東京オリンピック・パラリンピックに向けて、来年春、欧米路線を中心に国際線の発着枠が拡大する羽田空港。外国人旅行者を取り込もうと国内で有数の規模を誇るホテルも開業します。羽田空港は、海外からの玄関口として、その姿を大きく変えようとしています。(取材班記者 山下忠一郎)

客室1700余り!巨大ホテルが羽田に

今月10日、羽田空港の敷地内に、空港ターミナルに直結するホテルが来年春、開業することが発表されました。客室の数は、なんと1717室。「171室の間違いではないですか、1ケタ違っていませんか?」と耳を疑いそうな話ですが、ホテルを手がける大手不動産会社の住友不動産に確認してみても「1717室です」という回答でした。国内の空港にあるホテルでは最大、空港に限らずホテルとして数えても有数の規模を誇り、年間600万人の利用を見込んでいるといいます。

「いったいどんなホテルなんだろう?」国際ターミナルから建設現場に向かうと、目に飛び込んできたのは、横長の巨大な建物。例えるならば、軍艦のような迫力です。空港では、飛行機の発着に影響がないように建物の高さが制限されていて、高層ビルは建てられません。このため、横幅250メートルと都内では珍しい横長の建物になっています。

ホテルは2つのブランドが一体運用されます。1つは、海外のVIPも受け入れる富裕層むけの高級ホテル、「プレミア」。1部屋が最大で173平方メートルの余裕を持った広々とした空間です。東京の観光に精通したコンシェルジュによるサービスも受けられます。

もう1つがビジネス利用や家族連れなどをターゲットにしたホテル、「グランド」。こちらは2万円前後の価格を検討しているということです。それでも、外国人が大きな旅行カバンを広げても余裕があるようにと、一般的なビジネスホテルよりも広めのつくりになっています。

宿泊する外国人に、日本らしさをアピールできるものは何か。こだわったのは温泉です。最上階の露天風呂は富士山や飛行機の眺めが楽しめる24時間営業の天然温泉。これは宿泊しなくても利用できるそうです。このほか、およそ700人が収容可能なホールがある国際会議場、日本各地の土産物や免税品を買える商業施設、さらに地方都市や観光地などと空港を結ぶ、バスのターミナルも設けられ、1日900便が発着する予定です。

なぜ羽田に?増える国際線

なぜ、これほどまでに巨大なホテルが作られるのか。背景にあるのは、急速に進む羽田空港の国際化です。平成22年に4本目の滑走路の供用が始まり、国際線の定期便が復活。東京オリンピック・パラリンピックも視野に、来年3月には欧米や中国の路線を中心に国際線が1日50便増便されます。

日本を訪れる外国人旅行者が増える中、羽田は「京都や東京では満足できない」、「もっと日本を深く知りたい」という外国人に地方へ足を伸ばしてもらうための拠点的な役割を強めています。国際空港の管理団体「国際空港評議会」のまとめによりますと、2018年、羽田空港は年間の旅客数が8694万人で、アトランタ、北京、ドバイ、ロサンゼルスに次いで世界5位でした。

航空各社も羽田へのシフトを強化しています。アメリカのデルタ航空は、来年3月の発着枠拡大にあわせて、日本での拠点としてきた成田から就航路線を撤退、すべて羽田に移す予定です。また、日本航空や全日空も来年3月以降、羽田の国際線の増便を予定し、国際線の就航本数が成田に近づいています。

今後も投資が続く羽田

こうした動きに合わせて、羽田空港周辺の投資は活発化しています。京急グループは、空港の敷地内に来年夏の開業を目標にホテルの建設を進めています。また、東京・大田区では空港の敷地に隣接する土地に、川崎市では多摩川を挟んだ対岸の工場跡地に、企業や研究機関が集積し、それぞれ官民が連携する形で、健康医療やロボティクス、自動運転などの分野で、新産業を創出する拠点の整備が進められています。

さらに、ちょっと先の話ですが、JR東日本は早ければ2029年を目標に羽田と都心を結ぶ路線の開設を検討。実現すれば、首都圏全般からのアクセスがよくなります。羽田と竹芝、隅田川を通って浅草までを船で結ぶルートも検討されています。

オリンピックイヤーに、大きく姿を変えようとしている羽田空港周辺。これからの行方にさらに注目が集まりそうです。

取材班 記者
山下忠一郎

青森局、大阪局などを経て現在甲府局に勤務

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