日出学園中学校・高等学校(千葉県市川市)で、生徒の課外活動「FLYERS」が発足して6年目を迎えた。学校説明会の手伝いが当初の目的だったが、今や企業との会議やテレビ撮影のサポートにまで活動を広げてきた。好きなテーマを選んでやりたい生徒だけが集まる活動だが、大人と関わる中で将来の目標を見つけるキャリア教育の場にもなってきており、その活動は年々進化を見せている。

生徒みんなが主役の活動

FLYERSについて語る石川教諭

 顧問の石川茂教諭はFLYERSについて、「2015年に入試広報を手伝う有志の会を立ち上げたのが始まりです。学校説明会の手伝いをしてもらううちに、生徒から『もっと自分たちで何かしてみたい』という意見が出ました」と説明する。

 そこで、石川教諭はオンライン英会話のトライアルをして企業に協力する仕事を提案したという。「実際にやってみると、お金では得られない何かを得たのだと思います。もっとさまざまなことにチャレンジしたいと生徒たちから声が上がりました」

 2015年度には学校説明会の手伝いを中心に年12回の活動だったが、企業と提携する仕事が徐々に増えていき、2019年度は年32回の活動で、約3分の2が企業との仕事になった。最初は10人だったメンバーも年々増え、現在は225人が登録するなど、質、量ともに大きく発展した。

 生徒に活動への参加を呼び掛ける時は、石川教諭が学習支援クラウドサービス「Classi」で、登録しているメンバーに活動日時や内容を投稿する。参加したい生徒が「見ました」ボタンをクリックして参加を通知する。活動ごとにやりたい人だけが参加する仕組みだ。

 「生徒みんなが主役の活動です。活動ごとに参加者も変わるから、リーダーはいません」と杉浦未咲さん(中3)は話す。

 飯島悠太君(中2)も「部活や委員会と違って、規則や縛るものもない。先輩後輩もゆるい感じでつながって、気楽で居心地がいい」という。

 活動の柱である入試広報の手伝いでも、年々生徒の果たす役割が増してきている。

 森美蘭(みらん)さん(高2)は、「受験生に年が近い私たちだから、相手の立場に立って対応できます。感謝されることも多く、先日はオンライン学校説明会で、Zoomで受験生と保護者の方にお話しし、喜んでもらえました」と話す。

 杉浦さんも、「学校説明会の質問コーナーでは、入学して間もない中1には学校の雰囲気を話してもらい、高校の進学コースと特進コースの違いについては中3に話してもらうなど、メンバー全体のバランスを見ながらまわしています」と話す。

 こうした姿が注目され、今ではFLYERSの活動自体が受験生の志望動機の一つになっている。

坂井さんが携わった学校紹介のためのマンガ
坂井さんが携わった学校紹介のためのマンガ

 中1のメンバーは、「体験入学の時に、FLYERSの人が親切に案内してくれたのがうれしくて、自分も積極的に活動してみたいと思ってメンバーになりました」「学校説明会のとき、体調が悪くなった私を優しく誘導してくれて、自分もこんな人になりたいと思って入りました」と話す。

 入試広報の手伝いは受験情報誌のインタビュー協力や、学校紹介ビデオ撮影などにも広がっている。

 昨年、坂井羽成(はな)さん(中3)は、学校紹介のためのマンガの制作に関わった。「広告代理店の人と会議をして、学校のいいところを伝え、どんなタッチの絵にするか話し合いました。こうしてほしいと思ったものがそのまま出来上がって、感激しました」という。

企業の大人たちと仕事をして生徒の視野が広がる

 活動範囲は現在、テレビ、雑誌、映画、CMなどの撮影協力、企業のマーケティング協力にまで及んでいる。

 鈴木悠友(ゆうと)君(高1)は「企業の会議に初めて参加して、いい経験になりました」と話す。4月に、IT企業の広告についてのオンライン会議に参加した。「ネット広告について考えたこともなかったのですが、見てもらうためにはどうしたらいいか、考えさせられました」と言い、世の中を見る視野が広がったという。

 伴茉那さん(高2)は、ミュージックビデオとテレビの撮影が印象に残っている。「先方の希望に合わせて、カーテンを付け替え、机を違う種類のものに入れ替えて、生徒だけでセッティングしました。何げなく見ているだけでは分からない細かいところまで、こんなに気を使うんだと、驚きました」と話す。それからは、テレビや雑誌などを見ても、どれだけ多くの人の仕事が関わっているか考えるようになったという。

 石川教諭は「これはキャリア教育でもあります。私はあえて指示を出しません。すると、生徒たちの視野が広がり、自然に自ら行動していきます。大人が考えもつかないものが出てくるのです」と話す。

森さんらが考案した学校PRのための電車の車内広告
森さんらが考案した学校PRのための電車の車内広告

 説明会で活躍する森さんも、複数の学校が共同で出す電車内広告を手掛けた。「『Zoom』を使い、メンバーとリモートで話し合いをして考えたのが、QRコードをメインにした広告です」。斬新なアイデアの広告は、新京成電鉄の車内広告として、今夏、掲示される。

 森さんはさらに、クラウドファンディングを使って、生徒が作る学校案内ムックを企画している。「生徒が作ることで、生徒の率直な意見や、生徒にしか分からないところを、良い点も悪い点も含め情報発信したいのです」と目を輝かす。

 伴さんも「地域の他の学校と連携して、合同学校説明会をやりたい」と提案する。「受験生のことを考えると、併願校を何校もまわるより、1回で済むほうがいい。コロナ時代の今なら、『Zoom』でもできるので、実現しやすいのでは」と話す。

 西(にし)和花(のどか)さん(高1)と波多野亜美さん(中2)も、「ボランティアに取り組みたい」と口をそろえる。「石川先生が『失敗してもいい』と言ってくれるので、何事も全力で取り組めるのです」

 石川教諭は「失敗しても、そこから学んでプラスにすれば、失敗にはならないのです」と話す。「やりたいことは何でもやってみようと背中を押しています。だから、生徒たちにチャレンジ精神が芽生えるのです」

FLYERSの活動が生徒のスイッチを入れる

石川教諭(奥)と話し合うFLYERSのメンバー
石川教諭(奥)と話し合うFLYERSのメンバー

 FLYERSで養ったチャレンジ精神は、学校生活や進路にも現れてきたという。

 坂井さんは所属する吹奏楽部で、部活動の改善点を書き出して顧問の先生に訴えた。「自分の思いを主張したところ、新しい楽器を買ってもらえて、昨年の市川市芸術祭・文化祭では、それを生かした良い演奏ができました」と満足そうだ。

 伴さんはFLYERSの活動を通して、「いろいろな視点から世界を見ることが大事だと感じ、志望大学を変更し、英語で学ぶ大学を目指すことにしました」と話す。

 生徒のこうした成長に、石川教諭は目を細める。「これまで自分で限界を決めてしまう生徒が少なくなかったのですが、大学入試でもチャレンジしようという機運が出てきました。FLYERSの活動を面接でプレゼンして、AO入試に合格した生徒もいます」

 石川教諭が印象に残っているのは、2年前に卒業した生徒だ。「中1の時は勉強ができなくて、高校へ内部進学できるか心配しました。それが、FLYERSの活動を始めたら急にスイッチが入った。どんどん成績が上がって、東京大学に現役合格しました」

 今年度もFLYERSはさまざまな活躍を見せている。休校中だった4月から5月はオンラインで、6月からは通常通り顔合わせして、毎週のように企業の会議や広告の作成、受験情報メディアの取材などに取り組んでいる。

 石川教諭は「今年度も30以上の活動を見込んでいます。活動する生徒たちはお互いを褒め合い、意識を高め合っています」と語る。これから一体どんな進化を見せるのか楽しみだ。

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:日出学園中学校・高等学校)

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