アート界注目の青森に誕生した、新たな文化拠点──弘前れんが倉庫美術館。

芝生の広場の中に建つカフェ・ショップ(左)と美術館(右)の2つのクラシックな建物。Photo: Naoya Hatakeyama

老朽化が進んでいたレンガの壁を最新技術で補強して、なるべくそのままの姿で利用した。Photo: Naoya Hatakeyama

近年のアートシーンで注目を浴びている青森県に、また新たな美術館が誕生した。2006年に青森市内に建てられた初の県立美術館「青森県立美術館」、08年にアートによる街づくりの一環として生まれた十和田市の「十和田市現代美術館」に続き、弘前市の歴史的な建造物をリノベーションした「弘前れんが倉庫美術館」が20年に開館。異なるタイプの3つの美術館は、ユニークな展示スタイルで現代アートを中心とするコレクションを披露している。

2020年7月11日にグランドオープンしたばかりの「弘前れんが倉庫美術館」は、明治から大正にかけて建てられ、街のシンボルとして市民に愛されてきた古いシードル工場「吉野町煉瓦倉庫」を改修したもの。エストニア国立博物館の建築設計で脚光を浴び、世界的に活躍する田根剛が、国内で初めて手がけた美術館だ。

街のシンボルのシードル工場が美術館に転身。

美術関連書や郷土に関する図書を揃えたライブラリー。撮影: 小山田邦哉

⼩沢剛がこの展覧会のために新たに制作。《帰って来たS.T.》(部分)2020 年

コンセプトは「記憶の継承」。100年の歴史を持つレンガ倉庫の壁を活かしながら、新しいのにどこか懐かしさを感じる美術館を作り上げた。シードル工場だったことにちなみ、老朽化した屋根は1万3000枚の“シードル・ゴールド”の特注チタン製プレートに葺き替え、カフェ・ショップ棟には工房を設置し、由緒ある場所でシードルの醸造も復活させた。

館内では、高さ約15メートルの大型展示空間などで、国内外のコンテンポラリーアートを紹介するとともに、弘前や東北地方の歴史、文化と向き合う作品などを展示。また、市民が自由に集える場所としてスタジオやライブラリーも備える。奈良美智や潘逸舟など8人のアーティストによるオープニング記念展に続き、2020年10月10日から来年3月21日までは、「小沢剛展」を開催。近現代の人物を題材にした絵画、映像、音楽で構成されるインスタレーションで注目の小沢剛が、弘前生まれの劇作家・寺山修司を題材にした新作『帰って来たS.T.』は必見だ。

弘前れんが倉庫美術館
青森県弘前市吉野町2-1
Tel./0172-32-8950
料金/観覧料 一般1,300円、学生1,000円(高校生以下無料)(2020年10月〜2021年3月31日まで)
https://www.hirosaki-moca.jp/

アートが街と一体になる開かれた展示──十和田市現代美術館。

建築家・西沢立衛は、美術館の活動が街と連続するようにと開放的な建物を設計。

見る角度によってさまざまな表情を見せる。ロン・ミュエク作《スタンディング・ウーマン》

草間彌生ワールドが十和田の街の風景に溶け込む。《愛はとこしえ十和田でうたう》

「十和田現代美術館」は、十和田湖や奥入瀬渓流で知られる十和田市の街づくりプロジェクト「Arts Towada」の中核施設。作品ごとに独立した展示室がガラスの通路でつながれ、来館者はまるで街の中を散策するように展示室を巡るというユニークな美術館だ。作品のほとんどは大型のインスタレーションで、展示室の中だけでなく、敷地内のさまざまな場所にも展示されている。

この美術館のために国内外のアーティストによって作られた、コミッションワークと呼ばれる作品38点が常設展示されている。オーストラリア出身のアーティスト、ロン・ミュエクによる巨大な女性像『スタンディング・ウーマン』、肩車をした無数の人間が連なり、シャンデリアのようになった韓国出身スゥ・ドーホーの『コーズ・アンド・エフェクト』、美術館の向かいのアート広場に設置された、ポップなカボチャ、キノコ、犬などが並ぶ草間彌生作の『愛はとこしえ十和田でうたう』など見どころは満載だ。

十和田現代美術館
青森県十和田市西二番町10-9
Tel./0176-20-1127
料金/大人1200円(企画展がない場合は520円)、高校生以下無料(2020年10月現在)
https://towadaartcenter.com/

古代遺跡に隣接し、青森から世界へ発信──青森県立美術館。

館内のサインには、水平・垂直・斜め45度の直線だけのシンプルなオリジナルフォントを使用。

青森県の「a」と森を表す「木」をデザインしたシンボルマークのネオンサイン。

無料休憩スペースとして活用されている吹き抜けの空間「コミュニティホール」。

2006年にいち早くオープンし、青森のアートシーンを牽引しているのが「青森県立美術館」。日本最大級の縄文遺跡・三内丸山遺跡の隣に、約43万個の白いレンガを手積みして造った、現代を表現する白いモダンな建物が特徴的だ。設計はルイ・ヴィトン 表参道店などを手掛けた青木淳が担当した。他にも、水平・垂直・斜め45度の直線で構成されたオリジナル文字フォントによる館内のピクトグラム(案内サイン)、美術館のシンボルマークをかたどった222個のネオンサインなど、細かなところにもこだわり、建物全体でアートを表現している。

見どころは、現在マルク・シャガールによるバレエ『アレコ』の背景画4作品が展示されている巨大なアレコホール。 1枚あたり縦9m、横15mもの大作を展示するために特別に作られた。1点は米フィラデルフィア美術館の所有だが、当館に長期貸し出しされており、現在は4点揃った形で見られる。また、青森県出身の現代アーティスト、奈良美智の常設展示も見逃せない。美術館の代表的な作品になっている高さ8.5mの彫像『あおもり犬』のほか、常時30点以上の作品が鑑賞できる。

青森県立美術館
青森市安田字近野185
Tel./017-783-3000
料金/観覧料(常設展示)一般510円、大学生・高校生300円、中学生・小学生100円など(2020年10月現在)
http://www.aomori-museum.jp/

Text: Yuka Kumano

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