相続税などの計算の基準となる土地の評価額、「路線価」が公表され、近畿地方の平均は5年連続の上昇となりました。
ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響は反映されていないため、国税局は、今後、全国的に大幅な地価の下落が確認されれば、一律に補正するなどの措置を検討するとしています。

「路線価」は、主な道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額を、国税庁が1月1日時点で算定したもので、相続税や贈与税を計算する基準になります。
1日公表された近畿地方の路線価は、去年を平均で1.2%上回り、5年連続で上昇しました。
大阪や京都などの観光地を訪れる外国人観光客のインバウンド効果に加え、大阪・梅田周辺の商業地が、オフィス需要の高まりで大幅に値上がりしたことが、全体を底上げした形です。
府県別の平均は去年に比べて、京都が3.1%、大阪が2.5%上回った一方、兵庫と滋賀が0.1%、奈良が0.3%、和歌山が1.1%下回りました。
税務署ごとの最高価格地点では、大阪・梅田の阪急百貨店前の御堂筋が去年より35%、560万円高い2160万円で、近畿地方で37年続けて最高でした。
また、次に高かった大阪・ミナミの戎橋ビル前の心斎橋筋が2152万円と44.6%の大幅な上昇となり、全国の上昇率をみると、上位10地点のうち6地点を大阪が占めました。
ただ、今回公表された評価額には新型コロナウイルスの影響は反映されておらず、国税局は今後、全国的に大幅な地価の下落が確認されれば、一律に補正するなどの措置を検討するとしています。

【近畿2府4県の最高価格】。
1日、公表された「路線価」の近畿2府4県の最高価格地点です。
▼大阪府では、大阪・梅田の「阪急百貨店」前の御堂筋で、去年より35%上がって2160万円となり、近畿地方で37年続けて最高でした。
▼京都府では、京都市下京区の「みずほ銀行四条支店」前の四条通で、去年より18.1%上がって673万円となりました。
▼兵庫県では、神戸市中央区三宮町1丁目の「三宮センター街」で、去年より17.6%上がって576万円となりました。
▼奈良県では、奈良市東向中町の「近鉄奈良駅」前の大宮通で、去年より21.2%上がって80万円となりました。
▼和歌山県では、和歌山市友田町5丁目の「JR和歌山駅」前で、去年と同じ36万円でした。
▼滋賀県では、草津市大路1丁目の「JR草津駅東口広場」で、去年より8.8%上がって31万円となりました。

【ミナミ急上昇も様相一変】。
ことしの路線価、全国的にみても目立ったのが大阪の急上昇です。
税務署ごとの最高価格地点の上昇率で、全国の上位10地点のうち6か所を大阪が占めています。
大阪の路線価を押し上げた要因の1つがここ数年、増加を続けてきた中国人を中心とした外国人観光客によるインバウンド効果です。
ことしは、東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されていたことで大阪を訪れる外国人がさらに増えることが期待されていました。
とくに注目されるのが、外国人に人気の街、大阪・ミナミです。
最高価格は道頓堀の観光名所、グリコの看板のそばの戎橋ビル前で2152万円。
去年の1488万円から44.6%の大幅な上昇となり、長年、関西でトップの梅田の阪急百貨店前に8万円差にまで迫りました。
ところが、評価額を算定した1月1日から半年がたったいま、新型コロナウイルスの影響でミナミの状況は一変しています。
道頓堀の周辺を歩いてみると、中国人観光客が「爆買い」する様子が日常的な光景になっていたドラッグストアがいくつか閉店していました。
巨大なふぐの看板で知られる老舗のふぐ料理店「づぼらや」が店を閉めることを決めたほか、シャッターを下ろし、休業を続ける飲食店も目立っています。
ミナミでは、海外からの入国の制限が始まったことし2月以降、外国人観光客の姿はほとんどなくなりました。
不動産鑑定士の山内正己さんは、「外国人観光客が急激に減ってほぼゼロになり、店の売り上げやホテルの稼働率など、すべてが下がってしまった。これからは今までと同じような高い家賃の設定はできなくなると考えられ、投資家の目線でみると、地価が下落するリスクは高まるのではないか」と話していました。

【オフィス縮小の動きも】。
大阪の路線価を押し上げたもう1つの要因は、大阪のオフィス需要の高まりです。
大阪の中心部・梅田ではここ数年、オフィスの供給不足から商業ビルの賃料が跳ね上がり、争奪戦は周辺のビジネスエリアや交通の便がよい豊中市の千里中央駅前まで広がっていました。
ところが、新型コロナウイルスの影響でどういう場所にどれくらいの規模のオフィスを構えるのか、企業の考え方が変わり始めています。
テレワークを導入した企業やコストを削減したい企業の間で、利便性の高い場所から郊外に移転したり、スペースを小さくする動きが進んでいるのです。
オフィスの縮小を支援するサービスを新たに始めた会社には、2月以降およそ20社から相談が寄せられています。
そのうちの1社のIT企業は、コロナの感染が拡大する前、大阪の中心部のビルに2つのフロアを借り40人余りの従業員が勤務していました。
しかし、今ではテレワークを導入し、ほとんどの従業員が在宅で仕事をこなしています。
広いオフィスを維持する必要性が薄れたということで、1フロアを解約することを決めました。
このIT企業に対してサービス提供会社は、▽小さくしたオフィスのレイアウトを提案したり、▽不要になったいすや机などを買い取ったりするということです。
オフィス縮小支援サービスを提供している「オフィスバスターズ」西日本本部の石神雅士部長は「テレワークをしてみたところ、予想外にうまくいって、オフィスのあり方を見直す動きは広まっている。経営環境の悪化を見越して、固定費を削減したいという企業からの問い合わせも相次いでいて、今後も需要は続くと見込んでいる」と話していました。

【不動産鑑定士“コロナ回復見通せず”】。
不動産鑑定士の山内正己さんは、大阪のオフィスの現状について、「空室率が少し上がってきている。テレワークが広がり、景気の悪化する中、コストを下げるためにオフィスを狭くする動きが東京から始まり、大阪にまわってきている」と分析しています。
そのうえで、関西全体の不動産の動向について、「オフィス、住宅、ホテル、商業施設の4本が競合して上昇してきたが、コロナの影響で特にホテル、商業施設が弱くなり、いつ回復するか見通しが立たない状況だ。投資家の間では、しばらくはどこまで価格が下落しそうか様子見の状況が続くのではないか」と話していました。

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