宿泊療養に使われるホテル。滞在者は弁当やトイレットペーパー、洗剤などを1階まで取りに来る=東京都墨田区で

 新型コロナウイルス感染症の軽症者らを対象としたホテルなどでの宿泊療養が、全国的に進んでいない。軽症者が自宅で重症化して死亡する事例や家庭内感染が増えたことを受け、国は宿泊療養を基本とするよう方針転換したが、療養先の隔離生活に慎重な人も多い。中でも東京都内の自宅療養者は宿泊療養者の約三倍の六百三十五人に達しており、都は宿泊施設への移行に力を入れる。 (松尾博史)

 「医師と看護師が日中、常駐し、一日三食の弁当を用意している。安心して生活できるホテル療養を都民に知ってほしい」。今月一日、新たに宿泊療養施設として利用が始まった墨田区のホテルで、都の案内担当者はアピールした。

 都は四月七日から、ホテルを借り上げて軽症者に滞在してもらう仕組みを開始。五つのホテルで約千二百人を受け入れる態勢を整えたが、最近の一日あたりの滞在者は二百人前後にとどまる。小池百合子知事は定例会見で「ペットがいる、面倒を見なくてはいけない人がいるなどの事情で、自宅を選ぶケースが多い」と話す。

 都は対策として、ペットを預かるための電話相談窓口を開設。感染者の家庭に子どもがいる場合は自治体などと協力し、医療機関や児童相談所の一時保護所で子どもを預かる。外出や面会ができないホテル利用者のストレスを和らげるため、精神科医らが対応する電話相談も始めた。

 都の感染症対策の担当者は「強制ではないが、特別な理由がない場合は宿泊療養を利用してもらえるよう説明したい」としている。

 新型コロナウイルスの感染者は当初、症状の程度にかかわらず原則入院となっていた。

 病床数の逼迫(ひっぱく)を受けて厚生労働省は四月二日、軽症者はホテルや自宅での療養を検討するよう都道府県に通知。だが、自宅で容体が悪化したり、家庭内で感染する事例が相次ぎ、同二十三日になって宿泊施設での療養を基本とする方針に変更した。

 厚労省の六日の発表によると、全国の患者八千七百十一人のうち自宅療養は千九百八十四人で、宿泊療養の八百六十二人の二倍以上だった。

◆ホテル療養経験者 「安心」の一方「もっと情報を」

宿泊療養先として東京都が確保したホテルの一室=近藤秀一さん提供

 新型コロナウイルスに感染し、東京都内のホテルで十一日間、隔離生活を過ごした足立区のアルバイト近藤秀一さん(33)に話を聞いた。

 近藤さんが体調に異変を感じたのは四月四日。三七度台の熱が続き、十六日に新型コロナの陽性が判明。同居する六十代の両親にうつさないよう自室で過ごしていたが、より安心を求めて十九日からホテルに入った。

 ホテルでは毎日二回、体温や血中の酸素量を測る時間があり、「何かあればすぐ対応してくれる安心感が大きかった」と話す。

 ただ、部屋はベッドと机があるだけで通路も細い。部屋を出るのは、弁当を取りに一階ロビーに行く一日三回だけ。窓は開かず、ベッドのシーツも交換できなかった。最も不安だったのは「いつ、どうなればホテルを出るのか、見通しが全く分からなかった」ことだったという。

 近藤さんは二十九日に退所。宿泊療養に「受け入れてもらえて本当に良かった」としつつ、「感染した不安の中、狭い室内でずっと過ごすのは簡単ではない。退所までのスケジュールなどもう少し情報があれば、もっと安心できると思う」と話した。 (岡本太)


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