利尻島の玄関口である鴛泊港を出航したフェリーをペシ岬展望台から眺める。
E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F8.0・1/500)絞り優先AE WB晴天

島国である日本において国境とはすなわち領海の涯を意味する。日常の生活のなかではそれを意識することはあまりないが、東西南北に長い日本という国のあり様を考える上で、国境とその周辺の島のことを知ることは日本人として大切なことだと私は考えている。近年、私がテーマとしている離島での撮影もそれを動機としたものだ。

これまでには沖縄県の離島 南大東島・北大東島、長崎県の離島 対馬、東京都小笠原諸島の父島・母島へ訪れ撮影を行なってきた。

今回訪れたのは北海道の離島である利尻島・礼文島だ。このふたつの小さな島は北海道の最北端である稚内市と同じ北緯45度線上に並ぶように位置しており、北方領土を除くと日本国内で最も北に位置する離島群である。行政区分としては利尻島には利尻町および利尻富士町が、礼文島には礼文町があり、それぞれに多くの人々が暮らす有人国境離島だ。

利尻島・礼文島には有史以前の旧石器時代より人が暮らしていた痕跡があり、縄文文化や北海道独特の擦文文化などの遺跡や土器類も見つかっている。その後17世紀ごろまでは主にアイヌの人々が暮らす島であったが、蝦夷地(北海道)を事実上統治した旧松前藩の直轄地となり場所請負制度と呼ばれる交易制度が整備されたことで、本州より多くの商人や労働者が移住し、島の人口が増えると同時に漁場も大きく開拓された。更に明治期以降に豊漁であった鰊漁もきっかけとなり、今も漁業が両島の主産業となっている。また両島のおよそ半分が利尻礼文サロベツ国立公園に指定されており、原生的な自然状態が広がる。

利尻島・礼文島はいずれも稚内市の西方に位置している。船便を利用しての交通は稚内港から定期便フェリーで利尻島・礼文島ともに二時間弱で訪島できる。また利尻島 – 礼文島間をフェリーで移動することも可能だ(およそ40分)。空路は札幌丘珠空港〜利尻空港(およそ50分)が定期航路となっており、また夏季のみ運行される新千歳空港〜利尻空港(およそ50分)もある。なお礼文空港は現在運用が休止されているため飛行機による礼文島への訪島はできない。

今回私は利尻島および礼文島へ、稚内港からフェリーに自家用車と共に乗船して訪れた。フェリーの航路は稚内港 – 利尻鴛泊港 – 礼文香深港 – 稚内港と周遊航路となっている。

今回の撮影で使用した主な機材
・OLYMPUS OM-D E-M1X
・OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
・OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III
・M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
・M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS
・M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II
・M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro
・M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20
・M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14

日本百名山の火山島 利尻島

利尻島は稚内からおよそ52km西方に浮かぶ、周囲約64kmのほぼ円形の島だ。有史以前の20万年近く前から始まった火山活動により海底より隆起し、長い年月をかけて現在の島の姿となった。面積は約182平米と日本の島嶼部のなかでは18番目の広さであり、令和2年7月末の時点で4,400人ほどの住民が暮らす。島の中心には島のシンボルとなる利尻山がそびえ立ち、標高1,721mの山頂から裾野となる島の海岸線までがひとつの山として捉えることもできる。利尻山は利尻富士とも呼ばれ、日本百名山に数えられるほどの美しい姿は北海道本島の西海岸からも目にすることができる。

近づく利尻島をフェリー船上から撮影。生憎の天候で利尻島最高峰の利尻山には雲がかかっているが、島に近づくにつれ島全体が山体であることが実感できる。島名の語源はアイヌ語で高い島という意味のリ・シㇼから来ていると言われる。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II ISO 400(F6.3・1/250)絞り優先AE +1EV WBオート

フェリーが離発着する鴛泊(おしどまり)港を、隣接するペシ岬展望台より望む。ここを拠点にして稚内および礼文島との人および貨物の流通が行われる。利尻島北東部を占める利尻富士町の行政施設も港周辺に集まっている。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F8.0・1/400)絞り優先AE WBオート

鴛泊港から見るペシ岬。岬全体が岩でできており標高93mの山頂の展望台まで急峻な遊歩道を登ると周囲360度の景観が楽しめる。岬の先端には明治25年に初点灯された鴛泊灯台が建ち、今でも船の航行を見守りつづける。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/320)絞り優先AE +0.3EV WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

利尻島の北側に位置する利尻空港。定期便として札幌丘珠空港との間に1日1便、6月から9月の間の季節便として新千歳空港との間に1日1便が就航している。滑走路の向こうには利尻山の雄大な姿が広がる。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/160)絞り優先AE +1EV WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

利尻山山体から続く緩傾斜地帯のほとんどは樹林地帯もしくはクマイザサなどの原野が広がる。平野部は台地状の低地で住居のほどんどは沿岸地に集まっている。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F4.0・1/500)絞り優先AE +1EV WBオート

利尻島の土壌はかつて利尻山から流れ出た溶岩が冷えて固まった岩と、噴火で飛ばされてきた礫で構成されている。したがって乾燥した土地が多く、また通年で気温も低いことから低地でも高山植物や地衣類などが多く見られる。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F8.0・1/80)絞り優先AE +1EV WBオート

利尻島南端部の仙法志地区。漁業が主産業となる利尻島の海岸部の多くには大小の港や漁村の建物が並ぶ。小舟での昆布漁や雲丹漁も盛んだ。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/200)絞り優先AE +0.7EV WBオート

利尻島の名産である昆布。早朝に水揚げされた昆布は海岸近くに広がる干場と呼ばれる砂利敷きの広場で日干しされる。人の手で昆布一枚一枚を広げ、重ならないように丁寧に並べる。島の夏の風物詩だ。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/640)絞り優先AE +0.7EV WB晴天

島の北西部の平野はほとんど樹木がなく、背丈より低い植生ばかりが広がる。一説によるとかつて鰊漁の最盛期に釜を炊くための燃料として樹木を伐採したうえ、相次ぐ大火で焼き尽くされたことが原因とも言われている。南岸に比べると漁村の家屋も少なく風雨にさらされたままの姿が目立つ。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F5.6・1/640)絞り優先AE +0.3EV WBオート

水平線に沈みゆく太陽の光に輝く二艘の舟。長い年月、島での漁を支え今は静かに草むらに横たわる。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F5.6・1/800)絞り優先AE +0.3EV WBオート

利尻島北西部の海岸より海の向こうに浮かぶ礼文島を見る。利尻島と礼文島の間は9kmほどと、天候が良ければ礼文島沿岸部の様子を見ることもできるほどに近い。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F8.0・1/160)絞り優先AE +1.7EV WBオート

離島で見る夕焼けは、広く深い青に染まる空と赤く輝く水平線が、見るものの心の奥深くに染み入る。空の残照で青く照らされた小舟は、いまから明朝の出漁を待つ。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F2.8・1/640)絞り優先AE WBオート

利尻島西海岸の神居海岸から暫し日が沈んだ後の海を眺める。周囲には人家もなく、岩場に打ち付ける波と海から吹き抜ける強い風の音のみの世界。僅かばかりに残る光を掬い上げんとカメラを三脚に据え付け、60秒の長秒露光撮影。島が生まれて以来、何度となく繰り返されてきたこの瞬間を一枚の写真に納める。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F4.0・60秒)マニュアルモード WB晴天 マルミCircular PL for M100 Holder + 100×100 ND64 + 100×150 SoftGND16 + 100×150 HardGND16使用

利尻島には大小の灯台が建っており、それを見て回るのも楽しい。西海岸に建つ栄浜埼灯台は礼文島との間の礼文水道を航行する船の安全を見守る。夕空には壮大に広がる雲。この日の雲は遥か北海道の南方にまで続いていたそうだ。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 800(F4.0・1/15)絞り優先AE -1.3EV WBオート

利尻島南東部に広がる沼浦湿原は、隣接する南浜湿原と共に7,000年以上前に火山の火口として地形が形成され、4,000〜4,500年前に海水面の上昇と下降が繰り返されたことで出来たものと考えられている。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F8.0・1/125)絞り優先AE +0.7EV WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

沼浦湿原のなかにあるオタトマリ沼。周囲には1kmほどの遊歩道が整備されており、自然のなかを静かに散策することができる。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F8.0・1/500)絞り優先AE WBオート

オタトマリ沼から望む利尻山。荒々しくも豊潤な自然がとても美しい。ただし山頂への登山道は険しく十分な装備と体力が必要。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/320)絞り優先AE WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

オタトマリ沼から利尻山上空の北天の星を撮る。北緯45度の地で見上げる星々の高さに、遠くへ来たことを実感する。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO ISO 1600(F1.8・ライブコンポジット撮影15秒x206コマ)絞り優先AE WB4,800K

利尻島の北部から利尻山上空の南天の星を撮る。沈んだ太陽の残照が利尻山の山体をわずかに照らす。空に並ぶ木星と土星。夏の夜空の競演。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 1600(F2.8・60秒)マニュアルモード WB6,600K

北の島は海鳥の楽園でもある。沿岸の岩礁地帯は海鳥たちの営巣地。波音と鳥の鳴き声を聞きながらシャッターを切る。海の向こうには礼文島とそこに向かうフェリーの姿。

E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS ISO 200(F6.3・1/500)絞り優先AE +0.3EV WBオート

かつての鬼脇村役場として使われていた建物を、利尻島郷土資料館として活用している洋風歴史的建造物。島には他に歴史的建造物はほとんど残されていないため、大正二年に建てられた本館はとても貴重だ。館内には利尻島の自然や古代から現代までの人々の暮らしについての展示がなされているので、島を訪れた際にはぜひ立ち寄りたい。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO200 F4.0 1/500 絞り優先AE WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

利尻山への鴛泊登山道の出発点に鎮座する利尻山神社。長い参道を歩き進むことで心が穏やかになる。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 200(F4.0・1/30)絞り優先AE +0.3EV WBオート

長く静かな参道の先には小ぶりながら瀟洒な社が建つ。山の神、海の神、食の神が祀られており、年に一度大祭も催されているという。利尻山山頂には利尻山神社奥社が置かれている。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F4.0・1/13)絞り優先AE WBオート マルミEXUS CIRCULAR P.L Mark II使用

漁業の島である利尻島には、漁の安全を祈願する神社が多く存在する。利尻島南西部仙法志地区の海岸線にある、龍神の岩とそこに祀られる「北のいつくしま弁財天」もそのひとつ。龍神の岩には大正初期のある日、山の大沢から巨大な何者かが転がり落ちてきて海に消えたという言い伝えがある。また祠は島民が嵐で難破しかけた折に弁財天に救ってもらったお礼に、龍神岩の上に祀ったものだと言われている。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6 II ISO 400(F4.3・1/320)絞り優先AE +0.7EV WBオート

厳しい環境である北の島の人々の心の支えである弁財天。悠久の星空は太古の時代から変わらず、島とそこに生きる命とともに輝き続ける。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO ISO 1600(F2.8・ライブコンポジット撮影30秒x100コマ)絞り優先AE WB5,300K

北の島は花と昆虫の島でもある。オニユリに舞うミヤマカラスアゲハ。短い夏の間に命の灯火を目一杯輝かす姿はとても魅力的に感じる。

E-M5 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO ISO 200(F5.6・1/60)絞り優先AE +0.3EV WBオート

利尻島での5日間の滞在撮影を終え、鴛泊港から再びフェリーに乗船。港口のペシ岬の白い灯台に見送られながら利尻島を離れ礼文島へ向かう。ここから礼文島香深港までは40分の船旅となる。旅はまだまだ続く。

(後編・礼文島に続く)

協力:
利尻町観光協会
利尻富士町観光協会
利尻島観光ポータルサイト りしぷら


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