出典:神奈川県オールトヨタ販売店プレスリリース

神奈川県オールトヨタ販売店は2020年7月、神奈川県横浜都心臨海部を対象にスマートフォン向けマルチモーダルモビリティサービス「my route(マイルート)」の提供を開始することを発表した。九州以外では初の展開で、着々とエリア拡大を図っているようだ。

モビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタを象徴するような取り組みだが、トヨタはここからどのようにマネタイズし、事業を継続していくのか。

今回は、my routeの取り組みを参考にMaaSプラットフォーマーの事業性に触れていこう。

■my routeとは?

my routeは、さまざまな移動手段を組み合わせたルート検索や一部予約・決済を行うことができるMaaSアプリだ。

西日本鉄道とともに2018年11月に福岡県福岡市で実証実験に着手したのが始まりで、タクシー配車サービスを手掛けるMobility Technologies(旧JapanTaxi)やシェアサイクルサービスを手掛けるメルカリグループ、駐車場予約アプリを手掛けるakippaなどの各サービスやエリアの店舗・イベント情報などを連携し、マルチモーダルモビリティサービスとして展開を始めた。

1年間の実証期間でアプリダウンロード数は約3万件に達し、利用後アンケートでも約8割のユーザーが「満足」と回答するなど好評を得たようだ。

2019年11月には、JR九州参画のもと福岡市と北九州市で本格実施を開始した。トヨタのレンタカーやカーシェア、京王電鉄バス、第一交通産業などの各サービスが連携したほか、トヨタのキャッシュレス決済アプリ「TOYOTA Wallet」を導入するなど電子決済手段も拡充している。

2020年1月の発表では、2020年春頃に横浜市、熊本県水俣市、続いて宮崎県宮崎市・日南市に展開するなど順次サービスエリアの全国拡大を図るとしており、これまでに水俣市でサービスを開始している。

宮崎市では、宮交ホールディングスらが「宮崎県における観光型MaaS実証実験実行委員会」を組織し、この中でmy routeを活用した実証実験などを行う予定としている。

■横浜版my routeの概要

4番目のエリアとなる横浜市では、神奈川トヨタや横浜トヨペット、トヨタカローラ神奈川、ネッツトヨタ神奈川などが主体となって新会社「株式会社アットヨコハマ」を立ち上げ、地域の店舗やイベントなどのスポット情報を提案する横浜独自のポータルサイト「@YOKOHAMA(アットヨコハマ)」とともに運営する。

移動手段では、全国の電車や飛行機、バスなどの公共交通機関を用いたルート検索や一部予約・決済といった全国共通の機能をはじめ、トヨタのレンタカーやカーシェアサービス「ラクモ」、横浜市交通局によるデジタル1日乗車券「みなとぶらりチケット」、Mobility Technologiesによるタクシー配車サービス「JapanTaxi」と「MOV」、ドコモ・バイクシェアのシェアサイクル「baybike」のほか、横浜市に本拠を持つ日産も協力しており、レンタカーやカーシェアサービス「e-シェアモビ」を連携している。

各種情報では、横浜市がテイクアウトやデリバリー店舗情報や無料Wi-Fiスポット、連接バス「ベイサイド・ブルー」などの交通情報を提供するほか、スマホ向けウェブアプリ「YOKOHAMA TRAVEL GUIDE」や各商店街のホームページと連携した情報なども追加するという。

ポータルサイトの詳細は不明だが、横浜ならではの特色ある交通サービスや観光情報と連携し、より多くの移動手段やまちを楽しむためのコンテンツ作りを充実させ、他サイトにはないディープな情報掲載を目指すとしている。

出典:神奈川県オールトヨタ販売店プレスリリース
■my routeにおけるマネタイズは?
プラットフォームや決済の手数料収入が軸に?

自動車を作って売る企業からモビリティカンパニーへの変革を目指すトヨタは、my routeで地域に根ざした新たなモビリティサービスの提供に取り組んでいくこととしている。

利用者が移動したいときに必要とするあらゆる移動手段の検索や予約・決済サービスを提供することでよりシームレスな移動を実現し、さらに地域のイベントスポット情報の提供などを通じて移動したいと思うきっかけをつくり、ひいては街の活性化に貢献することを目指しているのだ。

では、事業の確立に向けどのように収益化を図っていくのか。第一に、プラットフォームや決済(TOYOTA Wallet)利用による手数料収入などが考えられる。プラットフォーマーとしての根幹とも言える部分で、手数料収入を増やすにはプラットフォーム上における取引、つまり移動の利用を高めていくことが重要となるため、MaaSの利便性を向上させ、いかに利用者を獲得していくかがカギとなる。

また、MaaSにおける各種データも将来的なマネタイズの種になることが想定される。より効率的かつ効果的なモビリティサービスの増進をはじめ、利用者のニーズに関わるデータは各方面で重宝される。利用者の許可の上で個別サービスの提案や、匿名加工を施しビッグデータ化した情報をもとに新サービスを開始するなど、さまざまな展開が望めそうだ。

モビリティ企業ならではのマネタイズ

自動車を製造するモビリティ企業としては、当然のことだが自動車を有効活用する観点も外せない。レンタカーやカーシェアサービスを通して自動車の需要を一定程度保ちつつマネタイズを図るのは1つの理想であり、自動車メーカーならではの事業となる。

現在、メーカー各社がカーシェアなどの事業に積極的に乗り出しているが、単体のサービスではなくMaaSプラットフォームのもと各モビリティサービス全体の最適化を図ることが事業効果の最大化につながる。

トヨタは、この全体最適化を図るプラットフォーム事業を自ら手掛けることで、従来の自動車をはじめカーシェア専用モデルやパーソナルモビリティなど新たなモビリティの活路を切り開いていくビジョンも描いているのかもしれない。

エリア情報との連携で相乗効果を発揮

MaaSプラットフォームに組み込まれることで相乗効果を発揮する情報の代表格が、観光や飲食などエリアにまつわる情報だ。MaaSによってさまざまなモビリティがシームレスにつながることでエリア内の回遊性が向上するが、そこに地域の魅力的な情報が付随することで移動需要を喚起し、エリアにおける消費活動の促進にもつながる。

横浜版my routeはこの部分を重要視している印象で、ポータルサイトの立ち上げはその象徴と言えるだろう。地元業者による魅力的な情報発信がエリア内外の人を惹きつけ、その目的地への移動手段も提示することでモビリティ事業者と地域の商業者がウィンウィンの関係を築くことができる。

福岡市・北九州市におけるmy routeでも、レジャー・遊び情報を提供するアソビューや買い物情報を提供するipocaなどが連携し、地域のさまざまな情報を提供しているほか、2020年3月には、JTBパブリッシングが提供する観光データベース「るるぶDATA」との連携のもと、利用者にとってさらに魅力的な情報配信を進めるとともに、長距離移動に伴う宿泊手配の対応として旅行手配サービス事業者との連携も進めていくと発表している。

こうした地域情報との連携は、観光地型MaaSをはじめ都市型・地方型MaaSでも移動需要を喚起する発奮材料となる。地域のポータルサイトとしての役割と、それに伴う移動を結び付ける有効手段がMaaSなのだ。

■【まとめ】my routeが「Mobility for All」を体現

自動車メーカーが主体となった本格的なMaaSプラットフォームの提供は独ダイムラーなどが先行しているが、トヨタのmy routeは全てのモビリティ事業者や地域との連携を意図したものとなっており、同社が掲げる「Mobility for All~すべての人に移動の自由と楽しさを~」を体現する取り組みと言える。

今後、エリアの拡大とともに注目が高まるのが、ソフトバンクとの合弁MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)の存在だ。同社はMaaS連携を念頭に業界の垣根を越えてモビリティイノベーションを起こす「MONETコンソーシアム」を有し、加盟企業は2020年7月時点で593社を数える。

将来、あらゆるサービスがモビリティと結びつき、新たな社会を創造していくことに期待したい。


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