駅員が無料配布する除菌シートを受け取る利用客=8日、JR東京駅で

 お盆休みシーズンが、新型コロナウイルスの感染拡大で様変わりしている。帰省や旅行を控える人が多く、3連休初日の8日、新幹線の駅は目立った混雑がなかった。一方、東京都内の観光施設などでは都民向けの割引が相次ぎ、地元観光を楽しむ人らが笑顔を見せた。

 「良かったらお使いください」。上越・北陸新幹線などが乗り入れる22・23番線ホームでは、並んでいる利用客に駅員が除菌用のウエットティッシュを配っていた。構内には「楽しい帰省になりますよう、感染防止に努めて参ります」との放送が響いていた。

 祖父母のいる金沢市に小学6年生と同3年生の兄妹だけを帰省させるため、ホームまで一緒に来ていた神奈川県平塚市のパート女性(39)は、「共働きで帰れないが、孫たちの顔だけは見せたい」と話した。コロナの感染を心配しつつも「祖父母は孫と遊ぶことを楽しむために、いつも元気に頑張っているから」と兄妹を見送った。

 長野県・軽井沢の別荘で娘と過ごすという港区に住む50代の女性会社員は「知人にも断りを入れたら、行っても大丈夫と言われた」と1週間滞在する予定だ。小池百合子都知事が都民に都外への旅行の自粛を呼び掛ける一方で、一律自粛を要請しない政府の対応には「はっきり行くなとは言ってくれないので、自分たちで判断した」と話した。

 JR各社によると、8月7~17日の新幹線と在来線特急の合計予約席数は7月21日現在、前年同期比79%減の75万席だった。

 JR東海によると、8日始発~午後4時の東海道新幹線下り東京発の自由席乗車率は10%以下~50%で推移。JR東日本によると、同日午後4時時点で東北新幹線などの下り自由席の乗車率は5~20%と、いずれも例年に比べて大幅に減っている。(井上真典)

◆”GoTo”都内に期待 都民割り続々

 地上約350メートルの東京スカイツリー(東京都墨田区押上)の展望台。窓を見下ろし「電車が走ってる」と喜ぶ長男(3つ)の姿に文京区の会社員の男性(45)が目を細めた。例年の夏は兵庫県の実家に帰省するが今年は断念。それでも「子どもにはいろいろな経験をさせたい」と、感染防止策を確認した上で初めて連れてきた。

都民の展望台入場料が半額になるキャンペーンをしている東京スカイツリー=東京都墨田区

 墨田区の会社員佐藤瑠音さん(24)は「近場だから」と来場。春には韓国旅行を諦め、我慢が続くが「密に気を付けながら、気分転換したい」と語った。

 展望台は23日まで、都民の当日券の入場料金を半額にしている。政府の観光支援事業「Go To トラベル」の対象から東京が除外され、「遠出しづらい都民に来ていただきたい」と企画した。感染拡大による休業が明けた六月の入場者数は前年比9割減。感染対策で一度の入場を収容人数の2~3割に抑えるものの入場待ちが10分を超えることすら珍しく、例年8月の1時間待ちには程遠い状況が続く。

 JR東京駅の東京ステーションホテルなどを運営する日本ホテルは1日から都民限定の割引を始めた。都内の16ホテルでは通常の50%以下の料金で泊まれる。「外出を減らし、家でも気を使っていると思うので、非日常の空間で安心してゆっくり過ごしてほしい」と広報担当者。レストランのメニューを客の携帯電話で表示する仕組みにして接触感染を防ぐなど、感染対策にも工夫を凝らす。

 別のホテルや、屋根のないバスのツアーでも、都民限定の割引が相次ぐ。

 地元観光の呼び掛けは行政でも。品川区は3日、東京五輪向けの観光ガイドを区民ら向けに作り直して発行した。報道発表には「GoTo品川区!」と書いた。密集、密閉を避けようと、内容は街歩き中心。区広報広聴課の担当者は「一時的な助成金だけではない商いの支援を視野に入れて発行した。区民に近隣を巡ってもらいたい」と語った。(福岡範行)


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