【論説】国土交通省が先週発表した公示地価(2021年1月1日時点)によると、全用途の全国平均が6年ぶり、商業地は7年ぶり、住宅地も5年ぶりに下落に転じるなど、上昇基調の腰折れが鮮明になった。地価は地域経済の活力を測るバロメーターとされ、新型コロナウイルス禍により痛手を被った格好だ。

 とりわけ、都市部を中心に訪日客の蒸発に加え、外出自粛などの影響で、繁華街や観光地の客足が落ち込み、店舗やホテルの需要が大きく減退した。雇用環境の悪化や賃金の切り下げで住宅の購入を控える動きも響いたとされる。

 商業地の全国平均の下落率は0・8%で、大阪圏1・8%、名古屋圏1・7%、東京圏1・0%と三大都市圏に深刻な影響を及ぼした。特に訪日客が多く利用した大阪・道頓堀、歓楽街の東京・歌舞伎町、接待を伴う飲食店のある東京・銀座などの下落が目立っている。

 一方、日常生活に欠かせない店舗などがある地域やオフィスやマンションの需要がある地域、さらには再開発やインフラ整備があった地点などでは上昇した。札幌や仙台、広島、福岡の地方4市では上昇幅が縮小したものの、引き続きアップしている。

 福井県内でも商業地の下落幅が11年ぶりに拡大するなどコロナ禍の影響は否めない。ただ、北陸新幹線開業への期待感から福井市が4年連続で上昇、敦賀市は2年連続の横ばい、JR北陸線の芦原温泉駅周辺の住宅地が県内トップの上昇率となるなど「新幹線効果」が表れ始めているという。

 加えて、コロナの直撃で、より良い住まいを求めて移住する人が増えてきているとされ、こうした動きを県内にも取り込み活路としたい。テレワークの普及もあり、東京都は今年1月まで7カ月連続で転出者が転入者を上回る「転出超過」にあり、東京一極集中の是正にもつながる。

 ただ、今のところ別荘地として知られる長野県軽井沢町や静岡県熱海市の需要が高いなど、新幹線の駅があり東京への通勤も便利な点が人気を集めている。政府は東京の混雑解消と地方創生の観点から、継続して企業にテレワークの推進を働きかけ、自治体もシェアオフィスなど受け皿づくりを進めてもらいたい。

 地価の下落は固定資産税など地方自治体の税収減にはね返る。自治体としては地価を安定、もしくは上昇させるべく施策を推進すべきだろう。一方で所有者不明土地の解消にも努める必要がある。公共事業や民間取引に影響が出かねないからだ。今国会に提出された相続登記を義務付ける不動産登記法改正案なども熟議の上、成立させたい。


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