新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない発令されていた緊急事態宣言が、5月25日までに全国で解除された。その後、一部の都道府県で感染者数が増加傾向となっているものの、事態が収束し、自由に移動できるようになったときに備え、新たな旅行計画を立てている人もいるのではないかと思う。

【写真】一畑電車では86年ぶりという新造車両7000系

この春に運転予定だったJR各社の臨時列車も多くが運休となり、JR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」をはじめ、デビューを延期した列車もある。「WEST EXPRESS 銀河」は夜行特急列車として運転されるだけに、残念に思った鉄道ファンは多いだろう。

デビュー後も予約を取りにくい列車になると予想されるが、せっかくの機会なので、「WEST EXPRESS 銀河」で訪れる山陰への旅行プランを立ててみた。実際に乗車できることを期待しつつ、しばらくは机上での「空想旅行」を楽しんでみたい。

■近郊形電車117系を改造「WEST EXPRESS銀河」の概要

具体的な旅行プランに入る前に、列車の概要を簡単に紹介。「WEST EXPRESS 銀河」は、国鉄時代の1979(昭和54)年から導入され、京阪神地区の東海道・山陽本線で新快速として活躍した近郊形電車117系のうち1編成(6両編成)を改造した、JR西日本の新たな長距離列車である。

車体は西日本の美しい海と空を表現した瑠璃紺色を採用。西日本エリアの魅力的な地域を星に見立てたロゴマークを車体側面にあしらった。車内は1両ごとにレイアウトが異なり、夜行列車・昼行列車のどちらにも対応できるように工夫されている。

1号車はグリーン車指定席「ファーストシート」で、向かい合わせの座席を配置。背もたれを倒すことでベッドとしても使用できる。2・3・5号車は普通車指定席。2号車は女性専用車で、横4列(2列+2列)のリクライニングシートに加え、フルフラットシートのノビノビ座席「クシェット」も用意された。

3号車は横4列のリクライニングシートと、グループで利用可能なコンパートメント「ファミリーキャビン」、フリースペース「明星」を配置。4号車は誰でも利用できるフリースペースで、「遊星」と命名された。5号車はフルフラットシートのノビノビ座席「クシェット」が並ぶ。6号車はグリーン個室「プレミアルーム」で、計5室のうち1室は1名用個室だ。乗務員室の後方にフリースペース「彗星」を配置した。

「WEST EXPRESS 銀河」は当初、5月8日の運行開始を予定していた。週末を中心に、5~9月は夜行特急列車として京都・大阪~出雲市間、10月から来年3月まで昼行特急列車として大阪~下関間を走る予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、デビューが延期となった。運行開始日は決定し次第、別途告知するとのこと。

■往年のブルートレインや新快速を思い出させる列車に

ここからは発表されている情報をもとに、夜行の下り「WEST EXPRESS 銀河」への乗車を想定した旅行計画を紹介していく。この列車は京都駅を21時15分に発車した後、東海道本線、山陽本線、伯備線、山陰本線を経由して出雲市駅へ向かう。

京都駅のホームで瑠璃紺色の「WEST EXPRESS 銀河」を見ると、かつて京都駅・新大阪駅から九州方面へ運行された往年のブルートレイン「なは」「あかつき」といった列車を思い出すかもしれない。なお、「WEST EXPRESS 銀河」には食堂車が連結されていないため、駅弁や飲食類は乗車前に購入しておきたい。

京都駅を発車した列車は、新快速や特急列車が使用する東海道・山陽本線の外側線(列車線)を疾走する。「WEST EXPRESS 銀河」の117系は、長らく新快速として活躍した車両だけに、当時の姿と重ね合わせつつ、内側線(電車線)の普通列車を追い抜く様子を眺めていくと面白いだろう。

22時28分に大阪駅を発車したら、4号車のフリースペース「遊星」に移動し、できれば海側(進行方向左側)の席を確保したい。神戸市内を走行した後、23時10分頃、海側の車窓に明石海峡大橋が見えてくる。乗車日が祝日や特別ライトアップの日と重なっていれば、明石海峡大橋の見事なライトアップを見られるかもしれない(平日のライトアップは23時まで)。開業から20年以上が経過したいまもなお、明石海峡大橋は世界最長の吊り橋として存在感を示している。

姫路駅の発車時刻は運転日によって異なり、金曜日始発の列車は23時48分、月曜日始発の列車は0時40分に発車。その後は走行音を聞きつつ、眠りにつくことになる。翌朝、最初の停車駅は鳥取県内の伯備線生山(しょうやま)駅。その後は米子駅、安来駅、松江駅の順に停まる。

「WEST EXPRESS 銀河」が停車する一部の駅では、「駅のおもてなし」と称し、物販や伝統芸能の披露が行われるという。生山駅・米子駅などで朝食として駅弁を購入でき、さらに伝統芸能も見られるかもしれない。参考までに、米子駅では境港で水揚げされた肉厚のさばを使った駅弁「吾左衛門鮓鯖」が販売されている。

松江駅を発車した後、進行方向右側に宍道湖が見える。山陰本線の列車はしばらく宍道湖に沿って走るので、車窓風景に飽きることはないだろう。終点の出雲市駅には9時31分に到着予定となっている。

「WEST EXPRESS 銀河」に乗車する際、普通運賃とは別に普通車指定席は特急料金、グリーン車指定席は特急料金とグリーン料金、グリーン個室は特急料金とグリーン個室料金が必要。京都~出雲市間の場合、普通車指定席の利用で1万640円、グリーン車指定席の利用で1万5,510円、グリーン個室の利用で1万8,560円となる予定だ。

■一畑電車で出雲大社へ – 駅舎や車両にも注目

山陰での鉄道旅行もさまざまな選択肢があり、出雲市駅から浜田・益田方面の列車に乗れば、「偉大なるローカル線」とも評される山陰本線の美しい車窓風景を堪能できる。宍道駅から木次線の列車に乗るのも楽しい。

出雲大社などの代表的な観光地を訪れるなら、出雲市駅に隣接する電鉄出雲市駅から一畑電車に乗るという選択肢もある。一畑電車は北松江線(電鉄出雲市~松江しんじ湖温泉間)・大社線(川跡~出雲大社前間)の2路線からなり、出雲大社へ行くなら川跡(かわと)駅で出雲大社前行の電車に乗り換えることになる。

電鉄出雲市駅から川跡駅まで8分ほど。川跡駅は昔ながらの構内踏切がある駅で、どこか懐かしさを感じられる。川跡駅から出雲大社前駅までは電車で約10分。出雲大社前駅の洋風駅舎は国の登録有形文化財に指定され、駅構内ではデハニ50形が展示されている。同駅から出雲大社の本殿までは徒歩10分ほどの道のりだ。反対方向に歩けば、国の重要文化財に指定された旧大社駅の和風駅舎も見ることができる。

一畑電車の車両にも注目したい。元京王5000系を改造した2100系・5000系、元東急1000系を改造した1000系など、関東の大手私鉄で活躍した電車が短編成となり、のんびりとしたローカル線を走っている。都会で活躍した頃とは対照的なその姿に、車両そのものに対する印象が変わるかもしれない。こうした譲渡車両ばかりでなく、一畑電車オリジナルの新造車両7000系が導入されていることも興味深い。

「WEST EXPRESS 銀河」の運転日を見ると、京都発出雲市行の下り列車が出雲市駅に到着した後、その日のうちに出雲市発大阪行の上り列車が運転されるケースが多い。予約の取りにくい列車になると予想され、山陰での滞在時間も短くなるだけに、行きも帰りも「WEST EXPRESS 銀河」に乗るのは現実的でないように思える。片道は新幹線と特急列車を活用するなどして、山陰の旅をゆっくり楽しみたいところだ。

事態が収束し、「WEST EXPRESS 銀河」が無事デビューすることを心待ちにしつつ、山陰への鉄道旅行に思いをはせてみてほしい。

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