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東日本大震災で津波の被害を受けたものの、その後豊かな生態系が形成され、環境省の重要湿地にも選ばれている岩手県陸前高田市の干潟で市が行っている残土の埋め立てによって、貴重な生態系が失われるおそれがあるとして、専門家らのグループが埋め立てを一時中止し、残土処理の方法を再検討するよう要望を行うことになりました。

埋め立ての工事が行われているのは「奇跡の一本松」で知られる岩手県陸前高田市の広田湾にある「小友浦」と呼ばれる干潟です。

昭和40年代に干潟だった場所が干拓された後、東日本大震災の津波の影響で堤防が崩れて再び干潟となり、希少種の貝なども確認されるようになっていて、平成28年には環境省の「重要湿地」にも選ばれています。

この干潟で、先月下旬から陸前高田市が震災復興工事に伴って発生した残土、5万4000立方メートルを埋め立てる工事を進めています。

市によりますと、埋め立てた場所は将来的にスロープ状にならして砂をかぶせて干潟を再生する計画だということです。

底生生物の専門家で作る日本ベントス学会の自然環境保全委員会は、残土で埋め立てる今の方法では現在ある干潟の生態系が失われてしまうとして、埋め立てを一時中止し、残土処理の方法を再検討して干潟と生物を守るよう市に対して要望書を提出することを決めました。

現地で調査を行ってきた岩手医科大学の松政正俊教授は「生物の種類が多い場所はすでに埋め立てられ、震災後10年間の生き物の歴史は白紙に戻されてしまった。

元どおりになるかどうかわからないし、なったとしても時間がかかることを理解したうえで将来設計を考え直すべきだ。

復興工事では、はからずも重要な自然環境が失われるケースがあり、生物多様性の視点を入れてほしい」と指摘しています。

これに対して陸前高田市水産課の菅野泰浩課長は「干潟の再生になればとの住民からの意見も受けて、市としても生物に配慮しながら工事しているつもりだが、今回のような指摘もあることからできる範囲の中で専門家の意見を聞きながら工事を進めていきたい」と話しています。

専門家「多様性高い干潟の価値認識してほしい」

「小友浦」では、震災後の環境の変化について環境省の調査の一環として岩手医科大学や東北大学、それに国立環境研究所などの研究グループが調査を行ってきました。

その結果、カニや貝など干潟に住む生物の種類は平成25年には49種だったのが、平成26年には56種、平成27年と28年には60種、平成29年には84種、平成30年には88種と年々増加していることがわかり、これまでに161種が確認されていました。

中には「バルスアナジャコ」と呼ばれる岩手県では小友浦だけに生息するシャコのほか、環境省のレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されている「ウネナシトマヤガイ」や「オオノガイ」といった貝など多種多様な生き物の生息が確認されていました。

調査を行ってきた岩手医科大学の松政正俊教授は「三陸地方には大きな干潟がなく、防潮堤などの工事が進む中、残された場所は非常に貴重で、特に小友浦は広くないが生態系の多様性が高く、周辺の環境にも良い影響を与えていた。そうした干潟の価値を認識してほしい」と指摘しています。

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