衆院の「1票の格差」を是正するため定数1減が確定した宮城、福島両県で、政党や行政の関係者が区割りの見直しに神経をとがらせている。候補者調整や選挙戦略の練り直しが避けられない上、選挙区の一部は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興途上にある。関係者は「格差是正を優先するあまり、地方の声が国政へ届きにくくなるのでは」と不安視する。




地域事情に配慮望む声

 2020年国勢調査の確定値に基づく総務省の試算によると、22年夏以降の衆院選で都道府県の定数は全国で「10増10減」となり、宮城は6から5、福島は5から4に減る。

 宮城、福島の選挙区別の人口、1票の格差は表の通り。人口や地域事情などから宮城は4~6区、福島は3、4区を中心に区割りが見直される可能性がある。

 10月の衆院選で宮城4、6区は自民党の伊藤信太郎氏と小野寺五典氏、5区は立憲民主党の安住淳氏が当選した。3人はいずれも国政経験が長く、支持基盤が厚い。

 伊藤氏の陣営幹部は「再編は5、6区を中心に4区で調整するだろう」と予想しつつ、「昔から地盤にしている加美郡や黒川郡が持っていかれるかもしれない」と気をもむ。

 小野寺氏を支持する首長の一人は「地方の実情が反映されない変更には反対。どうしても変えるなら、4~6区を水産業主体の海側、農業主体の内陸部で縦に割る方がいい」と訴える。

 震災で大きな被害を受けた石巻地方を抱える5区は、前回17年の区割り改定で4区の松島、大郷両町と6区の南三陸町が編入された。立民県連幹部は「4区は党の地方議員がまだ少なく、区割りによっては協力者を探す必要があるだろう。自民の現職と競う可能性のある次も大変な戦いになる」と警戒する。

 再編に翻弄(ほんろう)される4~6区の有権者の間では「数合わせで切り捨てられた」「投票先を真剣に選ぶ気になれない」といった不満がくすぶる。県北の市議は「人口減少に苦しむ地域の代表が減れば、都市との格差が一層広がる」と懸念し、地方再生に配慮した選挙区制度への改善を提言する。

 福島は今回、全5選挙区で与野党の一騎打ちとなり、立民が1、3、4区を、自民が2、5区を制した。

 3区で10選された立民の玄葉光一郎氏は「区割りが変わるので一つの節目というのを感じた」と冷静に受け止める。比例復活した自民の上杉謙太郎氏は区割りの見直しについて「原発事故に伴う避難による本県の人口減は見逃せない要素だ」と熟慮を求める。

 会津地方を中心とする4区。前回の改定で3区から西郷村が加わったが、現行の最少選挙区との格差は1・006倍。全国289選挙区で石川3区(1・003倍)、鳥取1区(1・004倍)に次いで小さい。

 連合福島の関係者は「単純に人口を見て区割りを見直す可能性もあるが、福島には第1原発にたまる処理水の問題や文化圏の違いといった事情がある。全県的に変わることもあり得るのではないか」と推測する。




比例東北も「1減」 自民、コスタリカ制導入案も

 「1票の格差」是正を巡る衆院の定数変更は比例代表にも及ぶ。全国で「3増3減」となり、東北ブロックは13から12に減る。議席争いは一層激しさを増すとみられ、東北の政界関係者に波紋が広がっている。

 10月の衆院選で、比例東北は自民党が6議席、立憲民主党が4議席を獲得。比例東北を主戦場とする公明と共産両党は各1議席で、日本維新の会が初めて1議席を得た。

 自民は2017年の前回選で、選挙のたびに小選挙区と比例の候補者を入れ替える「コスタリカ方式」を青森県で導入した。次回以降は小選挙区の定数が減る宮城、福島両県にも適用する案が取り沙汰される。

 公明は定数が14だった14年の前々回に初の2議席を確保したが、前回以降は1議席にとどまる。公明宮城県本部の伊藤和博副代表は「地方の声をより多く国政に反映させるため、今回は2議席を確保し、次への足掛かりとしなければいけなかった。定数がさらに減るのは大きな壁になる」と厳しく受け止める。

 公明はこれまで、東北の小選挙区に候補者を立てず、連立を組む自民候補を支援する姿勢を取ってきた。比例の定数が減少傾向にあり、「比例に加え、都市部など小選挙区の候補擁立も選択肢としてあり得るのでは」(東北の公明地方議員)との見方も出ている。

 比例の定数減について、共産宮城県委員会の中島康博委員長は「多様な地方の声を拾いにくく、大都市に偏重する問題がある」と批判する。

 共産は今回、宮城の全6小選挙区で立民と候補者を一本化。4、6区に立てて比例票の掘り起こしを狙ったが、7万5796票と目標の14万票には及ばなかった。中島氏は「比例で2議席を獲得する目標は変わらないが、相当頑張らないといけない。立民と選挙協力する方針は大事にしながら、比例で勝てるような組織の在り方を探求しなければならない」と話す。

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