「ゴミ屋敷」の住人の中には、医師や教員など「先生」と呼ばれる人が珍しくない。家の外では普通に振る舞っているが、家の中は異様に荒れているのだ。都内の高級住宅地にある60代の元教員の自宅は、家の外観からは想像できない壮絶な現場だった――。(連載第15回)


※本稿は、「サンデー毎日」(2021年6月20日号)の記事「ゴミ屋敷現場壮絶ルポ」を、加筆・再編集したものです。


「先生」と呼ばれる人たちも、「ゴミ屋敷」に住んでいる


「ゴミ屋敷に住んでいる」というと、どんな人物を想像するだろうか。


【連載】「こんな家に住んでいると、人は死にます」はこちら


生活保護や低収入の家もあるが、実は高学歴だったり、大手企業に勤めていて収入が高い人の家がゴミ部屋であることが少なくない。また医師や教員など“先生”と呼ばれる職種、つまり社会的地位の高い人の家が物にあふれているケースも、しばしばみられる。


早稲田大学の石田光規教授は「ゴミ屋敷にしてしまう人は“感情労働”が多いといわれる」と指摘する。感情労働とは、相手(顧客や患者)の精神を特別な状態に導くため、本来の感情を抑圧して業務の遂行を求められる労働のことだ。


早稲田大学の石田光規教授

早稲田大学の石田光規教授


「業務の対象が“人”であるため、感情を自分で作り上げるのです。医療従事者や先生と呼ばれる職種が代表的で、人と接する時に一定の役割を要求されます。そちらでがんばりすぎて消耗しきってしまい、家の中まで気が回らないという側面はあると思います」


私はこれまで生前・遺品整理会社「あんしんネット」の作業員として、さまざまなゴミ屋敷で整理清掃業を行いながら、そのような家に住む人に接してきた。同社事業部長で孤独死現場第一人者の石見良教さんによると、「新型コロナウイルスの発生からステイホームが推奨され、在宅時間が長くなったことでゴミ屋敷が増えている」という。


2021年5月、東京都内の高級住宅街にある戸建住宅を訪れた。


室内は“ひどいゴミ屋敷”と聞いていたが、外観からはそう感じられない。草木が茂った広い庭に囲まれて、まるで「となりのトトロ」に出てくるような佇まいだ。



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