今日8日の自民党総裁選告示を前に、大本命の菅義偉官房長官(71)の出身地・秋田県は「秋田から初の総理を」と空前の盛り上がりを見せている。しかし、菅氏が下馬評通り総裁選を制し、臨時国会で首相に指名されても、首相官邸のホームページでは「神奈川県出身」と記載されることが分かった。

予備投票せずに3票すべてを菅氏に投じる方針を固めた自民党秋田県連は大ショックを受けている。

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自民党秋田県連の鶴田有司副会長(元県議会議長)は「出馬表明のときも『雪深い秋田の農家の長男に生まれ』とはっきり言ってました。県連大会には必ず来てもらっているし、4日の常任総務会では『菅さんに3票すべてやるべきだ』という声が圧倒的でした。県民の期待の表れですよ。秋田出身は間違いないのに、神奈川出身ですか。それはホームページ(HP)を直してもらわないと…」と声を上げた。

菅氏が首相になっても「初の秋田出身」ではなく、小泉純一郎氏以来「3人目の神奈川出身」となるのは、官邸HPが「戦前は『出生地』。戦後は『選挙区』」を出身地の原則としているためだ。内閣広報室は「戦前は選挙で選ばれていない方もいるため出生地に、戦後は選挙で選ばれているので選挙区にしたと考えられるが、詳しい経緯は分からない。ただ仮に菅官房長官が総理になれば、出身地は原則通り神奈川になります」と説明する。

政治の世襲が進み、出生地とHPの出身地が異なる首相が相次いでいる。細川護熙、羽田孜、橋本龍太郎、安倍晋三、鳩山由紀夫の各首相はすべて東京生まれだが、熊本、長野、岡山、山口、北海道になっている。菅氏のように地方から逆に首都圏に移る例は珍しく、山口県宇部市で17歳まで生まれ育ちながら出身が東京となっている菅直人氏以来になる。

菅元首相は本紙の取材に「どこの出身ですかと言われれば、山口です。出身とは生まれ故郷のことで、私は宇部の水で育ちました」と答える。しかし、山口県は、安倍首相の在職日数が歴代最長となった昨年、県庁1階エントランスホールで「山口県の総理大臣展」を開催したが、展示されたのは伊藤博文、山県有朋、桂太郎、寺内正毅、田中義一、岸信介、佐藤栄作、安倍晋三の8氏で、菅元首相はなかった。山口県政策企画課は「官邸のHPの区分に従った」と話す。

政策企画課は「秋田県は秋田県で判断すればいいのでは」というが、中央に従い、前例に従うのが地方。秋田県民が「おらが首相」と堂々とうたうには、菅氏にまずHPにメスを入れてもらう必要がありそうだ。【中嶋文明】

<首相の出身地>

◆最多 官邸HPの区分では最も首相を輩出しているのは山口県で8人。実際の出生地でカウントすると、東京都が7人増えて計12人となり、山口県と逆転する。

◆薩摩 明治維新の中心となった薩長は、山口県が戦前5人、戦後3人、首相を輩出しているのに対し、鹿児島県は1924年(大13)に退陣した山本権兵衛を最後に100年近く出ていない。

◆東北 戊辰戦争で反維新政府側に回った諸藩が多かったためか、岩手県(4人)を除く5県は首相空白県になっている。空白県は全国に19あるが、地方別では東北が最も多い。


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