
東北地方は海外の有力旅行サイトで最近、非常に評価が高まっています。東北6県をカバーする総・支局長と東北統括本部のメンバーらがみちのく路を歩き、味わい、東北愛たっぷりのコラム「We Love みちのく」をオンラインで随時お届けします。
被災地・山行・歴史舞台…欲張りな1週間
東北総局長 池辺 英俊
この夏、欲張りな私は欲張りな旅をした。1週間の東北縦断、車の旅だ。
日々決まったスケジュールで団体行動するパックツアー、単独自由行動のバックパッカー。いずれも経験済みだが、今回はその中間をとり、泊まりたい宿とレンタカーのみ事前予約した。

「有名観光地巡りだけでなく、記者の端くれとして東日本大震災の被災地を見たい。山好きとしてはトレッキングもしたい。歴史小説ファンとして歴史スポットも外せない」
こんな欲張りな望みをかなえるには、オリジナルのプランを立てるしかない。行きたい場所、食べたいお店、大好きな温泉が充実した宿をピックアップし、それを日程に落とした。
今年2月に東京から仙台に転勤した私。当初、新青森駅まで新幹線で行き、レンタカーで南下するプランを考えた。が、借りた車を出発地と違う営業所で返す「乗り捨て」は多額の出費になることが判明。新幹線代とあわせるとさらにもったいない。そこで仙台―青森間を別ルートで往復ドライブすることにした。
前沢牛の握り…上質の極みにうっとり

出発は仙台宮城IC。細長い東北は南北に走る東北道が大動脈で、旅の主軸ルートにもなる。ここから太平洋、日本海、いずれに行くかで旅の
腹が減っては戦は出来ぬ。車で約1時間半、最高級牛肉の聖地、前沢着。前沢牛の握りを「オガタ」で堪能。バーナーで軽くあぶっているそうだが、上質なほぼナマ肉の食感に思わず目をつむり、「うーん、うまい」とうなる。充電完了。すぐ近くの平泉へ。
雨の平泉、時を超えてたたずむ芭蕉
「五月雨の降り残してや光堂」

松尾芭蕉の句さながらに雨が降る中、長い参道の月見坂を上る。静寂の中、沿道に並ぶ高い老杉と雨空を見上げていると、平安期の奥州藤原氏、江戸期の芭蕉、令和の今と、時代を超えて変わらぬ何かに触れたような、不思議な思いにとらわれる。
中尊寺金色堂内は撮影禁止。目に焼き付ける。五月雨もこの光堂にだけは降らずに残してくれたかのようだと、その美しさをたたえた芭蕉。その像は金色堂そばで雨に打たれてひっそりたたずんでいた。
翌朝は一転、群青の空。岩手山がその雄姿を現し、歓迎してくれた。
(今回の池辺総局長のコラムは計3回で、次回は15日に掲載予定です)
【東北縦断の旅・主な行程】
1日目 仙台市→奥州市前沢→平泉町→奥州市水沢→アクティブリゾーツ岩手八幡平(八幡平市)泊
2日目 八幡平市→鶴田町・鶴の舞橋→星野リゾート奥入瀬渓流ホテル(十和田市)泊
3日目 奥入瀬→十和田湖→つなぎ温泉ホテル紫苑泊(盛岡市)
4日目 盛岡市→宮古市→釜石市→大船渡温泉泊(大船渡市)
5日目 陸前高田市→気仙沼市→銀山温泉・銀山荘泊(尾花沢市)
6日目 山形市→仙台市
政治記者歴20年、富士登頂9回

いけべ・ひでとし 1966年4月、東京・渋谷生まれ。福岡で青春時代を過ごす。90年、読売新聞東京本社に「バブル入社」。甲府支局で記者生活スタート。その後、政治部に約20年間在籍。首相や外相、自民党幹事長同行の外遊は30回を超える。急性骨髄性白血病の闘病・移植治療を経て、2020年2月に東北総局長として初のみちのく赴任。奥深い自然や文化、人々のあたたかさに感銘を受け、週末ごとに東北各地を巡っている。趣味は、山登り(特に富士山は9回登頂し、著作もあり)、ゴルフ(110番。たまに100切り)、読書(主に歴史小説。最近、宮城を舞台にした山本周五郎「樅ノ木は残った」を読破)。
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