経営するアウトドア用品店の前で「県北のイメージを変えたい」と話す和田幾久郎さん=水戸市で

 県北六市町をつなぐ長距離登山道「県北ロングトレイル」の一部が三月末に開通した。発案者として「人口減少など県北のネガティブなイメージを変えたい」と意気込む。

 山岳部に所属していた父の影響で、幼い頃から県内外の山を登った。大学時代にはバックパック一つで米国を巡り歩いた。

 実家は創業百三十年の老舗人形店「祐月本店」(水戸市)。家業を継ぐつもりはあったものの、少子化で人形の市場が縮小する中、「何か新しいこともしなければ」と考えていた。

 大学卒業後、ビジネスの世界を学ぶために大手商社に就職したが、すぐにバブル経済がはじけた。働くことに疲れた人たちの癒やしの場の一つがオートキャンプ場だった。「アウトドアで商売ができたらいいな」。山好きな父も賛同し、商社を退職後の一九九四年、人形店の隣にアウトドア用品店をオープン。ヒマラヤ登山の拠点の村名にちなんで「ナムチェバザール」と名付けた。

 もともとマラソンをやっていたが、山の中を駆け抜けるトレイルランにも十年以上前から取り組んでいる。富士山周辺のトレイルレース「ウルトラトレイル・マウントフジ」や、ヨーロッパアルプスのモンブランで開催される世界最高峰のレース「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」など国内外の百マイル(約百六十キロ)レースを完走した。

 「地元でも百マイルを走れないか」と思い立ち、仲間とともに県北の登山道を一筆書きで走ってみた。レースは一日だけだが、地域の自然や文化との触れ合いに力点を置いたロングトレイルなら通年で楽しめる。「県北でも実現できるかもしれない」と五年ほど前、県に事業化を持ち掛けた。

 県には難色を示されたが、県や県北の自治体と研究会を結成し、観光振興への波及効果などを説明した。そうした努力が実を結び、県は二〇一九年度から整備を進めている。

 当初は百マイルを想定していたが、最終的な計画では全長約三百二十キロに達した。「いつの間にか倍になってしまった」と笑う。

 ロングトレイルは欧米で長く親しまれ、国内でも徐々に増えているが、県内では初。県北は、袋田の滝(大子町)など観光地と登山道との近さが特徴的で「県北にある里山の魅力を切り取るには、ロングトレイルが最適だ」と強調する。

 今回開通したのは、コース全体のうち大子町内の十二キロとごくわずかだが、今後も着実にルートを延ばしていく。「登山道を整備するだけでなく、それを起点にして登山客が集い、地元の人が歓迎することで、トレイル文化が育つきっかけになればいい」 (松村真一郎)

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 「茨城県北ロングトレイル」のホームページでは、コースの概要や歩き方、アクセス方法を紹介しているほか、コースマップもダウンロードできる。

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