みなさん、この風景写真に見覚えはないでしょうか?

そうあの…… 

Windows XPの壁紙「Bliss」です!

 

この写真は1996年に、チャールズ・オレア氏によって撮影されました。ガールフレンドを訪ねる途中で見つけたカリフォルニアの風景で、すぐ車から降りてフィルムカメラで撮影したのだそう。写真は2000年にエージェント経由でマイクロソフト社が権利を購入、WindowsXPの壁紙として採用されました。

いかにもアメリカの大草原という感じですが、日本にも負けない青と緑の景色があったんです。

 

それは……

 

九州の……

 

阿蘇!

 

実は阿蘇には日本一の大草原が広がっています。「Bliss」と似たような写真が撮れないか、撮影を敢行してみました。さらに、草原と関係が深いのが「あか牛丼」。阿蘇の草原とあか牛の関係について、意外と知られていない話をご紹介します。もちろん実食レポも!

 

というわけで、熊本県の阿蘇に行ってきました~~!!

 

まずは絶景スポットへ

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▲阿蘇の眺望スポット「大観峰」。阿蘇カルデラを見渡せる場所だ

 

九州のほぼ真ん中にある阿蘇には、北海道の屈斜路湖に次いで、日本で二番目に大きいとされるカルデラがあります。東西18キロメートル、南北25キロメートルの巨大なカルデラの中に約5万人が暮らしています。

カルデラ。小学校で習いませんでしたか?

カルデラとは、火山の噴火でマグマが噴出した後に陥没してできた窪地です。 阿蘇カルデラは約27万年前~9万年前の間に起きた4回にわたる巨大火砕流噴火で形成されました。成り立ちは、阿蘇火山博物館の説明が詳しいです。

www.asomuse.jp

 

改めて聞くとびっくりしませんか? 噴火からかなりの年月が経過しているとはいえ、かつて火山の噴火口だった場所に町があり、人々の暮らしが営まれているなんて!  

 

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▲南阿蘇ビジターセンターのジオラマ

 

こうやって見ると窪地がわかりやすいですよね。さらに、カルデラができた後に、内部に小規模な中央火山群が形成されました。このように火口やカルデラの内部に新しい火山が形成されていることを二重式火山といいます。世界的に見ても珍しい地形です。

 

さてさて、Windows XPの壁紙でしたね。大観峰エリアでさっそく見つけちゃいました。

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結構似ていませんか!? 

欲を言えば、もう少し傾斜が欲しいけど……。

この日は少し空が霞んでいましたが、一面の青空が広がっていればもっと似ている気がします。

 

壁紙にしまくりたい、大自然の絶景

他にも壁紙にしたいスポットが阿蘇にはたくさんあるので紹介させてください!

こんなすごい場所が九州・熊本にあること、全国には意外と知らない人がいると聞いて良さを伝えたくてたまりません。

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▲大観峰近くにある「阿蘇スカイライン展望所」。ここでも阿蘇カルデラが見渡せる

 

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▲このあたりの道は「ミルクロード」と呼ばれている。車を走らせているだけで、たくさんの素晴らしい景色に出会える

 

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▲通称「蛇の道」。こんなグネグネ道を進むのには勇気がいる……。まるでRPGゲームのような冒険心くすぐる風景。熊本のバイカーさんから教えてもらった、知る人ぞ知るスポット!

 

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大観峰から15分位のところに「押戸石の丘」という、小高い丘の上に大小数百の岩が配置された不思議な場所があります。古代、ここは祭礼に使われていたと考えられているそう。実写版『進撃の巨人』のロケ地に使われました。

 

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押戸石の丘周辺には火砕流台地が広がっています。噴火で堆積した火砕流が、長い年月をかけて侵食が進み、このような波打つ大地になりました。

 

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ここで撮影した写真もWindows XPの壁紙に近い!

以上、紹介してきた「大観峰」「阿蘇スカイライン展望所」蛇の道を見渡す「扇谷展望所」「押戸石の丘」は阿蘇の外輪山エリアにあります。

 

東京ドーム約3200個分の大草原

次は、阿蘇のカルデラ内部へ移動してみましょう。

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▲「米塚」 

 

カルデラ周辺には、古くから大草原が広がっており千年の草原と呼ばれています(注:最近の研究では1万年前からあったとも)。

面積は約15,000ヘクタール! 

東京ドームなんと約3200個分……。まさに日本一の大草原です。

 

最近の日本では草の利用が減り草原が消えつつあります。阿蘇は草原を好んで暮らす生き物たちにとって最後の楽園なのです。

 

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▲「草千里」

 

阿蘇の草原は自然のありのままの姿、というわけではありません。実は、人の営みによってつくられているのです! 

 

この草原の維持に欠かせないのが牛や馬の存在です。

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  • 牛や馬を放牧して草を食べてもらう。
  • 冬場の牛・馬の飼料用に秋の草刈りを行う。

牧畜をメインとした人の営みがあってこそ、草原が維持できているのです。 

さらに、毎年3月に「野焼き」を行います。そう。草原を焼くのです。

枯草を焼くことで害虫の駆除ができるほか、植物の芽吹きを助ける効果もあります。最近の研究では、地球温暖化の原因になる二酸化炭素の地中固定化に貢献しているとの報告も。

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提供:西島英志

▲熊本県民からお借りした画像。車を走らせていたらこの風景を見つけて、iPhoneで撮影したそう。こんな風景が当たり前にあるのに驚く。近くには消火用の水を積んだトラクターがあり、少しづつ消火しながら野焼きしているのだとか。

 

大自然が育む、名物「あか牛」

野焼きの後、4月下旬から5月にかけて放牧。牛や馬が草を食べ、地を踏み固めてくれます。そうして育った牛で有名なのが「あか牛」。阿蘇といえば「あか牛丼」がご当地グルメとして有名です(後ほどしっかり紹介しますね)。

 

あか牛を100g食べると、約4.5畳の草原を守ることになるといわれています。阿蘇を訪れる観光客は、大草原を見て、あか牛丼を食べることで、このサイクルに参加しているのです

 

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▲これもWindows XPの世界観を彷彿とさせる風景

 

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▲白川水源と呼ばれる湧水

 

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▲寺坂水源。阿蘇のいたるところに湧水スポットがある 

 

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▲阿蘇には温泉もたくさん。こちらは地獄温泉「青風荘.」。2016年の熊本震災で大きな被害を受けたが、2019年4月に日帰り入浴を再開した

 

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▲噴煙を上げる中岳

 

行列ができる極上「あか牛丼」

そろそろお腹が空いてきました。雄大な草原で育まれた「あか牛丼」が食べられるお店に行きましょう。

 

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▲明治43(1910)年創業のいまきん食堂

 

熊本の「あか牛丼」といえばこのお店! 平日でも1~2時間、土日祝日は2~3時間待ち。常にお客さんでにぎわう超有名店、いまきん食堂です。受付で整理番号を貰えるので、待ち時間が長い時は近くの温泉やカフェで過ごすのがおすすめ。

 

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▲あか牛丼(1,740円)。漬物、みそ汁付き

 

あか牛丼、ありがたく頂きます。ごはんの上に水菜や大根の千切りが敷かれ、そこにあか牛がのっています。

 

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まずは肉の味を楽しみましょう。

しっかり弾力がある赤身肉で、噛めば噛むほど肉の旨味が感じられます。横に添えられたわさびや肉みそを付けて食べると、味が引き締まります。

 

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次は、とろとろの半熟卵を絡ませながら。卵のまろやかさが肉の味わいを引き立ててくれます。

肉とごはんに染み込んだ甘辛いタレがよく合うんですよね。夢中で食べてしまいます。

 

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漬物もしっかりおいしい。

 

「一番昼飯に合う音楽が松田聖子」

笑顔が素敵な店主の今村さん。少しお話を聞いてみました。

 

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──明治43年創業のいまきん食堂に、いつ「あか牛丼」が登場したのですか?

 

今村さん:まずね、町が合併して※近くの役場と農協がなくなったんですよ。それまでは役場や農協からのお客さんが多くて社員食堂みたいな感じだったんだけど、合併が決まってからはお客さんが減ってね。

※2005年、旧阿蘇郡一の宮町、同阿蘇町、同波野村が合併して「阿蘇市」が誕生した。

 

──地元の方々で成り立っていた経営に危機が訪れたわけですね。 

 

今村さん:そんな時に、役場とかいろんな方から「あか牛を使って料理を作ってみらんか?」と持ち掛けられて。南阿蘇や湯布院みたいに若いカップルが来るようなお店ば作れと言われて。でもその頃うちは全然お金がなくて、だから逆に若いカップルが来れんようなお店にしちゃえと思って。メニューは丼にしておしゃれさも意識せんで、BGMは演歌やら松田聖子、夏は甲子園のラジオ。

 

──松田聖子さん、お好きなんですか?

 

今村さん:あくまで俺個人の感覚で言わせてもらうと、一番昼飯に合う音楽が松田聖子。すごく明るいわけでもなく、激しくもなく、どこか懐かしい感じがするでしょ

 

いまきんは座敷にテーブル。静かに流れる演歌や懐メロが来た人を優しく迎えてくれる。子どもから年配の方まで誰もが入りやすい。若いカップルの姿だってある。

 

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▲ほっとなごむ雰囲気の店内

 

──あか牛を使ったメニュー開発は順調に進んだのですか?

 

今村さん:最初は戸惑ったよ。日本料理を勉強してきた人間だから、本来牛肉をあまり扱わんでしょ。さらに、あか牛はサシの入った柔らかい肉と違うし。だから、肉の下に大根や水菜みたいなカリカリな食感のものを敷いて相対的に柔らかく感じられる工夫をしたりしてね。

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▲他にも気になるメニューがたくさん

 

ちなみに、「あか牛丼」が登場する以前から人気なのが「チャンポン」だ。今もこれを食べにくる地元民は多いそう。

 

──あか牛丼以外にも、いろんなあか牛メニューがあるんですね。

 

今村さん:ウチはあか牛を塊肉で仕入れているから。あか牛丼用に切り分けた時に出た端の肉はハンバーグや肉みそに、すじは「あか牛の千本すじ」「あか牛すじポン(煮込み)」に。やっぱりね、1から10まで食べてやらんと。僕らが唯一できるのはそれくらい。

 

始終明るくお話してくださった今村さん。「お客さんに楽しんで帰ってもらいたい」とくすっと笑うような仕掛けや会話を大切にされていました。草原を見て、あか牛丼を食べに行く阿蘇コース、おすすめです。

 

ちなみに取材後日、いただいた名刺の裏をひっくり返したらこんな「もんだい」(下の写真)を発見。

 

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え、どういうこと? 

クイズの答え、さっぱりわからなくて気になります。しかも「大観望」ってもしかして誤字? なんだか心を掴まれてしまいました。こんな仕掛けがある名刺なのに、その場で教えてくれないところがニクイですね。また行かねば。

 

【おまけ】壁紙を阿蘇色に染めてみた

阿蘇で目にした数々の風景があまりに鮮烈だったので、

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ご覧のように、

 

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阿蘇一色に、

 

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染めてみました。

 

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だいぶWindows XPに近づいたかな?

 

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かの有名なBlissとは少し雰囲気が変わるけど、こういうのもいい。冒険心を刺激する壁紙です。

 

そんなわけで、

 

パソコンの壁紙写真のロケ地を探している方々、

美味しいモノも食べられる「阿蘇」がおすすめですよ~~!

 

店舗情報

いまきん食堂 

住所:熊本県阿蘇市内牧290
電話:0967-32-0031 
営業時間:11:00~15:00(受付終了)
定休日:毎週水曜日、第三木曜日 

www.hotpepper.jp

 

書いた人:横田ちえ

横田ちえ

鹿児島在住フリーライター。九州を中心に取材、WEBと紙の両方で企画から撮影、執筆まで行っています。鹿児島は灰が降るので車のワイパーが傷みやすいのが悩み。温泉が大好きです。

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