鉄印帳への思いを語る永江社長
観光客の人気スポットとなった「おかどめ幸福駅」
観光客の人気スポットとなった「おかどめ幸福駅」

 全国に40社ある第3セクター鉄道の乗車記念として、各社オリジナルの鉄印がもらえる「鉄印帳」。初版5000部が約1か月で完売するほどの人気を集めている。生みの親であるくま川鉄道(人吉市)の永江友二社長(56)に狙いと思いを聞いた。

 ――鉄印帳を作ろうと思ったきっかけは。

 「全国的に経営が厳しい3セク鉄道を盛り上げたいと常々思っていた。妻がご朱印帳を持っているのを目にし、娘からは『鉄道でも何か出来るんじゃない』と言われ、鉄印帳というネーミングをひらめいた。人生を懸けて全国の鉄道を巡るモノになれば、その人の宝になると思った」

 ――どのように発売に至ったのか。

 「全国の3セク鉄道でつくる第三セクター鉄道等協議会の会長だった肥薩おれんじ鉄道(八代市)の出田貴康社長に相談していて、昨年の総会直前、あの話をここで出してみませんかと急に振られた。資料も何もない中で発表する羽目になったけど、やろうよと一気に盛り上がりトントン拍子で話が進んだ」

 ――発売直前、九州豪雨に見舞われた。

 「球磨川第四橋梁きょうりょうは流失し、車両全5台も水没。くま川鉄道は開業の翌年度から30年連続で赤字経営が続いており、まさに岐路を迎えた。国の財政支援を前提に鉄道事業の存続に向けた話を進めている」

 「全線が運休し、鉄印帳はネット販売になったが、当初用意した110部は10分足らずで完売した。何より社員が一番驚いた」

 ――反響は予想していたか。

 「時間をかければ完売するだろうと思っていたが、ここまでとは。社員とはイベント時に鉄印帳を持って売りに行こうと話していたぐらい。鉄道ファンじゃなくても、コレクション心に響いたのかもしれない。これを機に、旅先で3セク鉄道を気にかけて乗ってくれたらありがたい」

 ――くま川鉄道の鉄印は入手できるか。

 「不通のため、乗車できなくてもネットで購入できるようにしている。ただ、全線復旧した時に乗車していただければ、利用証明の印を新たに押したいと思っている。ぜひ鉄印帳を持って足を運んでいただきたい」

(聞き手・鶴結城)

 ◇ながえ・ゆうじ 人吉市出身。高校まで市内で育ち、20歳代は東京・青山で美容師として腕を磨いた。30歳頃に地元に戻り古民家を飲食店にリノベーションしたり、名物の「ゆうれい祭り」を8年ぶりに復活させたりして、まちづくりに携わった。2015年10月から、くま川鉄道の社長。

「縁起物」切符も好評「おかどめ幸福駅」

 JR湯前線を引き継いだくま川鉄道は、新駅を三つ設けて1989年に開業。ほぼ中間地点に新設された「おかどめ幸福駅」(あさぎり町)は、全国で唯一、「幸福」の名前が入った駅として話題となり、人気の観光スポットとなった。

 駅名は公募で決まり、戦で勝利(幸福)をもたらした神社が近くにあることなどが由来という。映画「幸福の黄色いハンカチ」にあやかり、駅前の郵便ポストの色も赤から黄に塗り替えた。周囲には田園風景が広がる無人駅だが、年間1万人ほどの観光客が訪れているとみられている。

 元日の日付が入った「おかどめ幸福駅」行きの切符は毎年、縁起物として好評。令和1年11月11日は、「1」が五つ並んだ日付の「伍福ごふく切符」を販売し、3000枚が即完売した。

 各地域の「鉄印帳を携えて」も読めます。

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