関西発の2人組ガレージ・ロックンロール・バンド、50/50’s=礒崎陽平(g,vo)、池本元希(ds)が1stフル・アルバム『BONES』、カヴァー音源集『ROOTS OF 50/50’s』を同時リリースする。ホワイト・ストライプス、ストレイ・キャッツ、エルヴィス・プレスリー、ギターウルフ、KING BROTHERSなどに影響を受けながら、オーセンティックなロックンロールを爆音で鳴らしまくってきた2人のスタイルは、オリジナル・アルバム/カヴァー・アルバムの2作に生々しく刻み込まれている。関西を中心に活動を続けている礒崎、池本のルーツ音楽、バンドの軌跡、アルバムの制作などについて聞いた。

――1stオリジナル・アルバム『BONES』、カヴァー・アルバム『ROOTS OF 50/50’S』、どちらも素晴らしいです。初めてホワイト・ストライプスやジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンを聴いたときのことを想い出しました。

礒崎陽平・池本元希「おー、ありがとうございます」

――2人がロックンロールを好きになったのは、どこが入り口だったんですか?

礒崎「あー、それは難しいですね」

池本「2人で一緒にやりはじめたのは、ホワイト・ストライプスがきっかけだと思うんですけど、その前からエルヴィス・プレスリーやリトル・リチャードが好きで……いちばん最初はストレイ・キャッツかもしれないです。2人とも滋賀県出身なんですけど、彼(礒崎)に“いま、こういうの聴いてるんやけど”とストレイ・キャッツを教えてもらって僕もハマって。ロカビリーのマネごとというか、スタンディングでドラムを叩いたり」

礒崎「僕もブライアン・セッツァーみたいなギターを弾こうとしてましたね」

池本「そこから洋楽にガッツリ入っていって、古いロックンロールも聴くようになって。“2人でやろうぜ”ってなったのは、さっきも言ったとおり、ホワイト・ストライプスの影響です」

――ホワイト・ストライプスもリアルタイムじゃないですよね?

礒崎「違いますね。たぶん僕らが知ったのは、解散して4〜5年経った頃じゃないですか(※2011年に解散)」

――エルヴィスもホワイト・ストライプスも、もしかしたら並列で捉えていたんでしょうか。そういう音楽が好きな仲間ってほかにもいたんですか?

池本「滋賀にはあまりいなかったですね」

礒崎「ワハハハ」

池本「18、9歳くらいだったんですけど、だいぶ年上の人たちと話が合って、仲良くさせてもらってました。大阪に来てからは、そういう音楽の詳しい同世代の人もけっこういますけど」

礒崎「そうやな。僕はもともと叔父に音楽を教えてもらったんですよ。叔父がギターを弾く人で、オジー・オズボーンとかマイケル・シェンカーとか、ハード・ロックから入って。そこからセックス・ピストルズをきっかけにパンクを聴くようになって。その後、どっかのタイミングでストレイ・キャッツにハマったという感じです」

50/50

――なるほど。当初はどんなところでライヴをやってたんですか?

礒崎「とにかくライヴをやろうと思って、“どこのライヴハウスがええんやろ?”って考えたんですよ」

池本「大阪にはライヴハウスがいっぱいあるので、どこに出たらいいかわからなくて。ハコのよって、ジャンルの色もあるし」

礒崎「で、僕がギターウルフが好きだったから、(ギターウルフを観に行ったことがある)難波ベアーズでやりたいと思って音源を渡して。結局、いろいろあって出られなかったんですけど(笑)。その後はガレージ系のバンドが良く出てるライヴハウスでライヴをやるようになって」

――東京だと、東高円寺のU.F.O. CLUBとかありますけどね。

池本「いつもお世話になってます。幡ヶ谷のCLUB HEAVY SICKもガレージ系のバンドが多いので、いつか出てみたいです」

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――では、リリース作品について聞かせてください。まずカヴァー・アルバム『ROOTS OF 50/50’s』は、「Twenty Flight Rock」(エディ・コクラン)、「Heartbreak Hotel」(エルヴィス・プレスリー)などオールディーズのスタンダードが中心。タイトルどおり、ルーツになってる曲ということですか?

礒崎「そうですね。まさにそこに焦点を絞った感じです」

――有名な曲が多いですよね?

礒崎「ベタですよね(笑)」

――しかもアレンジや演奏もストレートです。

礒崎「わりと直球です」

池本「レコーディングも一発録りですし」

礒崎「ギターとドラムは“せーの”で一緒にやって、ヴォーカルだけ後で録って。いままでの音源も全部そのやり方です」

――原曲の魅力が生々しく伝わるし、ノスタルジックな感じがしないのがいいと思いました。2人にとって、50’sの音楽の良さってどんなところですか?

礒崎「50’sに関して言えば、最初はエルヴィスだったんですよ。ストレイ・キャッツにハマった時期に、オールディーズのオムニバスを聴いて。〈監獄ロック〉が流れたときに、“うわ、かっこいい!”って思ったんですよね。“誰?この人”と思ってパッとCDを見たらそれがエルヴィスで。マイケル・ジャクソンとかと同じで、名前は知ってましたけど、ちゃんと曲を聴いたことがなかったんです。〈監獄ロック〉のヴォーカルはちょっとヤサぐれた感じで、それがすごくよくて」

池本「“この曲のカッコ良さとはなんだろう?”みたいなことはあまり考えないんですよ。初めてエルビスをちゃんと聴いたのは彼の車でなんですけど、身体が勝手に反応するというか、自然と踊っちゃって(笑)。とにかくリズムが心地いい」

――頭じゃなくて身体が反応する感覚は、2人の演奏からも伝わってきます。

池本「ありがとうございます。めちゃくちゃカッコよく録れたと思いますね」

50/50
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――50/50’sのレコーディング、ミックスエンジニアは、KING BROTHERSのマーヤさんが手がけています。これぞガレージ・ロック!な素晴らしい音ですね。

池本「マーヤさんがこだわってくれて。演奏する時間よりも、音決めのほうが長かったぐらいです」

礒崎「アンプをいろいろ試したり、“もうちょっと潰れた音にしようか?”という感じで、細かく調整して」

――バンド・サウンドに対する美学がすごいですからね、マーヤさんは。KING BROTHERSとは、いつから交流があるんですか?

池本「2017年の11月だったと思うんですけど、知り合いのイベントに出させてもらったら、KING BROTHERSも出演していて」

礒崎「京都のライヴハウスだったんですけど、電車で一緒に帰ってるときに、ケイゾウさんに“12月にワンマンがあるんですけど、オープニングアクトやりませんか?”と言っていただいて。そこからの付き合いですね」

――ルーツになってる音楽も近いだろうし、親近感があったんでしょうね。

池本「嬉しいです。リンダ&マーヤとも北海道とか沖縄、オーストラリアにも一緒に行って。仲良くさせてもらってます」

――オリジナル・アルバム『BONES』の音もビックリするほど生々しいです。資料に“カセットテープへ録音”とありますが、これはどういうことですか?

礒崎「カセットテープにバンドの音を吹き込んだんです。エンジニアの方と、ジャック・ホワイトが使っている電話ボックス型の録音ブース(コインを入れて受話器に向かって録音したものが、直接レコードに刻まれる録音ブース。1940年代に空港や観光地に設置され、戦時中に故郷に送る“声の便り”として利用された)の話をしていたときに“カセットテープで録ってみようか?”ということになって。音の質感がまったく違うんです」

池本「“歪みすぎじゃない?”って思われるかも(笑)」

礒崎「実際、アルバムを聴いてくれた人から“すごい歪んでるね。どうやって録ったの?”と言われたこともあります」

――ギターのファズもめちゃくちゃ効いてて。

礒崎「全編にわたって踏み続けてる曲もありますからね。いちばん好きなエフェクターなんで(笑)」

――パンキッシュな曲からリフをメインにした曲まで、バラエティも揃っています。曲作りやアレンジはどうやって進めてるんですか?

池本「いろいろですね。彼(礒崎)が構成からアレンジまで決めてくることもあるし、リフをもとにして、2人でセッションすることもあって。基本的には2人が“これ、いいね”と思うものを繋ぎ合わせてる感じです。礒崎が歌い始めたのはこのバンドを結成してからで、もともとはギタリストだから、演奏メインで曲を作っていくことも多いです」

――歌詞は後から乗せるんですか?

礒崎「ほぼ最後のほうですね。けっこう苦手というか、いつもヒネリ出してます(笑)。語感で書いていくこともあるし……」

池本「〈Honey Slide Twist〉もそうです。とくに意味はないんですけど、語感というか、言葉の響きを活かしているというか」

礒崎「そうやな(笑)」

――「臆病者のブルース」もそうですけど、歌メロをじっくり味わえるバラードもあって。

池本「〈臆病者のブルース〉と〈Honey Slide Twist〉では、かなり幅がありますね。いろんなタイプの曲が入ってますけど、自分たちがもともと持っている雰囲気に落とし込めてる感じもあります」

礒崎「バラードはなかなかライヴでやれないんですけどね(笑)」

――アルバムの収録曲は、すでにライヴでやってる曲が中心なんですよね?

池本「そうですね。というか、“ライヴでやりてえ!”というところから曲作りが始まってるので」

――いまはライヴができないのがつらいですね。

池本「そうですね。配信もちょくちょくやってるんですけど、“自粛期間中に宅録した新曲をネットにアップします”みたいなバンドではないので」

――スピーカーからガーン!と音を出したいですよね。そのスタイルは今後も貫いていくんですよね?

池本「このスタイルでやっていきたいと思ってます。“管楽器を入れたい”みたいなこともあるんですけど、基本的には2人でやっていこうと思います」

――ライヴで『BONES』の楽曲を聴ける日を楽しみにしてます。ちなみに50/50’sというバンド名は“メンバーが2人”というのが由来ですか?

礒崎「それもあります」

池本「最初はなんとなく“50/50’sでどう?”という感じだったんですけど、2ピースだし、この名前はしっくり来てます。あとはギャラ。“もし売れても、ギャラは半々で”っていう(笑)」

礒崎「そこ(笑)」

池本「バンドのドキュメンタリーとか観てても、ギャラで揉めたりするじゃないですか。大事です」

礒崎「解散の理由になりかねないからな(笑)」

池本「それを防ぐためにも、ギャラも“50/50’s”です(笑)」

取材・文/森 朋之


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