東京の摩天楼の足元に広がる「迷宮」だ。日本一のビジネス街・大手町、丸の内、有楽町の「大丸有地区」の地下通路網は、約18キロがつながった今も拡張が続いている。近い将来、商都・日本橋や金融街の茅場町までもがネットワークの一部になる。(浅田晃弘)

 大丸有地区を南北に貫く丸の内仲通り。高級ブランド店が軒を連ね、冬はイルミネーションに彩られる目抜き通りに昨年11月、2つのビルが完成した。

◆「駅とつながればビルの価値上がる」

 隣接していた3棟を一体で建て替えた「みずほ丸の内タワー」と「丸の内テラス」だ。地下には、東京都営地下鉄三田線と東京メトロ東西線の大手町駅コンコースにそれぞれ直結する、バリアフリーの通路が整備された。

昨年11月に完成した「丸の内テラス」や大手町駅などをつなぐ地下通路=東京・丸の内で

 「駅とつながることでビルの価値が向上する。地下通路は再開発のたびに整備される。まだまだ網の目は細かくなる」。地権者らでつくる「大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会」メンバーの三菱地所で、都市計画企画部シニア統括を務める白根哲也さんが話す。白根さんは、このエリアの地下歩行者ネットワークの変遷について調査した。

 歴史は1937(昭和12)年、東京駅南口と旧丸ビルを結んだ100メートルの地下通路の完成から始まった。市電が走る地上では自動車が増え、交通事故が心配されていた。歩行者の安全確保だけではない。地下道には新しい都市の理想も託された。「ビル間を全部地下道でつなぎ、ビジネスマンから雨傘を追放する」。三菱地所に残る当時の会長談話だ。

 56年の丸ノ内線東京駅の開業を皮切りに、地下鉄駅が相次いで誕生し、駅とビルを結ぶ通路が増えていった。90年のJR京葉線の東京地下駅開業により、一帯を回遊できるネットワークの骨格はほぼ完成。2000年以降は、規制緩和を受けた再開発ラッシュで地上の風景が変わるのと歩調を合わせ、一気に通路網の整備が進んだ。

◆旅人にも分かりやすい案内方法を

 「ここがつながれば」。多くの利用者が残念に思っていた場所がある。永代通りの呉服橋交差点だ。東西線大手町駅の地下通路を行き止まりになるまで歩き、一度、地上に出ると、交差点の向こうには日本橋駅の出入り口が見える。日本橋駅は、東京証券取引所に近い茅場町駅まで地下通路でつながっている。

 三菱地所は昨年9月、呉服橋交差点に地下通路を造る計画を発表した。東京駅日本橋口前を再開発し、高さ390メートルの日本一の超高層ビル「トーチタワー」などを建てる新街区「トウキョウ トーチ」の周辺整備の一つに盛り込んだ。

 約70メートルを想定する通路の建設は、日本橋地区の新たな再開発に合わせて進める。整備時期は未定で、27年度を予定する「トウキョウ トーチ」の完成を見届けてからになりそうだという。

 雨にぬれず歩いていけるエリアが広がり、都心の街歩きの楽しみが増えていく。白根さんは「初めて来た人や外国人にも分かりやすい案内の方法も研究していきたい」と話している。


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