店を営業しながら、創作活動と横丁の活性化に取り組む工藤芳聖さん=いずれも川越市で

 川越市の観光地「蔵造りの町並み(一番街)」から少し北に外れた「弁天横丁」に、レトロな内装の「ギャラリー&カフェ 二軒堂」がある。代表の工藤芳聖(よしひこ)さん(61)が築百年以上の「麻利弁天長屋」の一角を借り、ほぼ一人で八カ月かかって改修した店だ。

 「長年続けてきた大工仕事では、自分のものを造ることはまずない。これが最後の大工仕事と思って、自分の造りたいものを造った」という。床のフローリングは手間のかかったヘリンボーン模様。店内には作家としての工藤さんの作品である木のパズルやフィギュア、絵本などが飾られ、落ち着いた雰囲気を醸している。

 弁天横丁は、かつて芸者置き屋や小料理屋、バーなどが軒を連ね「芸者横丁」の別名で呼ばれたこともあった。しかし、三棟ある長屋の老朽化とともに店は次々とたたまれ、夜の人通りはなくなった。昨年五月に開店した工藤さんの店が、久しぶりに夜の横丁を照らす明かりとなった。

 一九九五年に独立して特注の造り付け家具など内装の仕事をしてきた工藤さん。五十歳を過ぎたころから、自分の創作意欲を生かせる木のパズル作りを始めた。仕事の傍ら、自由に作りたいものを作れるパズルに熱中し、二〇一二年には東京・銀座で初めての個展を開いた。

 創作意欲は絵本やフィギュア作りにも広がり、「生活の基盤をつくろう」と二軒堂の開店を決めた。長男で彫金アクセサリーデザイナーの幾未(いくみ)さん(34)も「一緒にやりたい」と言ってくれた。

床が抜けた状態から工藤さんがほぼ一人で再生した店内

 部屋を借りた長屋は、宮崎県の高校時代の同級生でNPO法人「川越蔵の会」副会長として、弁天横丁の再生事業に取り組む白土真二さんの紹介。床は抜け落ち、土台から造り直す大仕事となった。「作業中、いろんな人が声をかけてくれた。すっかり川越の町が好きになった」。開店してからは「カウンターのお客さんたちの話題は川越のことばかり。本当に地元のことが大好きな人たちなんだ」と感心した。

 そこで気になったのが、横丁の入り口近くで廃虚になっている通称「元町弁天長屋」だ。「横丁を通る子どもたちのためにも何とかしたい」と、家主にかけ合って借り受け、こちらも自力で修復することにした。まず手前の一軒を直して古本屋にしたいと思っている。「共鳴する人を巻き込みたい」と、「ブーフーウープロジェクト」と名付けてアイデアを募集中だ。問い合わせは二軒堂=電049(214)6276=へ。 (中里宏)

<くどう・よしひこ> 所沢市在住。1959年、宮崎県生まれ。大学で建築を学び、建設会社や実家の工務店勤務を経て91年に上京。イベント会社でモーターショーなどの会場設営を担当し、95年に特注家具造りで独立した。現在は木製パズル、絵本、フィギュアなどの創作活動を続ける。「二軒堂」は川越市元町1の16の6。月曜休み。


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