様々な憶測や論調が飛び交う中、一度延期した東京五輪の開催予定日が刻一刻と近づいています。

国内では1月7日に2回目となる緊急事態宣言が発令され、政府はさらに一ヶ月程度延長する方向で調整に入ったとの報道もなされています。

インバウンド業界にとって東京五輪は、それがもたらす様々な側面でのメリットから開催が期待されてきました。

一方、ウィズコロナ時代における東京五輪の開催実現がもたらす効果は、当初期待されていたものとは変容しはじめているのもまた事実です。

本記事では、五輪開催がもたらすインバウンド業界にとっての恩恵を改めて整理するとともに、ウィズコロナ時代においてそのメリットはどのように変化しているのか、一つずつ考察していきます。

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    目次

  • 公式見解として、開催に前向きな姿勢は崩さず
  • 東京五輪開催のメリットを再考する
    • 1. 日本を全世界に発信できるチャンスは変わらない
    • 2. コロナ禍を乗り越えた先の「オリンピックレガシー」
    • 3. ホストタウンによる地方創生効果は限定的
    • 4. 雇用創出効果は業界によって明暗分かつ
    • 5. 経済波及効果は開催後長きにわたって持続する
  • 五輪開催の意義は無くなったわけではない

公式見解として、開催に前向きな姿勢は崩さず

「五輪中止と結論」と報道した英タイムズ紙など、いくつかの海外紙で見受けられた東京五輪開催へのネガティブな予想を明確に否定し、日本政府やIOC側は決然と五輪開催に向けて強い意志を示しています。

菅首相は2021年夏の東京五輪開催に意欲的であり、1月18日の通常国会にて「人類がコロナウイルスに打ち勝った証」として是非とも開催したいと発言しました。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は東京五輪開催の7月23日の半年前にあたる1月23日に自身のメッセージ動画を公開し、
「東京五輪を暗いトンネルの先の光にしようと思っている」と、菅首相同様、五輪開催への意志を示しました。

しかし、日本の感染状況は予断を許さない状況が続いていることも事実です。

22日、IOC委員の一人であるセバスチャン・コー卿はBBCの取材に対して、大会が予定通り開催されると確信しているとした上で、「騒がしくて情熱的な観客に参加してほしいが、開催できる唯一の方法が無観客ならば、全員それを受け入れるだろう」ともコメントしています。

東京五輪開催のメリットを再考する

世論ではネガティブな論調が目立つ中、ウィズコロナ時代における東京五輪の開催はどのような意味を持つのでしょうか。当初期待されていた効果は、今ではどれほどの価値を持つでしょうか。

インバウンド業界からの視点を含め、一つずつ考えていきましょう。

1. 日本を全世界に発信できるチャンスは変わらない

五輪の開催は開催国にとって、全世界にその土地の魅力を知ってもらうこれ以上ない機会です。コロナ禍において東京五輪を成功裏に開催することができれば尚のこと、歴史に残るイベントとなるでしょう。

五輪は最も多くの金額が動き、最も多くの国・選手が参加する、名実共に世界最大のスポーツイベントです。大会の視聴者は40億人とも推計され、開催地である日本は自ずと世界中の注目を集めます。

これにより、五輪の開催期間中だけではなく、これまで日本をあまり知らなかったという層にも知ってもらえる機会となることで、将来的な訪日外国人旅行者の増加への足掛かりとなります。

五輪開催において、この意義はコロナ後でも変わることはないでしょう。

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2. コロナ禍を乗り越えた先の「オリンピックレガシー」

IOCによると、「五輪が開催都市と開催国にもたらす長期的、持続的効果」をオリンピックレガシーとしています。このレガシーの指すところは有形・無形を問いません。

世界最大規模のイベントである大会の開催には、その実現のために大規模なインフラの整備や、多様な観光客を受け入れるための環境整備が行われます。

東海道新幹線や首都高速道路の開通などは1964年の東京五輪に合わせて整備され、今なお我々の生活基盤となっていることはよく知られています。

では、今大会における「レガシー」とはなんでしょうか。その内の一つはおそらく、大規模なイベントの開催を可能とする感染症対策の事例であるといえないでしょうか。

ウィズコロナ時代に行われた世界的なスポーツ大会の先行事例として、ツール・ド・フランスやNBAといった例はすでに存在します。

しかし選手団だけで最大18,000人という規模感で開催される東京五輪では、これまでの先行事例から取り入れられるものは取り入れた上で、さらなる工夫が必要でしょう。

こうして得られる感染対策への知見やノウハウの蓄積は、感染症を乗り越えた「レガシー」として後世にも影響を与えると考えられます。

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3. ホストタウンによる地方創生効果は限定的

ホストタウンは、世界各国から選手団を迎え、住民と大会参加者などのスポーツ、文化、経済などを通じて交流を図り、地域の活性化に活かしていく地方公共団体を指します。

東京五輪の競技は33種予定されており、試合会場は東京から北海道まで42か所存在します。各国選手団と地域住民の交流の場であるホストタウンの受け入れ自治体数は513にのぼり、地方創生への好影響が期待されています。

しかし、新型コロナウイルスの収束の兆しが見えない中、交流事業の中止を余儀なくされたホストタウンも存在することは事実です。また、五輪はコロナ禍での開催に耐えるため、規模の縮小や簡素化が進められています。

予定より日本に来られる人数が減ることは、すなわち地域で消費される金額が減ることを意味します。当初予定されていた地方創生への効果は限定的となったといえるでしょう。

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4. 雇用創出効果は業界によって明暗分かつ

2017年に発表された東京オリンピック・パラリンピック準備局の試算によると、東京五輪の招致決定年(2013年)から大会10年後(2030年)までの雇用の誘発効果は全国で約194万人としています。

この雇用創出人数の試算には、競技会場やその周辺のインフラ設備に建設業界、訪日外国人を受け入れる宿泊業界、ヒトの移動を担うタクシー業界など、多くのゲストをもてなすための、さまざまな業界の人手を想定していました。

東京五輪がもし無観客、あるいは厳しく制限された上で開催されるとなれば、多くの人による周辺施設・サービスの需要を想定していた業界に与える影響は激甚といえます。

その一方で、すでにこの雇用創出の恩恵に預かっている業界も存在します。それは建設業界です。

2016年から新国立競技場や選手村の建設が急ピッチで進み、建設業の需要は増していました。五輪の競技施設等は準備が完了しているとはいえ、五輪終了後も関連施設やインフラの保全・整備に関する需要は今後も続くと考えられます。

東京五輪がもたらす雇用創出効果に関しては、業界によって明暗を分かつことになりそうです。

5. 経済波及効果は開催後長きにわたって持続する

前述の東京オリンピック・パラリンピック準備局の試算では、東京五輪の経済波及効果は32兆円とされています。

この内訳には競技会場の整備などの大会開催のための「直接的効果」と、大会後のレガシーを見据えて実施される取り組みによって発生する「レガシー効果」が含まれます。

直接的効果に該当する開催に伴う大会参加者や観戦者の支出、家計の消費支出は、ウィズコロナ時代の開催では減少することは想像に難くありません。

しかし、これらで想定されていた経済波及効果は、実は32兆円の内の5,690億円に留まることは認識すべきです。

他方、開催後長きに渡って期待されるレガシー効果の中には、新規恒久施設・選手村の後利用、大会関連交通インフラ整備、バリアフリー対策などといった項目が含まれています。

その他にも、スポーツ実施者・観戦者の増加や障害者スポーツの振興といった効果もレガシー効果として想定されています。

たとえ開催が実現したとしても当初想定していた32兆円の経済波及効果が全て期待できるかといえば難しいものの、開催後長きにわたって確かな効果があるのも事実です。

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※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。オリンピック開催による日本への経済効果は、東京でのオリンピック・パラリンピック開催が決定した2013年から2020年の開催、そして開催後10年間の2030年までの18年間で、30兆円規模にのぼることが予測されていました。その一方で新型コロナウイルスの拡大によるオリンピックの延期で6,400億円ほどの経済的な損失が出る…

五輪開催の意義は無くなったわけではない

東京五輪の開催における最終的な判断を待つ国内の各事業者は、開催予定日に向かって時間が進む中、どのような施策を打てばよいか悩む方も少なくないのではないでしょうか。

世論では開催に対してネガティブな意見も目立ちますが、五輪の開催によって得られる効果や、すでに恩恵に預かっている効果があることもまた再認識するべきです。

新型コロナウイルスという世界規模の危機に対して、東京五輪を開催するのであればどのような形となるのか、そしてそれは後世にどのような影響を与えるのか。インバウンド業界にとって大きな節目となるタイミングが近づいています。

<参考>

・東京都オリンピック・パラリンピック準備局:大会開催に伴う経済波及効果

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