仕掛け次々、定着図りたい

2020年12月29日 午前7時30分

 【論説】ご当地グルメやスイーツなど「食」と連動した観光キャンペーンが、福井県越前市内で盛んに繰り広げられている。ランチを楽しんだ後は少し足を延ばして古いお寺や美術館へ―。新型コロナウイルスの影響で遠出や旅行する機会が減る中、こんな“緩い”観光プランが、今のご時世にマッチしているのかもしれない。

 旧武生市街地には50以上の寺院が残り、法事やお供え物として和菓子の需要も多いことから、老舗和菓子店もあちこちに見られる。そこに着目して市観光協会が展開したのが「テンプルスイーツ」と銘打った企画。寺院の拝観料と和菓子の引換券をセットにして販売し、年配の女性らを中心に人気を集めた。

 越前市の「3大グルメ」と称されるおろしそば、ボルガライス、中華そばをセットにして市内五つの飲食店で提供する「ひ三(み)つのごちそうセット」は、ご当地メニューを一度に味わえるとあって観光客の人気を集めた。ほかにも、通常より小ぶりなおろしそばを割安な価格で提供し、複数の店を食べ歩いてもらう「越前おろしそば三昧(ざんまい)」や、越前市生まれの絵本画家いわさきちひろが愛したイチゴのババロアを再現し、市内の洋菓子店で限定販売するキャンペーンなど、さまざまな企画を打ち出してきた。

 越前市といえば和紙や打刃物、箪笥(たんす)などモノづくりの町としてのイメージが強く、観光という分野ではいまひとつ特徴に欠けていた。市内には多くの寺院や歴史的建造物が残り、しっとりとした雰囲気の古い町並みもあり見どころは多いのに、発信が足りないのか認知度が低いように思う。

 北陸新幹線の県内延伸が迫る中、新たな観光素材の掘り起こしに向け市観光協会が仕掛けたこれら一連のキャンペーンは、越前市の豊富な食や観光地を市内外の人たちにPRする良い機会になったのではないか。

 新型コロナの影響で遠出や旅行しにくい状況が続くが、こうしたランチやデザート目的の緩い観光なら気軽に楽しめそう。地元の人たちの参加も一定数あったといい、まちなかを散策したり、あらためて観光地に足を向けたりすることで古里の魅力を再発見するきっかけになったようだ。

 おおむね好評だった食と観光の企画だが、今回は初めてという物珍しさもあったのかもしれない。市観光協はこれらの取り組みを継続させる構えで、協力してくれる飲食店などをさらに増やしていきたいという。一過性に終わらせず、市の新たな観光の方向性として定着させてほしい。


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