東北有数の温泉地を抱える花巻市が、新型コロナウイルスの感染拡大防止と並行させながら独自に展開する地元経済への支援策が成果を上げている。岩手県民や市民対象の宿泊助成を継続実施し、他地域に比べて来客数の減少を抑制。地場店舗にはスマートフォン決済を使ったキャンペーンで圏域内の消費を喚起し、売り上げ向上を後押しする。
(北上支局・野仲敏勝)



大型連休も多くの県内客らでにぎわった花巻市内の温泉地=5日

コロナ前の66%

 宿泊助成は昨年6月に開始し、県内市町村では唯一、切れ目なく続ける。国、県の支援策や宿泊実績を考慮し、助成額を1泊最大2000~4000円の間で柔軟に変動させている。

 昨年12月末に政府の観光支援事業「Go To トラベル」が停止して宿泊者が激減した際は、助成額を2月途中に4000円に引き上げ、県民の利用を促した。

 感染症のまん延防止との両立も目指し、県内初の感染者が確認された直後の昨年8月は、助成対象を市民に絞って警戒した。

 こうした支援の成果で、対象37施設の宿泊実績は昨年7~3月の合計で約41万人。コロナ前の同期(2019年1~3月、7~12月)に比べ、66%で踏みとどまっている。

 日本旅館協会東北支部連合会の調査でも、3月の宿泊人員(19年比)は6県平均44・2%に対し、花巻地区は75・7%と善戦する。花巻温泉郷観光推進協議会の高田貞一会長(大沢温泉社長)は「市の応援は心強い」と感謝する。

 市では新型コロナ対策に使える国の地方創生臨時交付金などから9億4500万円を投入し、温泉対策に重点を置く。市観光課の藤井淳課長は「食材、土産、クリーニングなど関連業種が幅広い。温泉施設が動くことで市内の経済が回る」と強調する。

ペイペイ還元に2億円支出

 地場店舗向けの対策としては、スマートフォン決済のペイペイを使った20%還元キャンペーンをいち早く実施。昨年12~3月の第2弾では、市内1075店で計11億6200万円の売り上げにつながった。

 市内に本社を置く中小企業と個人事業主の店舗を対象とし、飲食業をはじめ、本や文具、自転車、おもちゃ、ガソリンスタンド、食品、理美容、服飾など幅広い業種で活用された。
 市内の美容室「バニラビーンズ」の渡辺珠美オーナーは「盛岡の美容室に通っていた市内の人のほか、市外からも新規客が来てくれた。地元のお店を知ってもらう良い機会。またやってほしい」と期待する。
 
 還元費用として市は1億9800万円を負担する。上田東一市長は「2億円の給付金を事業者に直接出すより、経済効果は大きかった。売り上げの向上に結び付いており、8月以降に第3弾の実施を検討している」と手応えを話す。

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