難波駅の2階中央改札口に設置されている、Visaのタッチ決済と南海デジタルチケット対応自動改札機。既存の自動改札機にカードリーダーとQRコードリーダーを取り付けた専用ポールを設置したものとなっている

南海電鉄、三井住友カード、QUADRAC、ビザ・ワールドワイド・ジャパンは、4月3日より南海電鉄の一部の駅で、「Visaのタッチ決済」「QRコード」による入出場の実証実験を開始した。今回、実際にVisaのタッチ決済に対応したクレジットカードを使って南海電鉄を利用してきたので、その様子を紹介する。

全16駅に2種類の専用自動改札機を設置

今回の実証実験は、南海電鉄16駅にVisaのタッチ決済およびQRコードを利用する「南海デジタルチケット」に対応した専用の自動改札機を設置し、4月3日から12月12日(予定)の期間で行なわれる。専用自動改札機が設置される駅は、難波駅、関西空港駅、和歌山市駅、高野山駅など16駅。具体的な実証実験の内容は、別記事のとおりだ。

日本初、Visaのタッチ決済で改札入退場。南海電鉄の難波など16駅

実証実験に利用される専用の自動改札機は2種類用意される。

1つは、既存の自動改札機の手前にVisaのタッチ決済用のICカードリーダーとQRコードリーダーを取り付けたポールを設置するもの。Visaのタッチ決済対応カードなどはポール上部の左側面に設置されているICカードリーダーに、南海デジタルチケットは手前側面のQRコードリーダーにそれぞれかざして入出場が行なえる。また、既存の自動改札機を活用しているため、自動改札機のICカードリーダーを利用することで交通系ICカードでの入出場も可能となっている。

ポールには、手前側にQRコードリーダー(白いユニット)、側面にICカードリーダーが設置されている。自動改札機の交通系ICカード用リーダーもそのまま動作しており、交通系ICカードでも入出場が可能だ

もう1つは、Visaのタッチ決済と南海デジタルチケットのみに対応するものだ。こちらは、主にオフィスビルの入館ゲートなどに利用されている、高見沢サイバネティックス製のセキュリティゲートを応用したものとなる。既存の自動改札機同様に、進入口側にICカードリーダーとQRコードリーダーを備えるため、Visaのタッチ決済や南海デジタルチケットで入出場する場合でも、既存の自動改札機とほぼ同じ動作で入出場が可能。ただし、ICカードリーダーはVisaのタッチ決済にのみ対応しているため、交通系電子マネーでの入出場は行なえない。

オフィスビルの入管ゲートなどに利用されているセキュリティゲートを応用した専用自動改札機。既存の自動改札機とはやや異なる見た目となっている

自動改札機手前にICカードリーダーとQRコードリーダーを配置。技術的には一体化することも可能だが、今回の実証実験ではあえて分けたとのこと

ICカードリーダーはVisaのタッチ決済にのみ対応しており、交通系ICカードは利用できない

Visaのタッチ決済は事前登録不要で誰でも利用可能

Visaのタッチ決済で入出場する場合には、Visaのタッチ決済に対応するクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードを利用する。また、AndroidスマートフォンやウェアラブルデバイスでVisaのタッチ決済が利用可能となっている場合には、そちらでも入出場が可能だ。

カードの発行国は日本だけでなく、海外発行のカードも利用可能。加えて、利用時の事前登録は不要で、Visaのタッチ決済対応カードなどを持っていれば誰でも利用できる。

今回の実証実験は、関西空港駅の乗車券販売ブースで常に発生していた訪日外国人観光客の長い列を解消し、利便性を高める意図から計画されたもの。その意味からも登録不要で利用できることを重視した。

実証実験では、Visaのタッチ決済を利用した入出場において、入場時にサーバーに入場の記録を保存し、出場時に運賃を精算する都度利用となる。この流れは交通系ICカードとほぼ同じだが、Visaのタッチ決済を利用する場合には交通系ICカードのように事前にチャージの必要がない。もちろん、残金不足で出場できない、ということも発生しないため、スムーズに入出場が行なえる。

Visaのタッチ決済に対応するクレジットカード、デビットカード、プリペイドカードが利用できる

Visaのタッチ決済が利用できるAndroidスマートフォンやウェアラブルデバイスも利用可能

カードへの料金計上は出場時に即座というわけではなく、1日分の利用料金をまとめて、その日の夜以降に計上される。例えば、1日のうちに2回利用して、それぞれ運賃が150円、200円だった場合には、カードには350円の料金が計上されることになる。実際に筆者が利用したカード「三井住友カード ナンバーレス(NL)」では、4月4日に利用した全料金の合計が、「交通利用」という名目で4月5日の早朝に計上された。

ただ、カードの明細からは、いつ、どこの区間を乗車した料金なのか、細かい利用履歴が分からない。

そこで利用したいのが、QUADRAC社が提供する「Q-move」サイトだ。Q-moveでは、利用するカードのカード番号を登録するなどの会員登録作業が必要となるが、どの駅からいつ入場し、どの駅でいつ出場したのか、運賃がいくらだったのか、といった利用履歴を細かく確認できる。実際にチェックしてみたが、Q-moveでは利用状況が即時に反映されるようなので、細かな利用状況を確認はQ-moveが便利だ。

三井住友カード NLを使って4月3日に乗車したところ、4月3日の利用料金をまとめて4月5日の早朝に「交通利用」という名目で計上されたが、細かな明細はわからない

Q-moveサイトでは、カードごとに乗車日時や区間ごとの運賃など詳細な利用明細が確認できる

利便性の高さを十分に実感できた

このように、南海電鉄で始まったVisaのタッチ決済を利用した入出場の実証実験を体験してきたが、交通系ICカードと比べて致命的に遅くはないと実感できた。

朝のラッシュ時などにVisaのタッチ決済を利用する客が混ざった場合にどういった動きになるのか、といった部分などは、実証実験を通して十分に検証する必要があるだろう。とはいえ、先に紹介しているように、クレジットカードを利用する場合には事前のチャージが不要で、出場時に残高不足のため流れを止めることがなくなることから、トータルでは入出乗客の流れを妨げることにはならないはずだ。

実証実験では、運賃設定が大人運賃のみで、定期券を設定できないなどの制限はある。入出場や運賃計算などはクラウドサーバーで行なう仕様のため、やろうと思えば様々な運賃体系に対応は可能だろう。ただ、南海電鉄としても交通系ICカードを置き換えるものではなく、訪日外国人観光客などの利用をメインと考えているため、運賃体系が豊富ではなくても大きな問題とはならないはずだ。そして、実証実験を通して問題なく運用できるかどうかをしっかり確認し、新たな運賃支払い手段として早期に正式導入されることを期待したい。

なお、今回は協力企業の関係もあり、Visaのタッチ決済対応カードのみが利用可能となっているが、他のカードブランドへの対応も難しくないはず。その点も今後検証を進めてもらいたい。合わせて、今回はタイミング的に提供開始前だったため南海デジタルチケットの利用は体験できなかったので、機会があれば実際に試してみたいと思う。


クレジットソースリンク