2020年10月21日、日本政府観光局(JNTO)は訪日外客数の2020年9月推計値を発表しました。

9月の訪日外客数は13,700人と、前月8月の8,700人から5,000人増加し、新型コロナウイルスの感染拡大以来6か月ぶりに1万人を超えました。7月下旬から始まった入国制限緩和の効果が徐々に表れてきていると考えられます。

本記事では、9月の訪日外客数のデータとともに、世界各国の新型コロナウイルスの感染動向や、今後予想できるインバウンド市場の動きについて解説します。

《注目ポイント》

  1. 訪日外国人客数が6か月ぶりに1万人超える
  2. 主にアジア各国からの入国制限緩和が進む
  3. 今後もさまざまな国との間での入国制限緩和が進むことに期待

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9月の訪日外客数13,700人:6か月ぶりに1万人超え回復傾向に

2020年9月の訪日外客数は13,700人と、前月8月の8,700人から5,000人増加し、新型コロナウイルスの感染拡大以降、6か月ぶりに1万人を超えました

日本政府は、7月29日からベトナムとタイ、9月8日から台湾やマレーシアなど5か国、同月18日にシンガポールなど、アジア各国とのビジネス目的での往来を再開しており、今回の発表でその効果が徐々に表れ始めていることがわかります。

一方で、前年同月の227万人と比較すると99.4%減少しており、多くの国々での海外渡航制限措置や日本での水際対策の影響はいまだ大きいといえます。

▲[訪日外客数前年比(2020年9月まで)]:訪日ラボ編集部作成
2020年9月までの訪日外客数
▲[訪日外客数【2020年版】(2020年9月まで)]:訪日ラボ編集部作成

東アジア:中国・韓国は4桁超え、前月比2倍に増加した地域も

東アジアからの訪日外客数は、最も多い中国が3,000人、次いで韓国が1,400人と4桁を記録しています。そのほかの市場でも前月より増加しました。

中国では、4月以降ほぼ毎日感染者数2桁を維持しており、感染状況は比較的落ち着いています。このような状況を受け、政府は中国とビジネス目的の往来再開について10月末までに合意する見通しです。

9月8日にビジネス目的での往来が再開された台湾からの訪日外客数は、前月8月の2倍の800人となりました。

韓国も前月8月の700人から1,400人へと増加しています。韓国では8月下旬に国内の感染者数が増加しましたが、その後感染状況は落ち着き、10月に入ってからは1日の感染者数100人前後をキープしていることから、10月8日よりビジネス目的での往来が再開しています。

香港は感染状況が落ち着きつつあることから、10月15日に、感染予防をしつつ渡航制限の緩和などを実施する「トラベルバブル」の協定にシンガポールとの間で合意しました。今後、日本やタイ、韓国との間でもトラベルバブルの協議を進めていくことが期待されています。

このように、東アジアでは訪日外客数が増加傾向にあり、入国制限緩和が進むことでさらなる回復が期待されています。

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東南アジア:8か国との間で入国制限緩和・回復傾向に

東南アジアにおける9月の訪日外客数は、最も多いベトナムが2,700人、次いでタイが1,000人となっています。この2か国は、7月29日にビジネス目的の滞在者に限り日本との間で往来を再開しており、前月から引き続き訪日外客数が増加傾向にあります。

そのほか、マレーシアでは9月8日から長期滞在者やビジネス目的の渡航者を対象に入国手続きが開始され、シンガポールでも同月18日から同様の措置が取られています。

これらの動きから、10月以降の対象地域からの訪日外客数の増加が期待されます。

欧米豪:9月は感染再拡大が目立った

アジア各国での訪日外客数が回復傾向にある中、9月時点で入国制限が緩和されていなかった欧米豪市場では、多くの市場で訪日外客数が100人以下となるなど依然として厳しい状況が続いています。

ヨーロッパ各国では、9月に新型コロナウイルスの感染再拡大が起きました。スペインやイギリスでは、9月に1日の感染者数が4,000人を超えたこともあり、スペインの一部の地区では通勤や通学を除いた住民の出入りを禁止するなど、各国は対応に追われています。

フランスでは9月に1日の感染者数が1万人を超え、10月には4万人を超える日もありました。これを受けて、フランス政府は、国内の半数以上の県で夜間の外出禁止措置をとるなど対策を講じています。

ドイツやアメリカでも、10月以降、1日の新規感染者数の最高値を更新しています。ドイツでは初めて1日の新規感染者数が1万人を超え、最も感染拡大が深刻といわれるアメリカでは、1日の新規感染者数が8万人を超えました。

このように欧米では感染の再拡大が続いており、国内での新規感染者数の増加が収まらない限り、インバウンドの回復の期待は難しいと考えられます。

政府の動き:アジアを中心に徐々に入国制限緩和、滞在72時間以内の訪日外国人受け入れも

日本政府は、これまで感染状況の落ち着いている国を対象として、徐々に国際的な往来を再開する措置を取っています。

7月にタイとベトナム、9月8日に台湾やマレーシアなど5か国との間で入国制限が緩和され、18日にはシンガポールとの間で往来が再開しました。

さらに10月1日からは、全世界を対象に中長期の在留資格を持つビジネス目的の滞在者や留学生などの外国人の入国を認めています。 10月8日には、韓国とのビジネス目的の往来を再開しています。

今後の方針として、政府は11月の実施をめざし、72時間以内の短期滞在者を対象として入国制限を緩和する予定であることを発表しています。

対象国は、感染拡大が落ち着いている約30の国と地域を想定しており、ウイルス検査の実施や、日本滞在中の行動を記載した「活動計画書」の提出を条件に、2週間の隔離措置を免除する考えです。

今後回復が見込まれる訪日外国人客数:今できるインバウンド対策は?

2020年9月の訪日外客数は13,700人と、3月以来6か月ぶりに1万人を超えました。

その多くは東アジアや東南アジアなどの国々からの訪日外国人で占められており、7月以降再開しているビジネス目的での往来の効果が徐々に表れてきています。

今後も、感染が落ち着いている地域からの短期滞在者受け入れなど新たな入国制限の緩和が進むことで、訪日外国人客数は回復していくと考えられます。

これらのインバウンド客を受け入れていく上で必要になるのは、「新しい生活様式」に合った安全対策と、積極的な情報発信です。

たとえば、感染拡大が落ち着いている台湾では、国内旅行需要が高まっており、旅行者の間では「開放的な空間でゆっくり過ごしたい」「混雑を避けた”穴場”的スポットに行きたい」という価値観が広がりを見せています。

また、訪日旅行好きの台湾人の需要に応えるため、台湾の大手旅行会社は日本の感染状況や各施設の安全対策、地域の人たちの様子などの情報を求めているといいます。

今後、台湾に限らずほかの国でも訪日旅行を考える際にはこのような新しい価値観に基づいた旅行スタイルが主流となっていくでしょう。

国内外の旅行者の受け入れに向けた徹底的な衛生管理や、ポジティブな情報発信の継続が今後のインバウンド向け施策には求められます。

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<参照>

JNTO:訪日外客数(2020 年 9 月推計値)


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