年の瀬のいま、都内のビルの一角には新型コロナウイルスの影響で仕事を失ったり、不安を感じたりしている外国人が集まる場所があります。集まった人から寄せられたのは、感染が続く影響で奪われたのは仕事だけではないという切実な声でした。(映像センターカメラマン 浅石啓介)

外国人が集う無料スペース

年の瀬の12月。

東京・中央区銀座のビルの一角にある部屋を訪ねるとささやかなクリスマス会が開かれていました。

参加していたのは日本で暮らす外国人です。

感染防止のため、マスク姿で間隔を空けながら民俗舞踊などを披露していました。

クリスマス会が開かれていたのは、ことし5月、外国人向けの求人サイトを運営する「ゴーウェル」が開設した外国人を対象に無料で相談に応じるスペースです。

新型コロナウイルスの影響で、仕事を失った外国人などからの相談が急増したため、急きょ開設しました。

ここでは就職や法律に詳しい専門スタッフを交えた相談窓口を毎日開いているほか、外国人を対象にした就職説明会なども無料で実施しています。

仕事を求めている人や、不安を感じている人などが、毎月のべ1000人以上訪れているということです。

クリスマス会はそうした外国人に、少しでも元気を出してもらいたいと企画されました。

この無料スペースに集まる人たちに話を聞いてみると、新型コロナウイルスの影響で仕事を失い、就職相談に訪れた人も多くいましたが、それだけでない悩みを抱えていました。

派遣契約を切られたというインドネシア人の女性
「言葉が出なくて、ショックで。しんどかった。それにコロナで友達とか同僚とも会えないし、さびしいです。心がバラバラになっちゃいます」

来年就職を目指すスペイン人の男性
「コロナが広がって、観光の仕事の募集が停まってしまって、あまり仕事はなく大変です。私は学生で、自由な時間があるけど、誰とも遊びに行けない。ちょっとさびしいです」

不安広がる外国人

日本で暮らす外国人は現状をどう考えているのか。

無料スペースを運営する「ゴーウェル」は、この場所を利用した外国人を対象に12月1日から19日にかけてアンケートを初めて行い、112人から回答がありました。

その結果、「友達や会社の人に会う時間が減った」という人が84%、「感染拡大の影響で不安や寂しさを感じる」と回答した人が75%にのぼりました。

相次いで聞かれたのは人とのつながりが減ってしまったという「孤独」という現状でした。

突然仕事を失った…

ミャンマー人女性のピョー・トゥーザー・ミンさん(38)もその1人です。

ピョーさんは、母国ではトップクラスのIT系大学院を卒業し、日本で最新の技術を学び、正社員になって会社を作りたいという夢を抱いて、10年前に来日しました。

来日してからは、深夜・早朝と休むことなくアルバイトをしながら、日本語学校や専門学校で学び、都内の会社に契約社員として入社しました。

さらに去年、念願だった都内の不動産関係の会社にデータ管理をする「正社員」として採用され、夢の階段を徐々にのぼっていました。

ピョーさん
「ひとつの目標だったのでようやく正社員になることができて本当にうれしかった」

しかし、そのやさきのことし9月、新型コロナウイルスの影響による業績悪化で、人員整理の必要があるとして、解雇されました。

ピョーさん
「コロナの真っただ中に、仕事を探す事は難しいのに、解雇になった。とても大変な状況です」

いまは失業保険だけで生活しています。
家賃が払えなくなり、都内を離れ、かつての半分以下の3万円ほどのアパートに引っ越しました。

以前は会社の同僚などと食事に出かけたり、日本で生活する同じミャンマー人の友人とも、観光地に行ったりするなど、充実した生活を送っていたといいます。

しかし、同僚たちとも連絡が取りづらくなり、感染への不安から友人とも会うことさえ難しくなったといいます。

毎日のように人と接していたピョーさんにとって、いま気軽に連絡できるのは、離れたミャンマーに住む家族だけになってしまったということです。

この日、ピョーさんは母親と電話し、ミャンマーでの感染の状況を尋ねました。

母親
「ミャンマーも感染者がすごく増えているよ。本当は家族で一緒にいたい。早く帰ってきてほしいよ」

しかし、ミャンマーに帰国しても、仕事が見つかる可能性が低く、帰国は難しいと考えています。

はなしを聞いていくうちに、大切なものだと、ピョーさんが見せてくれたものがありました。

たくさんのIT関連の参考書です。

ITの知識を活用し、日本と母国をつなげるような会社を作ることが夢でした。

その夢を実現するために必死にプログラミング技術を学んできたといいます。

しかし、新型コロナウイルスによって夢への努力だけでなく仕事と人とのつながりさえ奪われてしまいました。

ピョーさん
「悔しい。頑張ってるのに。頑張ってるのを認められない。認められれば、こういうことにはならないですよね」

再出発への1歩

解雇されてから3か月ほどたった12月中旬、ようやく1か月ぶりの就職面接が決まりました。

朝から入念に身なりを整えていました。

面接は外国人のITエンジニアの人材を募集している企業でした。

面接では、これまで自分が勉強してきた事を精いっぱいアピールしました。

企業からは国籍にかかわらず、能力を重視して選ぶことが伝えられ、結果は来月伝えられることになりました。

ピョーさん
「2020年の悪いことはこれで終わってほしいと思います。2021年には、新しい仕事と良い事があるように願います」

この無料スペースを開設した会社では、5月に開設して以降、仕事を探す人たちはもちろん、「誰かと話したい」、「誰かと会いたい」と、年末になっても孤独を抱えて訪れる人も多いということで、異国の地で家族と離れて暮らす外国人にとって厳しい年の瀬になっていると感じています。

松田秀和さん
「外国人ならではの孤独だったり、疎外感、寂しさっていうのは、間違いなく感じていると思います。コロナ禍だからこそ、人と人とのつながりっていうのは、とても大事で国籍をこえて、友人を作って、頼れる人を作ってほしい」

厚生労働省によりますと、ことし1月末から12月22日までに、新型コロナウイルスの影響による業績が悪化した企業などから解雇されたり、契約を更新されない「雇い止め」にされたりして仕事を失った人は、見込みも含めて7万8417人にのぼるということです。

仕事を失った人は実際にはさらに多いとみられ、この中には外国人も含まれています。

「悔しい」というピョーさんのことば。

努力を続けてきたからこそ絞り出すように出てきたと思います。

仕事だけでなく人とのつながりさえ奪う新型コロナウイルスの影響が異国に暮らす外国人も厳しい状況に追い込む中、ピョーさんが「外国人だけでなく日本人も大変な状況。だから自分も頑張る」と話していたことがとても印象に残っています。

こうした状況だからこそ、お互いに支え合いながら乗り越えることが必要になっていると改めて感じました。

映像センターカメラマン
浅石啓介
平成21年入局 妻がカンボジア人で、入局以来、日本に住む外国人の課題をテーマに取材。海や川などの水辺に潜る、潜水取材も行っている

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