常連客と話す店長の佐藤さん(右)。今後はイベントや出張カフェなどBLをPRする場を増やす予定だ=「クロの立ち猫や」

 男性同士が紡ぐ恋愛を描いた物語「ボーイズラブ(BL)」。漫画や小説をはじめ、実写映画やゲームなど多様なメディアで展開され、その存在が身近になっています。女性を中心に支持を集めるBLの魅力を探りました。(生活文化部・長門紀穂子)

 宮城県亘理町の「クロの立ち猫や」は、2020年6月のプレオープンを経て10月に開業した東北初の会員制BL漫画カフェ。店長の佐藤佳子さん(39)が自宅を改装して始めた。約3000冊のBL漫画が壁一面に並ぶ様子は壮観だ。
 金、土、日曜の営業日には会員制交流サイト(SNS)や口コミで存在を知ったファンが県内各地から訪れる。これまでに112人が会員登録し、9割を20~50代の女性が占める。人気ドラマ「おっさんずラブ」をきっかけにBLに興味を持った母娘や、カップルも訪れるという。
 お薦めの作品を持ち寄ったりアニメの鑑賞会を開いたりと、ファンの交流の場にもなっている。プレオープン時からの常連、森彩乃さん(31)は「1人で読むのもいいけれど、好きな作品について語り合えるのが何より楽しい」と毎週のように足を運ぶ。
 BLの魅力について佐藤さんは「友情を超えた男性同士の絆や社会になかなか認められない愛が描かれている。主人公たちが幸せをつかむまでの描写も心に刺さる」と説明する。
 佐藤さんに開業を決意させたBL漫画がある。宝井理人さんの「テンカウント」だ。潔癖症の主人公とカウンセラーの恋愛模様を描いた200万部超のヒット作で、アニメ化も予定されている。1年半前、旅行中に何げなく利用した東京・池袋のBL漫画喫茶で手に取り、主人公に感情移入しながら夢中で読んだという。「高校以来久しぶりにBLに触れ、面白いと実感した。東北にもBLに親しめる場所が必要だと思った」と振り返る。

「見られる立場」から女性を解放

 BLは日本発祥のジャンル。ルーツは1970年代にまでさかのぼる。主な歴史は表の通り。初期は竹宮恵子さんの「風と木の詩(うた)」をはじめ、少年愛をテーマにした漫画や小説が続々と発表された。現在はサラリーマンの日常を描いた作品や「学園もの」、ファンタジー系など設定やストーリーは多岐にわたる。
 「BLが支持される背景には、女性たちが男性から鑑賞され、性的対象として消費されてきた歴史がある」。こう指摘するのはジェンダー研究者で福島大特任准教授の前川直哉さん。「男性同士の恋愛を描いた作品を楽しむことで、女性が『見られる立場』から離れ、男性中心の社会から一時的に自由になれる」と考察する。
 「LGBTなど性的少数者への理解を深めようとする社会的な流れによってBLが一般化してきた」と話すのは、ジェンダー・視覚文化研究者で関西大などで非常勤講師を務める堀あきこさん。メディアがBLを取り上げる機会が増えて「特殊な人の趣味」とする扱いが減り、男性愛好者も増えていると指摘する。
 佐藤さんも「BLは多様性が認められている世界。誰かに否定されるものではない」と力を込める。
 「クロの立ち猫や」の連絡先は0223(21)1200。




タイのBLドラマ、世界的にヒット

 高まるBL人気を受け、実写化された作品を観光資源として活用する動きもある。BLドラマが数多く制作されているタイでは昨年、大学生を主人公にした青春恋愛ドラマ「2gether(トゥギャザー)」が世界的にヒット。タイ政府観光庁はツイッターでタイBLドラマのロケ地を紹介し、新型コロナウイルスの収束後を見据えた観光PRを行っている。
 福島大特任准教授の前川直哉さんは「東北にもBLの『聖地』になり得る場所がある」と話す。
 例えば人気小説を映画化した「タクミくんシリーズ」のロケ地は、福島県天栄村の宿泊施設「ブリティッシュヒルズ」。昨年公開された「Life 線上の僕ら」は宮城県内で撮影された。仙台市の定禅寺通や八木山動物公園、仙台城跡など県内の観光スポットが数多く登場する。
 タイBLドラマのファンでもある前川さんは「世界的にBLの認知度が高まる中、国内外の熱心なファンによる聖地巡礼がまちおこしにもつながるのでは。東北の聖地をPRしてほしい」と期待を寄せる。

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