新型コロナウイルス感染症に端を発したリモートワークへの対応などの働き方改革、水害や地震など頻発するの災害への備えなど、多くの企業でIT 環境の再考が求められている。その拠点となるデータセンターには堅牢性や安定性が求められることは従来と変わりはないが、さらに近年では大容量電力やより広帯域の通信回線への対応が求められるケースも増えてきた。こうした条件を満たすデータセンターを検討する際の候補となるのが、電力系データセンター事業者だ。 text:小山健治

電力系データセンター事業者とは

 電力系データセンター事業者とは文字どおり各地域の電力会社を母体とするデータセンター事業者であるが、そこには大きく2つの業態がある。電力系通信事業者が運営しているデータセンターと、電力会社の出資によるデータセンター事業者だ。

 電力系通信事業者は1985年の通信自由化を機に相次いで設立されたもので、現在は各地域の電力系通信事業者10社がPNJ(Power Nets Japan)グループを構成し、主要都市を光ファイバーで結んだ全国ネットワークを実現している。

電力系通信事業者が提供するデータセンターサービス

 まずはPNJグループに参加している電力系通信事業者について、データセンター事業の概要をみてみよう。

北海道総合通信網(HOTnet)

https://www.hotnet.co.jp/

 北海道電力が出資する電力系通信事業者で、札幌を拠点にホスティング、プライベートクラウド、システム構築・運用支援などのサービスを提供する都市型データセンター「S.T.E.P 札幌データセンター」を運営している。もともと北海道は台風が接近する回数が少ないことに加え、データセンターの所在地も地震や津波、火山に噴火、水害などの影響が少ない場所を厳選するなど、災害発生時のリスクの低さを前面に打ち出している。

 首都圏から札幌まで直線距離で約800km離れていることもデメリットではなく、逆に大きな強みとなる。東京~札幌間を二重化された20Gbpsの事業用ネットワークで接続するほか、東京都内にアクセスポイントを構えており、HOTnetが提供する各種ネットワークサービスやクラウドサービスはもとより、他社クラウドとのスムーズな連携も実現。BCP(業務継続継続)におけるリスク分散のためのバックアップ拠点としてもS.T.E.P 札幌データセンターは注目されている。

東北インテリジェント通信(TOHKnet)

https://www.tohknet.co.jp/

 東北電力が出資する電力系通信事業者で、2012年に導入した企業ブランドTOHKnet(トークネット)のもと、「仙台中央データセンター」を運営している。JR仙台駅から徒歩圏内に立地する都市型データセンターだ。

 安心の電源供給システム、効率的な空調システム、堅牢なセキュリティシステム、環境配慮型の設計、火災対策を誇り、地方公共団体間の行政専用ネットワークである総合行政ネットワーク(LGWAN:Local Government Wide Area Network)におけるASP関連のファシリティ提供者としての資格審査を受け、「LGWAN-ASPファシリティサービス提供事業者」として登録されている。

 仙台中央データセンターは2011年3月の東日本大震災において震度6弱の地震に襲われたが、建物に被害は受けることなくサービスを継続し、ファシリティの堅牢性が証明された。事後に建設会社が実施したヒアリング調査でも、建物の制震構造が効果的に働き棚からの落下などもほとんど見られなかったことが報告されている。

KDDI

https://www.kddi.com/

 東京電力が出資する電力系通信事業者として設立された東京通信ネットワーク(TTNet)がパワードコムを経て2006年にKDDIに吸収合併されることとなり、データセンター事業もKDDIに統合された。現在、KDDIが運営しているデータセンターでは、大きく2つのサービスを提供している。

 1つは「国内データセンターサービス」だ。コロケーションサービス (スペース貸し/ラック貸し/ケージ貸し/個室貸し、電源・空調設備などのインフラとネットワーク運用・監視・保守)はもとより、マネージドサービスやセキュリティサービス、さらに「KDDI Wide Area Virtual Switch 2」をはじめとするネットワークサービスなど、付加価値の高いソリューションをトータルに提供している。

 もう1つが「KDDI DNSホスティングサービス」だ。専門知識とともに多大なコストが必要となるDNSサーバーの構築・運用・セキュリティ対策を代行するもので、例えば「KDDI DNSホスティングサービス」では、正引き、逆引きに対応したDNSホスティングサービスを提供している。

中部テレコミュニケーション(CTC)

https://www.ctc.co.jp/

 中部電力が出資する電力系通信事業者として設立され、現在はKDDIが80%超の出資比率を占めている。

 CTCでは法人向けサービスの拠点として名古屋中心部に3つのデータセンターを擁しているのが、その中で最新かつ最大の規模を誇るのが、都心型ハイスペックデータセンター「データセンター名古屋丸の内」である。最寄駅より徒歩2分の「抜群のロケーション」、震度6強の耐震レベルを備えた「最高水準の耐災害性」、3回線のスポットネットワーク受電が可能な「高信頼の電源設備」、最大20kVA/ラックの高集積サーバーに対応した「大容量電源」、機器を安全に管理する「高効率な空調設備」、自営光ファイバーでマルチキャリアに対応した「高品質・大容量ネットワーク」、生体認証・監視カメラ・共連れ防止セキュリティゲートによる24時間365日有人監視の「厳重なセキュリティ」の7つの特徴を前面に打ち出している。

北陸通信ネットワーク(HTNet)

https://www.htnet.co.jp/

 北陸電力が出資する電力系通信事業者で、1993年の設立以来、北陸全域をカバーする光ファイバーネットワークを基盤に万全の運用・保守・監視体制のもと、セキュリティーが確保された、高品質で信頼性の高い通信サービスの提供に取り組んできた。

 この「ヒカリを価値あるカタチに」という企業理念のもと、石川県金沢市と富山県富山市の両市においてデータセンターを運営している。

 金沢市のデータセンターは複数用途の単一テナント、富山市のデータセンターは専用建物と建物形態に違いはあるが、どちらも自然災害リスクが極めて少ない北陸地区に立地しており、通信ケーブルを異ルートで冗長化した高品質な通信環境を提供している。

 電源についても2系統受電(本線予備線受電方式)を採用し、並列冗長方式(N+1構成)のUPS、非常用のガスタービン発電機(N+1)を備えるなど高い耐災害性を誇っている。

オプテージ

https://optage.co.jp/

 旧社名はケイ・オプティコム。2019年4月に関西電力および情報通信グループ会社の組織再編により、関電システムソリューションズが保有する情報通信インフラや企業・自治体向け情報システム開発機能を移管し、オプテージとしてスタートを切った。

 大阪駅や新大阪駅からタクシーで10分の梅田北データセンター、大阪市営地下鉄最寄り駅から徒歩2分の心斎橋データセンターなどの都市型データセンターを運営し、ハウジングサービス、マネージドサービス、ホスティングサービスを提供している。

 両データセンターとも、電力会社のノウハウを活かした特別高圧22kVの3回線スポットネットワーク受電により電源の供給信頼度を確保。さらに複数台の非常用発電機とCVCF(無停電電源装置)により無停電電源を供給している。

エネルギア・コミュニケーションズ(エネコム)

https://www.enecom.co.jp/

 中国電力が出資する電力系通信事業者で、「EneWings広島データセンター」を拠点にハウジングサービスとマネージドサービスを組み合わせたサービスを提供している。

 震度7クラスの地震にも対応できる国内最高水準の建物基礎免震構造で建てられた「ファシリティ」、2つの変電所からそれぞれ別ルートにより特別高圧で受電する安心・安定の「電力供給」、併設されたサービスオペレーションセンターから通信回線とサーバーなどの設備を一元監視し、スピーディな連絡体制で万一のトラブル時の早期復旧を可能とする「安心サポート」、通信ネットワークを含めた信頼性の高いサービスをワンストップで提供することで実現する「コスト削減」、ICカード認証や生体認証、共連れ防止装置などを駆使した7段階の厳重な「セキュリティ」、広島駅から徒歩数分のアクセスしやすい抜群のロケーションを生かした「利便性」をキーファクターとする。

STNet

https://www.stnet.co.jp/

 四国電力が出資する電力系通信事業者で、「Powerico(パワリコ)」および「松山データセンター」を中心とする四国内のデータセンターからハウジングサービスやネットワークサービス、マネージドサービスなどを提供。地方データセンターにありがちなバックアップ拠点としてだけではなく、ミッションクリティカルなシステムを運用するメインセンターとしても企業や自治体のニーズにも応えている。

 Powericoでは1ラックあたり最大21kVAの高い電源供給力を有しており、IT機器の収容効率を向上することでコスト削減に貢献する。また、「購入時期や償却の関係からすべてのIT資産をクラウドにするのは難しい」といった要望に対して、Powerico内でハウジングとクラウドのハイブリッド構成を提案している。

 同様に松山データセンターも、システムの安定稼動に不可欠な電気・空調などの供給設備を備えるとともに、情報漏洩などを防止する万全のセキュリティ対策や災害対策を施したデータセンターとなっている。

QTnet

https://www.qtnet.co.jp/

 九州電力が出資する電力系通信事業者で、「福岡第1データセンター」、「福岡第2データセンター」、「福岡第3データセンター」の3つの拠点から、「QT PRO データセンターサービス」を提供している。

 安定したサービス提供の実績と万全のサポート体制、主要都市から好アクセスな環境、安心・安全な立地環境、建物免震構造をはじめとする高信頼ファシリティがその特徴だ。システム構築に必要なサーバー設置環境ならびにQTnet回線など複数の通信事業者との接続環境を提供。大手ベンダーが提供するパブリッククラウドとの接続ポイントも整えており、九州から関東エリアへのコネクトポイントとしても利用できる。

 サービスメニューとしては、ハウジングサービスおよびコロケーションサービスを基本サービスとするほか、オプションサービスとしてマネージドサービス、ネットワークサービスを用意している。

沖縄通信ネットワーク(OTNet)

https://www.otnet.co.jp/

 沖縄電力のほか沖縄セルラー電話、琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行などが出資する通信事業者で、データセンターサービスとしてはホスティングサービスおよびレンタルサーバーのみを提供している。

 ホスティングサービスは月額2,000円から利用可能な低コストがメリットだ。レンタルサーバーについては共用サーバーの「ビジネスセレクトPlus」のほか、専用サーバーの「ビジネスプレミアム」を提供している。

 ビジネスプレミアムの上位サービスである「ゴールド」では、OTNetの技術管理者がroot権限の委託を受けて運用・管理を代行する。ハードウェア保守やネットワーク管理はもとより、OSやソフトウェアのアップデートもOTNet側で行うため、サーバー管理の知識がなくても安心して専用サーバーを利用できる。

多様な業態で地域に根差す電力系データセンター事業者

 そのほかにも電力会社の出資によるさまざまなデータセンター事業者が、各地域でサービスを提供している。

ほくでん情報テクノロジー(H-IX)

https://www.hokuden-it.co.jp/

 北海道電力グループの一員として、札幌市において「H-IXデータセンター」を運営。電源は、異なる変電所からの高圧2系統受電、多重化された無停電電源装置、非常用発電装置を完備し、安定した電源を提供している。加えて効果的な冷却システムの構築と排熱効率の高いフロア設計により、サーバーの安定運用と高密度化に対応。ミッションクリティカルなIT拠点としてのポテンシャルを高め、ディザスタリカバリーサイト構築やクラウドへのアクセス運用をはじめとする多様なニーズに応えている。また、生体認証とICカードによる入退室管理システム、24時間365日の有人監視などのセキュリティ体制を整えている。

 こうした堅牢なファシリティと厳重なセキュリティのもとで提供するハウジングサービスには、運用支援サービス、インターネット接続サービス、セキュリティサービスなどのオプションも用意されている。コロケーションサービスでは、ラックの持込みやケージの設置なども可能となっている。

アット東京

https://www.attokyo.co.jp/

 セコムを筆頭株主として、東京電力パワーグリッドとインテックが出資するデータセンター事業者である。

 東京と大阪に計6か所設置されたデータセンターは、世界最高クラスの堅牢なファシリティを備え、多重化電源系統および熟練したエンジニアによる24時間365日のミッションクリティカルな運用、厳重な監視体制と多重化されたセキュリティを特徴とする。

 さらに、クラウド活用の際のネットワーク冗長化に対するデータセンターの連携ニーズにも応えているのが「プレミアムコネクト」だ。Amazon Web Service(AWS) やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform、IBM Cloudといったメガクラウドに対して、東京のメインデータセンター内から広帯域(1Gbps~100Gbps)の光ファイバー専用線を用いて直接接続を行うもので、低遅延かつセキュアなアクセス環境を提供する。

 また、アット東京のデータセンター間および提携データセンター間で複数の顧客ネットワーク間におけるレイヤ2接続を提供するサービス「ATBeX(AT TOKYO Business eXchange)」も提供(図1)。アット東京に接続する1つの回線で、クラウドサービス、通信サービス、IXサービス、IoTサービスなどへの効率的な接続を実現でき、企業システム間の相互接続に向けたプラットフォームとしても活用できる。

図1:ATBeX の概要

北電情報システムサービス(HISS)

https://www.hiss.co.jp/

 北陸電力が出資するITサービス企業で、1987年の設立以来、北陸電力の基幹業務を一貫して運用してきた実績をもつ。24時間/365日ノンストップの電力供給が義務付けられた重要な社会インフラならではの厳しい条件下で培ってきた高度な運用ノウハウが、同社の運営するデータセンター「FIT-iDC」にも生かされている。

 FIT-iDCを含む自社データセンターすべてを統合管理する集中監視システムを2018年に新規導入して運用を開始し、24時間/365日、常駐体制での監視・運用が実現した結果、万が一の問題発生時におけるこれまで以上に迅速な対応が可能となった。

 Tier 3レベルの高信頼度の電源設備を備え、複数の変電所から送られた高圧を本線予備線方式で受電。さらに非常用発電機とUPS(無停電電源装置)を必要台数プラス予備機の余裕ある構成で用意するなどファシリティー面も万全だ。

 これによりFIT-iDCは、災害対策やBCPを目的としたバックアップ用途として、東京、大阪。名古屋の3大都市圏の企業においても需要を伸ばしている。

パワー・アンド・IT

https://www.powerandit.co.jp/

 北陸電力グループとインテックグルーブの経営資源を結集し、最高レベルの信頼性・省エネ性を誇るデータセンターとして2011年に富山県に開業して以来、多くの企業の災害対策やBCPをサポートしてきた。

 同社のデータセンターは、津波の心配がない海岸線から約13km、海抜30mの強固な地盤に立地しており、もともと地震の少ない富山にありながら震度7相当の地震に襲われた場合でもサービスを継続できるよう5種類の免震装置を設置している。電源設備についても異なる変電所から2系統により受電を行うとともに、無停電電源装置および非常用発電機をそれぞれN+1の冗長構成で設置。最高の保護レベルの耐雷対策も講じるなど、高い信頼性を実現している。加えて建物内へのネットワークの引込回線について2経路を確保。HTNetやNTT西日本、KDDIなど、ニーズに合わせたキャリアを選択することが可能だ。

ファーストライディングテクノロジー(FRT)

http://www.firstriding.co.jp/

 沖縄県のITアイランド構想の実現に一翼を担うべく、沖縄電力とりゅうせきの出資により設立され、IDC事業を中核にCC事業、BPO事業も運営している。

 「データの楽園」というキャッチフレーズを掲げ、さまざまなシステムそしてデータを安心して置ける場所としてのデータセンターを目指す。また、電力系データセンターならではのインフラ事業で培った安全・安心のノウハウを活かし、リーズナブルなコストで顧客の重要な情報資産を24時間365日、安定的に運用・管理するサポートを提供する。

 具体的には地震の少ない沖縄にあって、万が一震度6クラスの地震が起きて場合でも滞りなく利用を継続できるよう、揺れを減衰させる免震設計を施している。さらに電力供給事業で培った保安技術を生かし、複数系統受電や無停電電源装置、非常用発電設備などの電源対策も万全で、あらゆる自然災害から顧客のデータを守る。

 また、沖縄県は東京からの距離が1,600kmあり、首都圏で発生した災害と同時に被災する可能性が極めて低く、ディザスタリカバリー対策に最適な地理的優位性を持っている。通信面でも、沖縄県でアジア向け大容量海底ケーブルの新規敷設を計画するなど、沖縄はアジアの情報通信ハブとして重要な位置付けとなっている点をアピールしている(図2)。

図2:沖縄県の地理的優位性

電力系データセンター事業者を選ぶメリット

 現在、企業が新たにデータセンターを利用する場合、その用途としては主に、1)自社のサーバールームなどにある既存のサーバーやシステムのデータセンターへの移設、2)重要データのバックアップや既存システムの二重化などのDR/BCP対策、3)データセンターが持つ各種ネットワークサービスの利用――といったケースが考えられる。

 自社内のサーバールームなどからデータセンターにシステムを移設することで、当然ながら安全性は向上することが期待できる。特に、電源設備はデータセンターを選ぶ上での重要なポイントとなる。

 これまで、各地域の主要な電力系データセンター事業者を紹介してきたが、そこからも見てとれるように、最大のポイントとなっているのはなんといっても「電源」である。高圧電力の安定した供給、異なる変電所からの複数系統受電などは、他のデータセンター事業者も追随するところではあるが、やはり長年にわたり社会に対する電力供給を担ってきた電力会社の設備や運用ノウハウを受け継いでいる電力系データセンター事業者には一日の長がある。

 特にVDI(仮想デスクトップ)用途の高密度サーバーや、AIシステムにおける機械学習や深層学習で必須となるGPUサーバーなど、サーバーやラック単位の消費電力がますます増大している昨今、余裕をもって電力を利用できるという安心感からも電力系データセンター事業者は有利だ。

 このように電力を重視するならば、データセンターの選定候補として必ず電力系データセンター事業者は選択肢に入れておくべきである。

 そしてもう1つの重要ポイントは「通信」である。早くから通信事業に参入してきた電力系データセンター事業者は自ら光回線などのネットワークサービスも手掛けており、要するに回線とデータセンターをまとめて調達できる。そのぶん自社のニーズよりフィットしたメニューを選択することができ、結果としてコストも割安になるケースが多いのだ。

 例えばアット東京は東京と大阪にデータセンターを設置しているが、「AT TOKYO Business eXchange(ATBeX)」という構内相互接続プラットフォームサービスを提供することでデータセンター内および東京と大阪間の低遅延な通信をサポートするほか、全国の提携データセンターとの接続や、各種クラウドサービスへの接続についても「プレミアムコネクト」や「Cloud Direct Connect Pack」といった通信サービスを提供している。

 地方の電力系データセンター事業者も、東京などの拠点へのネットワーク回線や、各種クラウドサービスへの接続サービスを充実させている。たとえば北海道のほくでん情報テクノロジー(H-IX)では、データセンター内からパブリッククラウドへの閉域網接続を可能にする「H-IX クラウドエクスチェンジサービス」を提供している(図3)。また、九州のQTnetでは、同社データセンター内でインターネットエクスチェンジ(IX)事業者と接続できる「QT PRO インターコネクト」サービスを提供している。これにより、これまでは東京や大阪でIX接続していたユーザーも、福岡で接続できるようになり、より安価で低遅延・高品質なインターネット接続環境を構築できる(図4)。

図3:H-IX クラウドエクスチェンジサービスの概要

図4:QT PROインターコネクトの概要

 こうしたネットワークの利用にどのような効果があるのか、検証できるサービスも提供されている。アット東京では、データセンター内にメガクラウドのダイレクト接続ポイントと直接接続が可能なレンタルスペース(作業室、ハウジングラック)を1日単位で利用できる「アット東京 Cloud Lab」を提供しており、クラウド接続環境構築時の事前テストや、ライブ配信などのスポット利用に対応する(図5)。また、前述のH-IX クラウドエクスチェンジサービスでも同様に、サービスを1日単位で利用できる「H-IXクラウドPoCラボ」を提供している。ネットワークサービスの利用を検討する場合は、こうした事前にテストが行えるかを確認しておこう。

図5:アット東京 Cloud Lab の構成イメージ

 一方、インターネットエクスチェンジ(IX)事業者と電力系データセンター事業者も、共同で新たな取り組みを始めている。ソフトバンク傘下のBBIXは、東北エリアのTOHKnetや九州エリアのQTnetデータセンターで相互接続ポイントである「IXコネクトサービスLite」を、インターネットマルチフィードは、九州エリアQTnetデータセンターで、相互接続ポイントである「JPNAPサービス」の提供を開始する。

 自社から離れた場所にバックアップサイトやDRサイトなどを設けたいという用途においても、ネットワークの帯域や品質は重要な要素となる。地域でも最大手の事業者となる電力系データセンター事業者は、その地域におけるネットワークの拠点となることも多い。ネットワークを重視してデータセンターを選ぶ場合も、電力系データセンター事業者は有力な候補となるだろう。

 企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めていくための拠点として、電力系データセンター事業者を選択するメリットは非常に大きいと言える。


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