駐車場に並べられた「はとバス」の車両。期待していた「Go To トラベル」キャンペーンは東京除外が決まった=17日、東京都大田区で

 国内旅行代金の一部を補助する政府の観光支援事業「Go To トラベル」は、新型コロナウイルス感染症が広がっている東京都は除外されることになった。支援事業で経済回復を期待した観光業界は困惑し、複雑な思いを抱える。(西岡聖雄、梅野光春、太田理英子)

◆台風、風評…三重苦

 「東京の除外はショック。やっと8割ほど埋まった夏の予約が5割には減るかも」。千葉県勝浦市の老舗旅館「鵜原館うばらかん」は都内と県内の客が多く、後藤隆晃社長(46)は浮かない表情だ。東京除外が発表された16日には、一気に20件のキャンセルが入った。

 昨秋の台風で屋根や壁が吹き飛ぶ被害に遭い、今年2月には市内のホテルで中国・武漢市からの帰国者受け入れが始まり、風評被害でキャンセルが相次いだ。

 現在は客室を6割に減らし、分散入浴のため露天風呂などの稼働時間は延ばした。感染対策を取るほど人件費や光熱費がかさみ、後藤さんは「どう利益を出せるか手探り状態。このまま商売が成り立たないなら、もうやめるしかない」とため息をついた。

 「東京の感染者数が増えると、キャンセルも増える」。明治初期の創業以来初めて2年以上の耐震改修をし、15日に改装オープンしたばかりの富士屋ホテル(神奈川県箱根町)の勝俣伸社長(66)は「箱根登山鉄道が全線開通する23日からの4連休と『Go To トラベル』に期待していたので、東京除外は痛いし残念」と悔しがった。

15日に改装オープンした。富士屋ホテル=神奈川県箱根町で


 4~5月の町内の主要施設の宿泊客は前年比で9割近く減少。客の65%を東京を中心とする南関東が占め、感染者の急増エリアと重なる。町観光協会理事長も務める勝俣さんは「箱根には夜の繁華街もない。感染者が出ても宿帳で連絡できる。安心して来てもらえるよう対策を徹底するしかない」と語った。

◆「できれば延期に」

 JR東京駅周辺など都内3カ所にビジネスホテルをもつ「龍名館」(千代田区)の広報担当者は「いま地方から見た東京のイメージは悪く、対象になっても利用増は見込めない」と冷静だ。売り上げ低迷はしばらく続くと見込みつつ「雇用調整助成金で人件費を穴埋めするなど、出血をいかに少なくするかに注力する」と話した。

 「できればキャンペーンを延期してほしかった」と話すのは、都内835の旅館・ホテルが加盟する東京都ホテル旅館生活衛生同業組合(千代田区)の須藤茂実事務局長。「除外はやむを得ない」としつつ、「東京から地方への感染拡大を防ぐためなら、都民が都内で宿泊するケースは割引対象に含めていいはず」と疑問を投げかけた。

 都内の名所を巡る「はとバス」(大田区)は4月の緊急事態宣言後、約2カ月運休していた定期観光バスを、先月13日から徐々に再開してきた。広報担当者は「キャンペーンで東京観光に来る方が増えれば、利用客も少しずつ回復すると期待していた。除外は残念な流れ」と話す。

 ただ、はとバスの利用料金はもともと観光支援事業の割引の対象外。「普段から、都内を含め首都圏在住の利用客が4割ほどいる。どんなツアーなら実施できるか考えたい」と力を込めた。


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