・丸森町、復旧・観光阻むコロナ

 昨秋、東日本各地に甚大な被害をもたらした台風19号の上陸から12日で1年。宮城県丸森町では阿武隈川の支流が氾濫して堤防が決壊・越水し、山間部では大規模な土砂災害も発生。関連死も含めて12人の死者・行方不明者が出た。今年6月には町の復興計画が策定され、ハード面の復旧に一歩踏み出した一方、新型コロナウイルスが復旧工事や観光に影を落とす。住民らは見えない不安と戦いながら、先の長い復興への道のりを歩んでいる。(千葉元、塔野岡剛)



台風19号被害から1年 冠水の宮城・丸森町、復旧・観光阻むコロナ


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台風19号被害から1年 冠水の宮城・丸森町、復旧・観光阻むコロナ

 ■孤立した防災拠点

 「思い出すとぞっとする」。町役場にほど近い自宅で暮らす菊地のり子さん(75)。台風19号が上陸した昨年10月12日夕、役場に隣接する避難所「丸森まちづくりセンター」に避難した。

 だが、風雨が激しくなった同日夜、突然天井から雨漏りが発生した。マイクロバスに乗り込み、役場に再度避難を余儀なくされた。

 当時、役場周辺は1メートル以上冠水。防災拠点であるはずの役場庁舎内では、町長や職員、住民ら約240人が2日間にわたり孤立状態となった。菊地さんも役場3階の会議室で3日間を過ごした。

 ■放流施設など増設

 町は台風の教訓を踏まえて今年6月、復旧・復興計画を策定。庁舎の防災機能強化に加え、災害対策本部の運営、避難所開設などの訓練を通じて防災体制を強化する方針を打ち出した。

 町の担当者は「庁舎そのものの高台移転は現実的ではない。市街地に水が回る前に防ぐのがポイントだ」と話す。役場周辺の冠水は、3日間で427ミリという記録的な集中豪雨に、排水が追いつかなかったことが原因とされる。

 町は今後、豪雨に備えてポンプ場や放流施設の増設を実施し、令和6年までにこれまでの1・8倍の排水能力を持たせる方針だ。

 ただ、住民の不安は拭いきれていない。菊地さんは「いまも雨が降るたびに家に水が上がるんじゃないかと怖くなる」と吐露する。「この場所は町では一等地だが、水が上がる一等地では困る。絶対に水が来ない対策をしなければ、丸森の人口流出も続くと思う」と語った。

 ■紅葉シーズン期待

 台風19号で牙をむいた阿武隈川やその支流は、そのまま観光資源でもあった。四季の自然と食事を楽しめる「阿武隈ライン舟下り」がその一つだ。

 「見どころは台風で全部やられた」。この道約30年の船頭、斎藤治由(はるよし)さん(56)が船を操りながら景色を見やる。片道約4キロのコースでは、船の安全運航を祈る「白衣観音」や、高低差を利用した「弘法の噴水」が破損。川沿いの木々には、漂流したポリ袋やタオルなどが引っかかったままだ。

 船は無事だったが施設の断水が続いたため、台風上陸から約1カ月間、休業した。それでも、再開後には「大変でしたね。応援に来ました」と関東地方から観光客が押し寄せた。

 軌道に乗り出したと思われた今年の春先、今度は新型コロナウイルスへの懸念が広まる。4~6月、台風後より長い休業期間を取った。斎藤さんは「これほど長く休めたことはない」と苦笑する。

 先月、新たな白衣観音像が寄贈され、これからは紅葉を楽しめるシーズンだ。 斎藤さんは「明るい兆しも見えてきた。コロナで人が動かなくなってしまったが、早く県外からも人が来るといい」と願う。

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